6 / 90
第1章 惑星ルーテシア編
6. 夕食
しおりを挟む
「トモミ、そろそろ食事の時間だよ。」
ハルちゃんの呼びかけに目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたみたい。私はあわてて起き上がる。服のままで寝てしまったから皺になっているかもしれない。私は急いでクローゼットに掛けている別の服に着替えた。淡いピンクのお気に入りのワンピースだが、シンプルなデザインなのでこの部屋の雰囲気と違和感が半端ない。お義母様も一緒に夕食を取るかもしれないよね。大丈夫かなあ? 別の惑星から来たのだから服についても文化の違いがあって当然と思ってくれたらよいけれど、衣服に関するセンスが悪いとなって嫁として評価が下がったらいやだなあ。
まあ、ハルちゃんの服装のレベルだって私と似たようなものだ。ここは開き直るしかないだろう。それよりこの世界の料理の方が気になる。なにせ異世界なのだ、地球の人間でこの世界の料理を食べるのは私が初めてだろう。私はパイオニアだ。ハルちゃんに聞いた限りでは、地球の人間とこの世界の人間では魔力の有無を別にすれば身体の構造に大きな差はなく、食べ物に関しても地球人が食べてはいけないものは無いとのことだ。だったら食べるしかないでしょう。食べるの大好き人間の私はよだれを垂らしそうな顔でハルちゃんを従えいそいそと食堂に向かった。
豪華な食堂に入るとお義母様がすでに席に着かれていた。
「お義母様、お待たせして申し訳ありません。」
<<とんでもありません。トモミ様のお口に合えばよろしいのですが。>>
相変わらず丁寧な口調で対応してくれるのだが、嫁の立場としては申し訳なくて私の精神はガシガシと削られていく。まあ、お義母様とは念話で話ができるだけ良いのかもしれない。コミュニケーションが取れるって大事だよね。私もルーテシア語を覚えないと、とりあえず、「ありがとう」ってなんて言うか後でハルちゃんに教えてもらおう。
<< どうぞお座りになってください。この惑星は人間族の国、ドワーフ族の国、獣人族の国、鱗人族の国、エルフ族の国に分かれていますが、今日はこの神殿がある人間族の国の料理を用意させました。>>
「ありがとうございます。」
<< ところでトモミ様はお酒を飲まれますか? >>
「はい、お酒は大好きです。」
<< お好みのお酒はありますでしょうか? >>
「ごめんなさい。こちらのお酒はよくわからないので、お勧めはありますか?」
<< それではカルミのワインはどうでしょう。甘くて香りが良いので女性に人気なのですよ。 私も気に入っております。>>
「それでは、それをいただきます。」
<< ハルトは何にする? >>
「じゃあ、僕はドールドにします。」
<< あら、お酒の好みは変わっていないのね。>>
ルーテシア様は壁際に控えているメイドさんを呼ばれて何かおっしゃられ、そのメイドさんが部屋を出てしばらくするとまず酒が運ばれてきた。料理も前菜ぽいもの、スープ、サラダ、肉料理、パスタ料理、エビやカニに似たちょっとグロテスクなものと次々と運ばれてくる。
メイドさんがグラスにお酒を注いでくれる。なんとひとりひとりに専属のメイドさんが付いている。
カルミのワインは柑橘系の香りで甘味があって気に入った。
「おいしいです。」
<< それはようございました。>>。
ワインの次は無難そうな肉料理に手を出した。牛肉とも豚肉とも少し違う。少し硬いけど味わいがあって好みが分かれそうだが私は気に入った。ワインとも合いそうだ。
「このお肉もおいしいですね。」
<< オーク肉でございます。お気に召されて良かったです。>>
オーク! 念話なのでどの様に日本語に訳されているのかは不明だが、オークといえばブタ型のモンスターじゃなかったっけ。この星は魔法もあればモンスターもいるのか。
「ハルちゃん、この星にはモンスターがいるの? 」
「いるよ。オークだけでなく、グレートウルフ、オーガ、ドラゴン、ガーゴイルなんかもいる。」
<< グリフォン、ケロべロス、コカトリス、海にはクラーケンもいますよ。食用として良く食べられるのはオーク、グレートウルフ、コカトリスです。ドラゴンもおいしいですけど倒すのが大変だからめったに出回らないですね。>>
