神の娘は上機嫌 ~ ヘタレ預言者は静かに暮らしたい - 付き合わされるこちらの身にもなって下さい ~

広野香盃

文字の大きさ
59 / 102

58. アーシャ、料理大会に行く

しおりを挟む

(シロム視点)

 それから1週間が過ぎ、夏休みとなった。もっとも僕とマークにはたっぷりと宿題が出された。僕達がアーシャ様を探す旅に出ていた間の遅れを取り戻すためだと言われては仕方がないと諦めるしかないが、マークと顔を見合わせてため息をついた。

 それに夏休みには楽しみもある。二葉亭が参加する料理大会の地区予選が開催されるのだ。もちろん当日は店も臨時休業する。料理大会に参加するのは祖父ちゃんと父さん、それに母さんの3人。

 もちろん残りの家族は会場に応援に行く。ただし僕はカンナとアルムさんと共に別行動だ。実はアーシャ様がジャニス皇女を連れて料理大会に来られるので、ご案内することになっている。

 夏休みに入り、遂に料理大会の地区予選の日がやって来た。僕達の地区では二葉亭を含め約20件の料理店が参加予定だ。

 料理は店舗で作るのではなく、会場に店ごとに設置された臨時の厨房で作る。なお公平を期するために大会には幾つかの決め事がある。

 1つ目は、料理に使う食材は主催者側で用意するが予算に上限があること。これによって金に物を言わせて高級食材ばかりを使うということが出来ない様になっている。限られた予算内で工夫して料理を作る必要があるわけだ。

 2つ目は、料理は主催者側が用意する皿1枚又は器1つに入る量とすること。この規則により基本的に一品料理となり、コースメニューの様に何種類もの料理をセットで提供することが出来ない。これは皿により料理を作った店を推測するのを防ぐ意味合いもあるが、一番の目的は公平を期するためというよりは、運営上の都合だろう。多くの人がコースメニューを食べると時間も場所も不足する。

 3つ目は、評価者は料理を選べないこと。評価者となるのは料理大会の会場に訪れる一般客だ。会場に来た人は料理の受け取り口で料理を受け取るが、主催者側は参加する店舗のすべての料理を順に出して行くので、どの店の料理を受け取ることになるかは運しだいだ。さらに料理に添付されるカードにはA、B、C....と言う様に記号が振られているが作った店の記載はない。料理を食べた人は、その料理を10点満点で評価してカードに記載後、投票箱に入れることになっている。もちろんこれは、有名店の料理は美味しいという先入観を排除するのが目的だ。

 最後は作る料理の数だ。1店舗50人分のみとなっている。これは人手をかけて大量の料理を提供してポイントを稼ぐのを防ぐ意味合いがある。それでも僕達の地区では20店舗が参加するから、全部で1000人分の料理が提供される。料理が無くなった時点で大会は終了となる。

 料理を作る父さんと祖父ちゃんそれに補助をする母さんは大忙しだ。朝早くから会場入りし、決められた時間になると厨房に入って食材の下処理を始める。すべての食材は会場に入ってから受け取るので、あらかじめ準備をして置くこともできないのだ。時間内に50人分の調理を終えることが出来なければ、残りの料理は提供できないからポイントが下がる。

 僕は会場の片隅でアーシャ様とジャニス皇女が来るのを待っている。カンナとアルムさんも一緒だ。今日は5人で料理大会に評価者として参加予定だ。

「おはよう。」

 待つ間もなく、アーシャ様が手を振りながら現れた。

「「「お早うございます。アーシャ様」」」

 僕達の声が揃う。

「ダメよ。今日は様付けはなし、でないと周りの人に変に思われるわ。それとジャニス皇女はジャニスちゃんと呼んでね。」

「ち、ちゃん!?」

 ジャニス皇女が不服そうな声を出す。

「一番年下なんだからいいじゃない。それとも山に帰る?」

「くっ.....。分かったわよ。」

「昨日から楽しみにしてたものね。」

「当然でしょう。神域に来てからは、毎日毎日同じ料理ばかりだもの。最初はこれも悪くないと思ったけれど、いくらなんでも飽きるわよ。」

「はいはい、その気持ちは分かるから連れて来てあげたのよ。シロムさん、それじゃ行きましょうか?」

「はい、アーシャ...さん。」

 危ない、ついアーシャ様と言いたくなる。

「ジャニス皇女、神域での暮らしはいかがですか?」

 列に並びながらジャニス皇女の耳元で囁いてみる。

「悪くは無いわよ。最初は洞窟の中に家があると聞いてびっくりしたけど、部屋自体は普通だし、着替えも遊牧民の服だけど沢山ある。それに書斎には図書館かと思うくらい沢山の本があるの。だから毎日読書三昧よ、退屈しなくて良いわね。御子様から聞く神と精霊の戦いの話や、魔族との戦いの話も興味深いしね。今や私が人間の中で一番この世界の真実を知っているのかもしれないわよ。」

「魔族って何ですか?」

「良く分からないらしいわ、御子様が生まれる前の話だしね。この世界の外からやって来た侵略者ですって。その時は神と精霊が協力して撃退したそうよ。もっとも犠牲も大きかったらしいけどね。あの仲の悪そうな神と精霊が共闘したのよ。よっぽどの強敵だったのでしょうね。」

「そ、そうなのですね。」

 神や精霊の強敵? とんでもないな....。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『悪役令嬢』は始めません!

月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。 突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。 と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。 アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。 ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。 そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。 アデリシアはレンの提案に飛び付いた。 そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。 そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが―― ※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。

王子様とずっと一緒にいる方法

秋月真鳥
恋愛
五歳のわたくし、フィーネは姉と共に王宮へ。 そこで出会ったのは、襲われていた六歳の王太子殿下。 「フィーネ・エルネスト、助太刀します! お覚悟ー!」 身長を超える大剣で暗殺者を一掃したら、王子様の学友になっちゃった! 「フィーネ嬢、わたしと過ごしませんか?」 「王子様と一緒にいられるの!?」 毎日お茶して、一緒にお勉強して。 姉の恋の応援もして。 王子様は優しくて賢くて、まるで絵本の王子様みたい。 でも、王子様はいつか誰かと結婚してしまう。 そうしたら、わたくしは王子様のそばにいられなくなっちゃうの……? 「ずっとわたしと一緒にいる方法があると言ったら、フィーネ嬢はどうしますか?」 え? ずっと一緒にいられる方法があるの!? ――これは、五歳で出会った二人が、時間をかけて育む初恋の物語。 彼女はまだ「恋」を知らない。けれど、彼はもう決めている――。 ※貧乏子爵家の天真爛漫少女×策略王子の、ほのぼのラブコメです。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...