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68. ウィンディーネ様救出作戦
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(シロム視点)
翌日もほぼ同様のことが繰り返された。聖なる山の神様はウィンディーネさんが閉じ込められた神器の構造をほぼ理解された様だが、あくまで推論でしかなく、分解しないと確信は得られないらしい。分解するのは危険を伴うので、まずはジャニス皇女の調査結果を待つと仰った。
一方のジャニス皇女も聖なる山の神様と同様、神器の構造についての推論は出来たらしい。流石は希代の天才児だ。ただし聖なる山の神様と違うのは分解してもウィンディーネ様に危害が及ぶ心配がないと言う事だ。
「明日はお盆型の神器を分解してみようと思うの。あの神器は魂のある位置を示すものよ。カリトラス大神の巫女達はあれを使ってレイスがどこにいるか突き止めていたんだと思う。特筆すべき点は、人間には反応しないでレイスや精霊の魂だけに反応することね。
もうひとつの神器は魂を攻撃するための物よ。ただし光を拡散すれば苦痛を与えるだけでダメージは少ないと思う。レイスの魂を傷付けないための配慮かもしれないと考えているわ。レイスの魂を捕獲するのが目的だから、魂に傷がつくと価値が下がるのかも。」
ジャニス皇女が夕食時に報告してくれた。
一方カリトラス大神の巫女の少女だが、相変わらず僕とは口をきいてくれない。アーシャ様がお尋ねになっても自分の名前すら話そうとしない。
丸一日少女を監視しているのは疲れる。今日も自分の部屋に戻ると早速風呂に入って疲れを癒した。この風呂と言う物は中々気に入った。もっとも、すぐ横で悔しそうな顔で目を瞑っている幼女が居なければさらに快適なのは言うまでもない。
事件は三日目に起こった。朝食後しばらくして、ジャニス皇女の研究室からボン! という爆発音が響いたのだ。アーシャ様と僕が駆けつけると、ジャニス皇女が床に倒れており、研究用の机の上には、お盆型の神器の残骸が散乱していた。アーシャ様が急いで怪我をしていたジャニス皇女を回復させる。
「ご神器が....。」
悲痛な叫び声が聞こえたと思ったら巫女の少女だった。そう言えば監視を命ぜられていたのにも関わらず彼女のことを忘れてここに駆け付けてしまった。
「こんな....ここまでバラバラになってしまってはもう直せない。教祖様でも無理だわ。」
独り言の様にそう言って座り込んでしまった。落胆している様だ。
一方、アーシャ様の治療で一命を取り留めたジャニス皇女は、目を覚ました途端大変な剣幕で叫んだ。
「これの製作者は絶対に根性が曲がってる。下手に分解しようとすると爆発する仕掛けになっていたのだわ。しかも結界の隙間からミスリードする様な構造だけを見える様にしている。思惑に乗って分解を始めると ボン! ってわけよ。蹴飛ばして遣りたい!」
「と言う事はもしかして...」
「そうよ、間違いない。ウィンディーネさんが捕まっている神器も同様でしょうね。結界の隙間から見える構造はフェイク、下手に分解しようとすると爆発するわね。」
万事休すだ。ウィンディーネさんを助けるにはどうすれば良いのか分からない。僕は意気消沈してその場に座り込んだ。
「せめてウィンディーネ様と念話が出来れば、中の状況が分かるのにな....。」
と思わず愚痴った。当然のことながらウィンディーネ様が神器の中に入ってから念話は通じない。だが僕の言葉に反応した者がいた、ジャニス皇女だ。
「それよ! どうして気付かなかったのかしら。これならいけるかも! 皆来て頂戴。」
ジャニス皇女が元気よく叫ぶ。そして皇女に付いて行った先は、ウィンディーネさんが閉じ込められた神器を保管している部屋だった。