「えっ、なんでゲームのモンスターがこの星にいるの。」
<< そうなのですか。これらは私が創造したのですが、昔地球の神にこの星のモンスターについて伝えたことがありましたので、彼が人間に掲示として示したのかもしれませんね。>>
「ゲームではモンスターは人間の敵なんですが、この星のモンスターも同じですか?」
<< それは同じです。ただし人間の敵というよりは、人が国どうしで戦をしない様するのが目的でございます。 モンスターは国と国とを隔てる大森林に住んでおりますから、軍隊は大きな損害を覚悟しなければ森林を通って他の国に攻め込むことが出来ません。必然的に進軍路は狭い街道に限定されますので、守る方は山岳の小道で迎え撃てば良いのです。小道であれば大軍であっても戦えるのは道幅に並ぶことができる人数だけですから、数の差が戦力差になりにくいのでございます。>>
なるほど、モンスターがいるのは戦争防止のためらしい。
「あの、ルーテシア様は地球の神様とお知り合いなんですか?」
<< はい、昔からの知り合いでございます。もっとも下級神は惑星から離れることはできませんので直接合ったことはございませんが、手紙やメッセージの様な情報であればやり取りすることは可能ですから。>>
「えっ、ひょっとして、神様の世界にもメールやSNSみたいなものがあるんですか?」
「そこまで便利なものじゃないよ。たとえ情報であっても世界を超えて相手に届けるには大量の魔力が必要になるからね。それにリアルタイムでのやり取りもできないし。」
「そうかあ、携帯みたいにリアルタイムでお話しが出来るわけじゃないんだ。あれ、でも私たち地球から瞬間移動で一瞬の内にここに到着したよね? それでもリアルタイムの会話はできないの?」
そうなんだ、私たちは結婚式を挙げた翌日(すなわち今日だが)こちらの世界へ瞬間移動した。今日の朝は私もハルちゃんも昼前まで寝過ごして焦った、昨日は二次会まで付き合って帰宅が遅かったのに加えやることがあったので寝るのが遅かったんだ。そんな遅くから何をしてたかって? そんなの新婚の夫婦に聞くだけ野暮ってもんだ。
それから朝昼兼用の食事をして、ふたりで荷物をもって新居のアパートの玄関に立って、ハルちゃんが虚空を見つめながら「それではお願いします」といった途端景色が切り替わったんだ。まさに一瞬だった。神様すごいって感動した。
「いや、瞬間移動している者からみると一瞬で移動した様に感じるけれど、地球では約1日経過しているんだ。うまく説明できないけど光速の壁を越える影響らしい。」
「そうなんだ。 じゃ、SNSは? 神様のSNSがあったら面白そうなのにね。一度アクセスしてみたい。」
「それはどうかな。仮に神様のSNSがあったとしても面白いかどうかは疑問だよ。神様の世界は良く言えば秩序のある世界、悪く言えば上からの命令は絶対の階級社会だからね。SNSはネット上ではすべての人が平等と感じられるから面白いけど、たとえば会社の部長や課長を交えてSNSでやりとりしても楽しくないよね。」
<< ハルト、神の世界についてはお前の言うことも否定はしないが、あまり大っぴらに公言するでないぞ。特に他の神の前ではな。トモミ様もよろしいですね。>>
「わかってますよ。母上。」
「承知いたしました。お義母様」
どうやら神様の世界も和気あいあいとはいかない雰囲気だな。派閥とか世代間の溝とかもあるんだろうか。まあ、神様なんて関係ないけどね。 いや、お義母様が女神様という時点で関係ないとはいえないか。私の前世も神様らしいし。いやいやいや、関わらないのが一番だよ。
その後他の料理にも挑戦したが、この世界の料理は意外なほどレベルが高い。もちろん女神様にいい加減なものは出せないというのもあるだろうけど、地球の料理と比べても遜色ない。調理方法も、焼く、煮る、蒸す、揚げるとすべてそろっている。文化レベルの高さがうかがえるな。一見グロテスクに見えたカニ料理も食べてみれば地球のカニより味が凝縮されている。そして料理がうまいとお酒もすすむ。ルーテシア様も久々のハルちゃんとの邂逅が嬉しいのか、盛んにハルちゃんの子供時代のエピソードを口にしてハルちゃんを弄っている。ハルちゃんが恥ずかしそうな、なんとも言えない顔をしているな。きっと心の中で「やめてくれ~~」と叫んでいるんだろうか。なんかハルちゃんだけでなくルーテシア様とも距離が縮まったきがする。そんなことを考えていて気が緩んだからだろうか、
「ルーテシア様、そういえば私自分の魂に触れましたよ。曲がっている触手みたいなのは治せませんでしたけどね。」
と口を滑らせてしまった。しまったと思ったけどもう遅い。和やかだった会話が突然中断され、急に真顔になったルーテシア様は自分の唇の前に人差し指を立ててこちらを見た。恐らく意味は地球と同じで口を閉じろということだろう。
その後ルーテシア様がメイドさん達に何か言うと、メイドさん達は一礼したのち部屋から出て行く。私が口にした内容は、人払いをして話すべき内容だということだ。
メイドさん達が部屋を出ていくと、ルーテシア様はこちらに向き直った。
<< トモミ様、ご自分の魂に触れることができたのですか!? >>
「はい、でも触れただけでまったく動かせませんでした。」
<< 動かせなかった理由には心あたりがございますが、魂に触ることができたということはトモミ様には魂のプロテクトが働いていないということになります。私は触れられないことから、恐らくトモミ様限定で解除されているのではないでしょうか。>>
「そうなんですね....」
<< トモミ様、魂のインターフェースの歪みを修正し、トモミ様本来の力を取り戻してみませんか。プロテクトが解除されているのであれば方法はあります。>>
「それは....」
正直言って興味はある、だけど何故か怖いんだ。私の前世が神なのは良いとして(前世がカタツムリだと言われるより良いよね)、なぜ、インターフェースとやらが曲げられているんだ。なぜ、神ならば保持しているはずの前世の記憶が消去されているんだ。誰かの悪意を感じるよね。でも、でもだよ、ルーテシア様はプロテクトが私限定で解除されていると言ったよね。だったらインターフェースを捻じ曲げられるのも、前世の記憶を消去できるのも私だけってことにならないか。だったら私はなぜそんなことをしたの? いったい私に何があったんだろう。
「申し訳ありません。少し考えさせていただけますか。」
と言うのが精一杯だった。
ハルちゃんの呼びかけに目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたみたい。私はあわてて起き上がる。服のままで寝てしまったから皺になっているかもしれない。私は急いでクローゼットに掛けている別の服に着替えた。淡いピンクのお気に入りのワンピースだが、シンプルなデザインなのでこの部屋の雰囲気と違和感が半端ない。お義母様も一緒に夕食を取るかもしれないよね。大丈夫かなあ? 別の惑星から来たのだから服についても文化の違いがあって当然と思ってくれたらよいけれど、衣服に関するセンスが悪いとなって嫁として評価が下がったらいやだなあ。
まあ、ハルちゃんの服装のレベルだって私と似たようなものだ。ここは開き直るしかないだろう。それよりこの世界の料理の方が気になる。なにせ異世界なのだ、地球の人間でこの世界の料理を食べるのは私が初めてだろう。私はパイオニアだ。ハルちゃんに聞いた限りでは、地球の人間とこの世界の人間では魔力の有無を別にすれば身体の構造に大きな差はなく、食べ物に関しても地球人が食べてはいけないものは無いとのことだ。だったら食べるしかないでしょう。食べるの大好き人間の私はよだれを垂らしそうな顔でハルちゃんを従えいそいそと食堂に向かった。
豪華な食堂に入るとお義母様がすでに席に着かれていた。
「お義母様、お待たせして申し訳ありません。」
<<とんでもありません。トモミ様のお口に合えばよろしいのですが。>>
相変わらず丁寧な口調で対応してくれるのだが、嫁の立場としては申し訳なくて私の精神はガシガシと削られていく。まあ、お義母様とは念話で話ができるだけ良いのかもしれない。コミュニケーションが取れるって大事だよね。私もルーテシア語を覚えないと、とりあえず、「ありがとう」ってなんて言うか後でハルちゃんに教えてもらおう。
<< どうぞお座りになってください。この惑星は人間族の国、ドワーフ族の国、獣人族の国、鱗人族の国、エルフ族の国に分かれていますが、今日はこの神殿がある人間族の国の料理を用意させました。>>
「ありがとうございます。」