「まずはこれを見て。」
そう言って、ジャニス皇女は神器から出ている筒を手に持つと、自分に向けて作動させた。
「危ない!」
思わず目を瞑ったが、恐る恐る薄目を開けるとジャニス皇女は平気な顔で神器の前に立っていた。まったく、つい先ほど死にかけたばかりなのにどういう神経をしているのやら。
「思った通りよ。神器はレイスや精霊には効果があるのに人間には効かない。お盆型の神器もそうだったし、これもそう。理由は分からないけど、それなら方法がある。」
皇女の行動には肝が冷えたが、それからジャニス皇女の作戦を聞く内に僕はますます肝が冷えたのだった。なにせ作戦の中心となるのは僕だったから。
「大精霊のウィンディーネさんは御子様と同じくらいの力があるのでしょう? そのウィンディーネさんが自力で出て来られないなんて有りえない。この神器がどれほど強固な物質で出来ていたとしても、どれほど強力な結界が張られていたとしてもよ。考えられることは唯一つ、この神器の中の空間座標が絶え間なく変化しているの。だから出口が分からないのよ。」
「御免、もう少し分かりやすく言ってくれない。」
アーシャ様が注文を付ける。当然のことながら僕にもジャニス皇女の言っていることが分からない。
「簡単に言うと、ウィンディーネさんが閉じ込められている空間が迷路になっていて、しかも出口に向かう唯一の道が時間と共に変化しているの。内容が次々に変わる迷路の中にいる様な物ね。」
なんとなくだが、ジャニス皇女が言っていることが理解できた気がする。
「だから正しい道さえ示せればウィンディーネさんは出て来れる。いい? 今からこの神器をシロムさんに向かって作動させるの。先ほど実験した様に人間のシロムさんにこの神器は効果がない。吸い込まれることは無いわ。そして神器を作動させている間は外界と神器の中との間の通路が開いているはず。すなわちウィンディーネさんが脱出するための出口が開いているわけよ。」
やっぱり僕が神器を向けられるわけだ。さっきのジェニス皇女の実験で大丈夫だと証明されているけれど、なんとなく怖い。
翌日もほぼ同様のことが繰り返された。聖なる山の神様はウィンディーネさんが閉じ込められた神器の構造をほぼ理解された様だが、あくまで推論でしかなく、分解しないと確信は得られないらしい。分解するのは危険を伴うので、まずはジャニス皇女の調査結果を待つと仰った。
一方のジャニス皇女も聖なる山の神様と同様、神器の構造についての推論は出来たらしい。流石は希代の天才児だ。ただし聖なる山の神様と違うのは分解してもウィンディーネ様に危害が及ぶ心配がないと言う事だ。
「明日はお盆型の神器を分解してみようと思うの。あの神器は魂のある位置を示すものよ。カリトラス大神の巫女達はあれを使ってレイスがどこにいるか突き止めていたんだと思う。特筆すべき点は、人間には反応しないでレイスや精霊の魂だけに反応することね。
もうひとつの神器は魂を攻撃するための物よ。ただし光を拡散すれば苦痛を与えるだけでダメージは少ないと思う。レイスの魂を傷付けないための配慮かもしれないと考えているわ。レイスの魂を捕獲するのが目的だから、魂に傷がつくと価値が下がるのかも。」
ジャニス皇女が夕食時に報告してくれた。
一方カリトラス大神の巫女の少女だが、相変わらず僕とは口をきいてくれない。アーシャ様がお尋ねになっても自分の名前すら話そうとしない。
丸一日少女を監視しているのは疲れる。今日も自分の部屋に戻ると早速風呂に入って疲れを癒した。この風呂と言う物は中々気に入った。もっとも、すぐ横で悔しそうな顔で目を瞑っている幼女が居なければさらに快適なのは言うまでもない。
事件は三日目に起こった。朝食後しばらくして、ジャニス皇女の研究室からボン! という爆発音が響いたのだ。アーシャ様と僕が駆けつけると、ジャニス皇女が床に倒れており、研究用の机の上には、お盆型の神器の残骸が散乱していた。アーシャ様が急いで怪我をしていたジャニス皇女を回復させる。
「ご神器が....。」
悲痛な叫び声が聞こえたと思ったら巫女の少女だった。そう言えば監視を命ぜられていたのにも関わらず彼女のことを忘れてここに駆け付けてしまった。
「こんな....ここまでバラバラになってしまってはもう直せない。教祖様でも無理だわ。」
独り言の様にそう言って座り込んでしまった。落胆している様だ。
一方、アーシャ様の治療で一命を取り留めたジャニス皇女は、目を覚ました途端大変な剣幕で叫んだ。
「これの製作者は絶対に根性が曲がってる。下手に分解しようとすると爆発する仕掛けになっていたのだわ。しかも結界の隙間からミスリードする様な構造だけを見える様にしている。思惑に乗って分解を始めると ボン! ってわけよ。蹴飛ばして遣りたい!」
「と言う事はもしかして...」
「そうよ、間違いない。ウィンディーネさんが捕まっている神器も同様でしょうね。結界の隙間から見える構造はフェイク、下手に分解しようとすると爆発するわね。」
万事休すだ。ウィンディーネさんを助けるにはどうすれば良いのか分からない。僕は意気消沈してその場に座り込んだ。
「せめてウィンディーネ様と念話が出来れば、中の状況が分かるのにな....。」
と思わず愚痴った。当然のことながらウィンディーネ様が神器の中に入ってから念話は通じない。だが僕の言葉に反応した者がいた、ジャニス皇女だ。
「それよ! どうして気付かなかったのかしら。これならいけるかも! 皆来て頂戴。」
ジャニス皇女が元気よく叫ぶ。そして皇女に付いて行った先は、ウィンディーネさんが閉じ込められた神器を保管している部屋だった。
「まずはこれを見て。」
そう言って、ジャニス皇女は神器から出ている筒を手に持つと、自分に向けて作動させた。
「危ない!」
思わず目を瞑ったが、恐る恐る薄目を開けるとジャニス皇女は平気な顔で神器の前に立っていた。まったく、つい先ほど死にかけたばかりなのにどういう神経をしているのやら。
「思った通りよ。神器はレイスや精霊には効果があるのに人間には効かない。お盆型の神器もそうだったし、これもそう。理由は分からないけど、それなら方法がある。」
皇女の行動には肝が冷えたが、それからジャニス皇女の作戦を聞く内に僕はますます肝が冷えたのだった。なにせ作戦の中心となるのは僕だったから。
「大精霊のウィンディーネさんは御子様と同じくらいの力があるのでしょう? そのウィンディーネさんが自力で出て来られないなんて有りえない。この神器がどれほど強固な物質で出来ていたとしても、どれほど強力な結界が張られていたとしてもよ。考えられることは唯一つ、この神器の中の空間座標が絶え間なく変化しているの。だから出口が分からないのよ。」
「御免、もう少し分かりやすく言ってくれない。」
アーシャ様が注文を付ける。当然のことながら僕にもジャニス皇女の言っていることが分からない。
「簡単に言うと、ウィンディーネさんが閉じ込められている空間が迷路になっていて、しかも出口に向かう唯一の道が時間と共に変化しているの。内容が次々に変わる迷路の中にいる様な物ね。」
なんとなくだが、ジャニス皇女が言っていることが理解できた気がする。
「だから正しい道さえ示せればウィンディーネさんは出て来れる。いい? 今からこの神器をシロムさんに向かって作動させるの。先ほど実験した様に人間のシロムさんにこの神器は効果がない。吸い込まれることは無いわ。そして神器を作動させている間は外界と神器の中との間の通路が開いているはず。すなわちウィンディーネさんが脱出するための出口が開いているわけよ。」
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