<< ところでトモミ様はお酒を飲まれますか? >>
「はい、お酒は大好きです。」
<< お好みのお酒はありますでしょうか? >>
「ごめんなさい。こちらのお酒はよくわからないので、お勧めはありますか?」
<< それではカルミのワインはどうでしょう。甘くて香りが良いので女性に人気なのですよ。 私も気に入っております。>>
「それでは、それをいただきます。」
<< ハルトは何にする? >>
「じゃあ、僕はドールドにします。」
<< あら、お酒の好みは変わっていないのね。>>
ルーテシア様は壁際に控えているメイドさんを呼ばれて何かおっしゃられ、そのメイドさんが部屋を出てしばらくするとまず酒が運ばれてきた。料理も前菜ぽいもの、スープ、サラダ、肉料理、パスタ料理、エビやカニに似たちょっとグロテスクなものと次々と運ばれてくる。
メイドさんがグラスにお酒を注いでくれる。なんとひとりひとりに専属のメイドさんが付いている。
カルミのワインは柑橘系の香りで甘味があって気に入った。
「おいしいです。」
<< それはようございました。>>。
ワインの次は無難そうな肉料理に手を出した。牛肉とも豚肉とも少し違う。少し硬いけど味わいがあって好みが分かれそうだが私は気に入った。ワインとも合いそうだ。
「このお肉もおいしいですね。」
<< オーク肉でございます。お気に召されて良かったです。>>
オーク! 念話なのでどの様に日本語に訳されているのかは不明だが、オークといえばブタ型のモンスターじゃなかったっけ。この星は魔法もあればモンスターもいるのか。
「ハルちゃん、この星にはモンスターがいるの? 」
「いるよ。オークだけでなく、グレートウルフ、オーガ、ドラゴン、ガーゴイルなんかもいる。」
<< グリフォン、ケロべロス、コカトリス、海にはクラーケンもいますよ。食用として良く食べられるのはオーク、グレートウルフ、コカトリスです。ドラゴンもおいしいですけど倒すのが大変だからめったに出回らないですね。>>
「えっ、なんでゲームのモンスターがこの星にいるの。」
<< そうなのですか。これらは私が創造したのですが、昔地球の神にこの星のモンスターについて伝えたことがありましたので、彼が人間に掲示として示したのかもしれませんね。>>
「ゲームではモンスターは人間の敵なんですが、この星のモンスターも同じですか?」
<< それは同じです。ただし人間の敵というよりは、人が国どうしで戦をしない様するのが目的でございます。 モンスターは国と国とを隔てる大森林に住んでおりますから、軍隊は大きな損害を覚悟しなければ森林を通って他の国に攻め込むことが出来ません。必然的に進軍路は狭い街道に限定されますので、守る方は山岳の小道で迎え撃てば良いのです。小道であれば大軍であっても戦えるのは道幅に並ぶことができる人数だけですから、数の差が戦力差になりにくいのでございます。>>
なるほど、モンスターがいるのは戦争防止のためらしい。
「あの、ルーテシア様は地球の神様とお知り合いなんですか?」
<< はい、昔からの知り合いでございます。もっとも下級神は惑星から離れることはできませんので直接合ったことはございませんが、手紙やメッセージの様な情報であればやり取りすることは可能ですから。>>
「えっ、ひょっとして、神様の世界にもメールやSNSみたいなものがあるんですか?」
「そこまで便利なものじゃないよ。たとえ情報であっても世界を超えて相手に届けるには大量の魔力が必要になるからね。それにリアルタイムでのやり取りもできないし。」
「そうかあ、携帯みたいにリアルタイムでお話しが出来るわけじゃないんだ。あれ、でも私たち地球から瞬間移動で一瞬の内にここに到着したよね? それでもリアルタイムの会話はできないの?」
そうなんだ、私たちは結婚式を挙げた翌日(すなわち今日だが)こちらの世界へ瞬間移動した。今日の朝は私もハルちゃんも昼前まで寝過ごして焦った、昨日は二次会まで付き合って帰宅が遅かったのに加えやることがあったので寝るのが遅かったんだ。そんな遅くから何をしてたかって? そんなの新婚の夫婦に聞くだけ野暮ってもんだ。
それから朝昼兼用の食事をして、ふたりで荷物をもって新居のアパートの玄関に立って、ハルちゃんが虚空を見つめながら「それではお願いします」といった途端景色が切り替わったんだ。まさに一瞬だった。神様すごいって感動した。
「いや、瞬間移動している者からみると一瞬で移動した様に感じるけれど、地球では約1日経過しているんだ。うまく説明できないけど光速の壁を越える影響らしい。」
「そうなんだ。 じゃ、SNSは? 神様のSNSがあったら面白そうなのにね。一度アクセスしてみたい。」
「それはどうかな。仮に神様のSNSがあったとしても面白いかどうかは疑問だよ。神様の世界は良く言えば秩序のある世界、悪く言えば上からの命令は絶対の階級社会だからね。SNSはネット上ではすべての人が平等と感じられるから面白いけど、たとえば会社の部長や課長を交えてSNSでやりとりしても楽しくないよね。」
<< ハルト、神の世界についてはお前の言うことも否定はしないが、あまり大っぴらに公言するでないぞ。特に他の神の前ではな。トモミ様もよろしいですね。>>
「わかってますよ。母上。」
「承知いたしました。お義母様」
どうやら神様の世界も和気あいあいとはいかない雰囲気だな。派閥とか世代間の溝とかもあるんだろうか。まあ、神様なんて関係ないけどね。 いや、お義母様が女神様という時点で関係ないとはいえないか。私の前世も神様らしいし。いやいやいや、関わらないのが一番だよ。
その後他の料理にも挑戦したが、この世界の料理は意外なほどレベルが高い。もちろん女神様にいい加減なものは出せないというのもあるだろうけど、地球の料理と比べても遜色ない。調理方法も、焼く、煮る、蒸す、揚げるとすべてそろっている。文化レベルの高さがうかがえるな。一見グロテスクに見えたカニ料理も食べてみれば地球のカニより味が凝縮されている。そして料理がうまいとお酒もすすむ。ルーテシア様も久々のハルちゃんとの邂逅が嬉しいのか、盛んにハルちゃんの子供時代のエピソードを口にしてハルちゃんを弄っている。ハルちゃんが恥ずかしそうな、なんとも言えない顔をしているな。きっと心の中で「やめてくれ~~」と叫んでいるんだろうか。なんかハルちゃんだけでなくルーテシア様とも距離が縮まったきがする。そんなことを考えていて気が緩んだからだろうか、
「ルーテシア様、そういえば私自分の魂に触れましたよ。曲がっている触手みたいなのは治せませんでしたけどね。」
と口を滑らせてしまった。しまったと思ったけどもう遅い。和やかだった会話が突然中断され、急に真顔になったルーテシア様は自分の唇の前に人差し指を立ててこちらを見た。恐らく意味は地球と同じで口を閉じろということだろう。
その後ルーテシア様がメイドさん達に何か言うと、メイドさん達は一礼したのち部屋から出て行く。私が口にした内容は、人払いをして話すべき内容だということだ。
メイドさん達が部屋を出ていくと、ルーテシア様はこちらに向き直った。
<< トモミ様、ご自分の魂に触れることができたのですか!? >>
「はい、でも触れただけでまったく動かせませんでした。」
<< 動かせなかった理由には心あたりがございますが、魂に触ることができたということはトモミ様には魂のプロテクトが働いていないということになります。私は触れられないことから、恐らくトモミ様限定で解除されているのではないでしょうか。>>
「そうなんですね....」
<< トモミ様、魂のインターフェースの歪みを修正し、トモミ様本来の力を取り戻してみませんか。プロテクトが解除されているのであれば方法はあります。>>
「それは....」
正直言って興味はある、だけど何故か怖いんだ。私の前世が神なのは良いとして(前世がカタツムリだと言われるより良いよね)、なぜ、インターフェースとやらが曲げられているんだ。なぜ、神ならば保持しているはずの前世の記憶が消去されているんだ。誰かの悪意を感じるよね。でも、でもだよ、ルーテシア様はプロテクトが私限定で解除されていると言ったよね。だったらインターフェースを捻じ曲げられるのも、前世の記憶を消去できるのも私だけってことにならないか。だったら私はなぜそんなことをしたの? いったい私に何があったんだろう。
「申し訳ありません。少し考えさせていただけますか。」
と言うのが精一杯だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる