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第1章 惑星ルーテシア編
8. 女神降臨
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気が付くと私は水の中にいた。なぜか人間の姿ではない。まん丸な球体になっていた。これって私の魂? そうか...私は死んで魂に戻ったのか。ハルちゃんごめんね。心配してくれていたのに。私が勝手に魂を元に戻すと決めて、勝手に失敗して死んじゃったんだね。ルーテシア様にも期待させただけ悪い事したなあ。ごめんなさい。私が戻らなかったら、職場の皆にも迷惑を掛けることになるよね。マリコは新婚旅行のお土産を楽しみにしてるって言ってたよね。渡せなくてごめん。
でもここはどこだろう。水の中だと思うんだけど、海かな? でも周りには何もない。海底も見えないし、魚も一匹も見えない。 ただただ透明な水が広がっているだけ。暗くはないがどこから光が差し込んでいるのか判らない。動こうにも球体の身体では移動は無理の様だ。何だ魂って自分では動けないのか、その点は人間の身体の方が便利だよね。 と思っていると魂の表面にいくつかのくびれが出来始めた。ゆっくりとくびれは大きく深くなり、球体だった魂がいくつかの部分にわかれ始める。くびれた部分のいくつかがだんだんと細長く伸びて行く。
あっ、これ腕と足だ、頭もある。そうか、人間の身体の方が便利だと考えたから人型になろうとしているんだ。しばらくすると人型の輪郭はできた。でもカッコよくない。まるで某タイヤメーカーのキャラクター タイ○マンだ。こんなの人間じゃない、もっと細部まで作り込まないとだめだよ。と勝手に評論する私。だがここからの変化は遅かった。まるで植物の生長をみている様に、少しずつ少しずつ人間らしくなっていく。どれだけの時間が経ったろう、時間を計る手段がないので何日なのか、何年なのか判らないが、ふと気が付くとかなり人に近づいて来ていた。あれ? この顔は私? でも鏡も無いのになぜ自分の顔が見れるんだろう。そう、ある日から私は魂を外部から見る様になっていた。じゃあ今の私は魂ではないのかな?
更に長い時間が経って、私の魂は完全に私の姿になった。生まれたままの一糸纏わぬ姿である。相変わらず太目だ。回りにはだれもいないから気にしないでおこう。気を取り直して思い出した。人型になったのは移動しようとしたからだよね。この形なら動けるのかな。私は腕を持ち上げてみる。ゆっくり動くけれど重い!!! なにこれ、片腕を動かすだけで精一杯だ。まるで長期間ベッドに寝たままだった病人みたい。これはリハビリが必要だよね。ということで、それからはひたすら手足を動かす練習を行う。何の為にって? だって暇だもん。
しばらくして、手足を同時に動かすことができる様になり、移動ができる様になった。水の中なので歩くのではなく泳ぐという感じだけどね。それでもできることが増えたのは嬉しい。どこに行こうかと回りを見る、すると以前見た魂からの触手が目に付いた。人型になったのにもかかわらず触手は存在している。どこから生えているのだろうと根本をみるが根元に行くほどぼやけて見えてはっきりしない。反対方向をみると触手はすべて同じ方向に延びているが、相変わらず1本だけ向きが違う。ただ以前の様に直角に折れ曲がっているのではなく45度位に角度が緩くなっている。 あれ、私この触手の向きを修正したと思ったんだけど? 弾力があるから、力を加えている間だけ真っ直ぐになったけど、手を放したら戻っちゃったんだろうか。
そういえば、私が生きているときは、これらの触手は私の身体に向かっていたと思うんだけど、今はどうなんだろう。と触手の向かっている方向に向きを変える。その方向に何か有る気がする。そちらに向かおうと考えた途端私は何かに投げ飛ばされた。
ゴホ、ゴホ、ゴホ。突然の衝撃とともに水の中から固い床の上に投げ出された私は思いっきり咳き込んだ。しばらくすると呼吸も落ち着いたので、上半身を起こしてあたりを見渡す。石造りの部屋だ、ルーテシア様の神殿かな。水の中にいたのは夢だったんだろうか。その時、グラッと建物全体が揺れる。地震? それもだいぶ大きい。私は何もできず、ただただ床に座り込む。幸いにもこの部屋には背の高い家具らしきものはあまりなく、家具の下敷きになる心配はなさそうだ。石造りの建物だから倒壊しないか心配だけれど、今の所その気配はない。案外頑丈なつくりなのかもしれない。なんせ女神様の神殿だものね。
振動が収まると、ようやく気持ちが落ち着く。その時になって初めて自分が裸であることに気付いた。 身体中が何か粘々した液体で濡れている。何だこれ、髪の毛までべたべたで気持ちが悪い。回りを見渡すと部屋の中央には白色のガラスかプラスチックの様な素材でできか棺桶(?)が横向きに転がっていた。たぶん地震の為にすぐ横にある台座から落下したのだろうか。棺桶には粘つきのある液体が満たされていたらしく床が水浸しである。 台座と棺桶、そして私の居る位置は直線上にある。ひょっとして私この棺桶に入ってた? まさかね。そういえば魂のインターフェースを修復しようとしていて、突然身体が熱くなって胸から炎が噴き出したんだ。私、あの時死んであの棺桶で埋葬されていたんだろうか。それで今生き返った? なんで?
そんなことを考えていると再び大きな揺れが襲ってきた。あわてて逃げようとして思いとどまる。 私、裸だよ。これはまずい、羞恥心をとるか命を取るかの選択をしないといけないかもしれない。
どうしょうかと悩んでいると、誰かが部屋に飛び込んできた。メイド服をきているからメイドさんかな。
メイドさんは私を見ると大きく目を見開いた。
「女神様!! お目覚めになられたのですか!」
そういいながらメイドさんは私に走り寄ってくる。髪の毛は濃紺だが、白髪が混じっているのでグレーに見える。50歳くらいだろうか、顔にも少し皺がある。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫です。」
「後5年はお目覚めにならないとお聞きしていたのですが。」
「たぶん、棺が倒れて放り出されたのかと...」
「そうでございましたか。」
「何があったんですか?」
「詳しくは判りませんが、大きな地震がありました。神殿は大丈夫ですが、町の方では大きな被害が出ている様です。」
「ルーテシア様とハルトさんはどちらですか?」
「女神さまはすで別の世界へ旅立たれました。ハルト様は救助の指揮をとるために町の方に行かれております。」
「そうだったんですね。」
ハルちゃんが救助の指揮? あの、あわあわとした雰囲気が持ち味のハルちゃんが? 大丈夫かな....。
「ハルト様にはトモミ様がお目覚めになられたとすぐ連絡いたします。」
その後あわてた様に付け加えた。
「失礼いたしました。お召し物もすぐにお持ちいたしますので。」
そういうとメイドさんは立ち上がり全速で走って行った。
とりあえず待っていればいいかな。それにしても私は悲惨な恰好だ。全身粘つく液体で覆われている上に、地震の為に落ちてきた埃や砂が付着してドロドロ。あ~、お風呂に入りたい。
あれからも余震は続いているが、徐々に揺れは小さくなってきた。ハルちゃんには連絡が行っただろうか。さっきのメイドさんが、町で大きな被害が出ているって言ってたよね。あれだけの地震だもの、家屋の倒壊や火災が発生していても不思議じゃない。特に石造りの建物は地震に弱いんだ。ハルちゃんは救助の指揮を取ってるって言ってたけど、危険な所に行ってないよね。
手伝いに行きたいけど、私では足手まといになるだけだ。そう考えて気付いた。そうだ! 女神の力だ! それがあればハルちゃんを助けられる。
実は夢の中でインターフェースを修復する方法をずっと考えていたんだ。あの掃除機のホース位の太さの触手では太すぎて、流れてくる魔力の量が多すぎる。だから別のインターフェースを作成する。方法は判らないけど私は魂の形を人型に変えることが出来た、水の中を泳がせることもできた。魂の操作がかなりできる様になっていると思う。それならインターフェースも作れるんじゃないか?
精神を集中すると、頭の中に魂のイメージがくっきりと浮かんだ。私の記憶のとおり人型のままだ、やっぱりあれは夢じゃなかったんだと確信した。それなら試す価値があるよね。私は光ファイバー位の細い細い触手を考える、それが魂から伸びて私の身体につながることをイメージする。ゆっくり、ゆっくり触手が伸びて、ついに私の身体に繋がった瞬間、私の身体は光り輝いた。
覚悟をしていたが、炎も爆発も起きない。成功したのかな? 魔法を使えるようになった?
試しに今一番したい事をイメージしてみる。身体の汚れがきれいになるといいな。風呂に入って全身を綺麗にしたい。そんな魔法があればいいなと考えた瞬間、私の身体は水に包まれた。私の身体を包んだ水はぐるぐる回って私の身体の汚れを落としていく。これ以上息が止められないと思った瞬間、体の回りの水は一瞬で消失した。髪の毛も濡れてない。汚れは綺麗に取れていた。 やった! 私魔法を使えたよ!
その時、タイミング良く先ほどのメイドさんが帰ってきた。駆けて来てくれたみたいで、息が荒い。
「お待たせいたしました。あいにく神殿内も混乱しており、メイド服しか手にはいりませんでした。ご容赦下さい。ハルト様にも連絡が行く様に手配済みでございます。」
メイドさんは一気に言って、俯いて息を整えている。よっぽど急いでくれたんだ。ごめんね。
「十分です。ありがとうございます。」
私がそう言うと初めてメイドさんは顔を上げて私を見た。その瞬間、目を伏せ私の前に跪いた。全身が震えているのが分る。
「お、恐れ多いお言葉にございます。」
何か変だなと思ったけれど、今はそれどころじゃない。私は急いで服を着ると、メイドさんに案内を頼んで町に向かった。
神殿の窓からみると、町のあちこちから煙が上がっている。倒壊した建物もかなりある、やっぱり大変な被害がでているのは間違いない。急がないと!
私はメイドさんに先導されながら駆け足で神殿出口へ向かった。出口に近づくとそこはホールの様になっていて、沢山の人が横たわっていた。うめき声や泣き声があたりを満たしている。負傷者の治療場として使われている様だが、負傷者がどんどん運び込まれてくるのに比べ、明らかに治療のスタッフが不足している。
私がホールに到着すると、なぜだか視線が私に集中してる気がする。でもそんなの無視、ハルちゃんの役に立たないと。私は治療の魔法を使ことに決めた。目を瞑って両手を上にかかげ、私の魔力がホール全体を覆うことをイメージする。掌から魔力が放出していくのが分る。しばらくして目を開けると、ホールにいるすべての人が私を見つめていた。私に向かって手を合わせたり、跪いている人が多い。しばらくの静寂の後、歓声がホールを満たした。
「女神様だ! 女神様が来て下さったぞ! 」
「修行を終えられたのだ。俺たちは助かったぞ!」
「女神様、感謝します。」
「感謝します。」
沢山の人が一斉に叫ぶとこんなに迫力があるのか、と思うくらいの音量がホールを満たしたが、辛うじて聞き取れたのがこれらの言葉だった。私は、女神と認めてもらえた様だ。修行って何? と思ったけど、その疑問は後回しだ。ホールにはまだ次々と負傷者が運ばれて来ているのだ。私はホールの人達に向かって手を上げた。一瞬でホールに静寂が訪れる。
「回復した皆さんは、負傷者の方と場所を変わってください。元気な方は町から負傷者を運び入れる手伝いをお願いします。」
私がを声出すと。沢山の人が 「ハハッ」という感じで頭を垂れてから一斉に出口に向かっていく。私は運び込まれてくる負傷者の治療を再開した。治療が終わると負傷者だった人は皆、感謝の言葉を残して救助の手伝いにホールを飛び出して行った。
何時間治療を行っただろうか、気が付くと運び込まれる負傷者は途切れている。私は治療スタッフのリーダーと思わしき方に、「後はお願いします。」と声をかけて神殿を後にした。
町に入るとまだまだ救助活動は続いているようだ。すぐに助け出せる人は神殿に運び込んだが、建物の下敷きになっている人の捜索と救助に手間取っているのだろう。家族を探しているのだろうか、泣きながら素手で瓦礫を掘り返している10歳くらいの男の子がいる。指から血を流しているが気にしている様子は無い。
ここで女神の力を使わずしてどこで使うというのか。念ずると、私の身体は宙に浮かんだ、そのまま高度を取り町全体が見渡せる位置まで上昇する。下からスカートの中が見えるかもしれないが今はそれどころじゃない。
目を瞑って瓦礫の中にいる人を探索する。視える! どんな人かまでは判らないが、人々の魂が瓦礫の下で赤く光っている。全部で50~60人...いやもっといる。瓦礫を掘り起こしている時間は無い。私は全員を町の広場に瞬間移動させた。途端に頭がクラッとする。魔力の使い過ぎだろうか。でもほとんどの人が大怪我をしている。 ここで止めるわけには行かない。私は続けて治療にかかった。
「ここはどこだ?」
「助かったのか?」
「見ろ、怪我が治っていく。」
「ちぎれた腕が生えてきたぞ。」
「目が見える。見えるぞ!」
さまざまな声が聞こえて来た。
助け出された人達は最初は何か起こったか判らず茫然としていたが、誰かが上空の私を指さして何か叫ぶと、全員が私に向かって頭をさげて祈りのポーズになった。
ここで漸く自分のやらかしたことに理解が及んでくる。私、祈られてる! 神様みたいに祈られてる! と理解すると恥ずかしさが頂点に達して顔が熱くなった。たぶん真っ赤になっているだろう。私は逃げる様に上空から神殿に向かった。途中で先ほどのメイドさんと合流、そこからは徒歩で神殿に向かう。道はごった返していたが、私が近づくと皆アッと言う間に道の端により頭を下げた。私に向かって真剣に祈っている人もいる。私は日本人特有の愛想笑いをしながら神殿に入り、メイドさんに少し休みたい旨を伝えた。
でもここはどこだろう。水の中だと思うんだけど、海かな? でも周りには何もない。海底も見えないし、魚も一匹も見えない。 ただただ透明な水が広がっているだけ。暗くはないがどこから光が差し込んでいるのか判らない。動こうにも球体の身体では移動は無理の様だ。何だ魂って自分では動けないのか、その点は人間の身体の方が便利だよね。 と思っていると魂の表面にいくつかのくびれが出来始めた。ゆっくりとくびれは大きく深くなり、球体だった魂がいくつかの部分にわかれ始める。くびれた部分のいくつかがだんだんと細長く伸びて行く。
あっ、これ腕と足だ、頭もある。そうか、人間の身体の方が便利だと考えたから人型になろうとしているんだ。しばらくすると人型の輪郭はできた。でもカッコよくない。まるで某タイヤメーカーのキャラクター タイ○マンだ。こんなの人間じゃない、もっと細部まで作り込まないとだめだよ。と勝手に評論する私。だがここからの変化は遅かった。まるで植物の生長をみている様に、少しずつ少しずつ人間らしくなっていく。どれだけの時間が経ったろう、時間を計る手段がないので何日なのか、何年なのか判らないが、ふと気が付くとかなり人に近づいて来ていた。あれ? この顔は私? でも鏡も無いのになぜ自分の顔が見れるんだろう。そう、ある日から私は魂を外部から見る様になっていた。じゃあ今の私は魂ではないのかな?
更に長い時間が経って、私の魂は完全に私の姿になった。生まれたままの一糸纏わぬ姿である。相変わらず太目だ。回りにはだれもいないから気にしないでおこう。気を取り直して思い出した。人型になったのは移動しようとしたからだよね。この形なら動けるのかな。私は腕を持ち上げてみる。ゆっくり動くけれど重い!!! なにこれ、片腕を動かすだけで精一杯だ。まるで長期間ベッドに寝たままだった病人みたい。これはリハビリが必要だよね。ということで、それからはひたすら手足を動かす練習を行う。何の為にって? だって暇だもん。
しばらくして、手足を同時に動かすことができる様になり、移動ができる様になった。水の中なので歩くのではなく泳ぐという感じだけどね。それでもできることが増えたのは嬉しい。どこに行こうかと回りを見る、すると以前見た魂からの触手が目に付いた。人型になったのにもかかわらず触手は存在している。どこから生えているのだろうと根本をみるが根元に行くほどぼやけて見えてはっきりしない。反対方向をみると触手はすべて同じ方向に延びているが、相変わらず1本だけ向きが違う。ただ以前の様に直角に折れ曲がっているのではなく45度位に角度が緩くなっている。 あれ、私この触手の向きを修正したと思ったんだけど? 弾力があるから、力を加えている間だけ真っ直ぐになったけど、手を放したら戻っちゃったんだろうか。
そういえば、私が生きているときは、これらの触手は私の身体に向かっていたと思うんだけど、今はどうなんだろう。と触手の向かっている方向に向きを変える。その方向に何か有る気がする。そちらに向かおうと考えた途端私は何かに投げ飛ばされた。
ゴホ、ゴホ、ゴホ。突然の衝撃とともに水の中から固い床の上に投げ出された私は思いっきり咳き込んだ。しばらくすると呼吸も落ち着いたので、上半身を起こしてあたりを見渡す。石造りの部屋だ、ルーテシア様の神殿かな。水の中にいたのは夢だったんだろうか。その時、グラッと建物全体が揺れる。地震? それもだいぶ大きい。私は何もできず、ただただ床に座り込む。幸いにもこの部屋には背の高い家具らしきものはあまりなく、家具の下敷きになる心配はなさそうだ。石造りの建物だから倒壊しないか心配だけれど、今の所その気配はない。案外頑丈なつくりなのかもしれない。なんせ女神様の神殿だものね。
振動が収まると、ようやく気持ちが落ち着く。その時になって初めて自分が裸であることに気付いた。 身体中が何か粘々した液体で濡れている。何だこれ、髪の毛までべたべたで気持ちが悪い。回りを見渡すと部屋の中央には白色のガラスかプラスチックの様な素材でできか棺桶(?)が横向きに転がっていた。たぶん地震の為にすぐ横にある台座から落下したのだろうか。棺桶には粘つきのある液体が満たされていたらしく床が水浸しである。 台座と棺桶、そして私の居る位置は直線上にある。ひょっとして私この棺桶に入ってた? まさかね。そういえば魂のインターフェースを修復しようとしていて、突然身体が熱くなって胸から炎が噴き出したんだ。私、あの時死んであの棺桶で埋葬されていたんだろうか。それで今生き返った? なんで?
そんなことを考えていると再び大きな揺れが襲ってきた。あわてて逃げようとして思いとどまる。 私、裸だよ。これはまずい、羞恥心をとるか命を取るかの選択をしないといけないかもしれない。
どうしょうかと悩んでいると、誰かが部屋に飛び込んできた。メイド服をきているからメイドさんかな。
メイドさんは私を見ると大きく目を見開いた。
「女神様!! お目覚めになられたのですか!」
そういいながらメイドさんは私に走り寄ってくる。髪の毛は濃紺だが、白髪が混じっているのでグレーに見える。50歳くらいだろうか、顔にも少し皺がある。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫です。」
「後5年はお目覚めにならないとお聞きしていたのですが。」
「たぶん、棺が倒れて放り出されたのかと...」
「そうでございましたか。」
「何があったんですか?」
「詳しくは判りませんが、大きな地震がありました。神殿は大丈夫ですが、町の方では大きな被害が出ている様です。」
「ルーテシア様とハルトさんはどちらですか?」
「女神さまはすで別の世界へ旅立たれました。ハルト様は救助の指揮をとるために町の方に行かれております。」
「そうだったんですね。」
ハルちゃんが救助の指揮? あの、あわあわとした雰囲気が持ち味のハルちゃんが? 大丈夫かな....。
「ハルト様にはトモミ様がお目覚めになられたとすぐ連絡いたします。」
その後あわてた様に付け加えた。
「失礼いたしました。お召し物もすぐにお持ちいたしますので。」
そういうとメイドさんは立ち上がり全速で走って行った。
とりあえず待っていればいいかな。それにしても私は悲惨な恰好だ。全身粘つく液体で覆われている上に、地震の為に落ちてきた埃や砂が付着してドロドロ。あ~、お風呂に入りたい。
あれからも余震は続いているが、徐々に揺れは小さくなってきた。ハルちゃんには連絡が行っただろうか。さっきのメイドさんが、町で大きな被害が出ているって言ってたよね。あれだけの地震だもの、家屋の倒壊や火災が発生していても不思議じゃない。特に石造りの建物は地震に弱いんだ。ハルちゃんは救助の指揮を取ってるって言ってたけど、危険な所に行ってないよね。
手伝いに行きたいけど、私では足手まといになるだけだ。そう考えて気付いた。そうだ! 女神の力だ! それがあればハルちゃんを助けられる。
実は夢の中でインターフェースを修復する方法をずっと考えていたんだ。あの掃除機のホース位の太さの触手では太すぎて、流れてくる魔力の量が多すぎる。だから別のインターフェースを作成する。方法は判らないけど私は魂の形を人型に変えることが出来た、水の中を泳がせることもできた。魂の操作がかなりできる様になっていると思う。それならインターフェースも作れるんじゃないか?
精神を集中すると、頭の中に魂のイメージがくっきりと浮かんだ。私の記憶のとおり人型のままだ、やっぱりあれは夢じゃなかったんだと確信した。それなら試す価値があるよね。私は光ファイバー位の細い細い触手を考える、それが魂から伸びて私の身体につながることをイメージする。ゆっくり、ゆっくり触手が伸びて、ついに私の身体に繋がった瞬間、私の身体は光り輝いた。
覚悟をしていたが、炎も爆発も起きない。成功したのかな? 魔法を使えるようになった?
試しに今一番したい事をイメージしてみる。身体の汚れがきれいになるといいな。風呂に入って全身を綺麗にしたい。そんな魔法があればいいなと考えた瞬間、私の身体は水に包まれた。私の身体を包んだ水はぐるぐる回って私の身体の汚れを落としていく。これ以上息が止められないと思った瞬間、体の回りの水は一瞬で消失した。髪の毛も濡れてない。汚れは綺麗に取れていた。 やった! 私魔法を使えたよ!
その時、タイミング良く先ほどのメイドさんが帰ってきた。駆けて来てくれたみたいで、息が荒い。
「お待たせいたしました。あいにく神殿内も混乱しており、メイド服しか手にはいりませんでした。ご容赦下さい。ハルト様にも連絡が行く様に手配済みでございます。」
メイドさんは一気に言って、俯いて息を整えている。よっぽど急いでくれたんだ。ごめんね。
「十分です。ありがとうございます。」
私がそう言うと初めてメイドさんは顔を上げて私を見た。その瞬間、目を伏せ私の前に跪いた。全身が震えているのが分る。
「お、恐れ多いお言葉にございます。」
何か変だなと思ったけれど、今はそれどころじゃない。私は急いで服を着ると、メイドさんに案内を頼んで町に向かった。
神殿の窓からみると、町のあちこちから煙が上がっている。倒壊した建物もかなりある、やっぱり大変な被害がでているのは間違いない。急がないと!
私はメイドさんに先導されながら駆け足で神殿出口へ向かった。出口に近づくとそこはホールの様になっていて、沢山の人が横たわっていた。うめき声や泣き声があたりを満たしている。負傷者の治療場として使われている様だが、負傷者がどんどん運び込まれてくるのに比べ、明らかに治療のスタッフが不足している。
私がホールに到着すると、なぜだか視線が私に集中してる気がする。でもそんなの無視、ハルちゃんの役に立たないと。私は治療の魔法を使ことに決めた。目を瞑って両手を上にかかげ、私の魔力がホール全体を覆うことをイメージする。掌から魔力が放出していくのが分る。しばらくして目を開けると、ホールにいるすべての人が私を見つめていた。私に向かって手を合わせたり、跪いている人が多い。しばらくの静寂の後、歓声がホールを満たした。
「女神様だ! 女神様が来て下さったぞ! 」
「修行を終えられたのだ。俺たちは助かったぞ!」
「女神様、感謝します。」
「感謝します。」
沢山の人が一斉に叫ぶとこんなに迫力があるのか、と思うくらいの音量がホールを満たしたが、辛うじて聞き取れたのがこれらの言葉だった。私は、女神と認めてもらえた様だ。修行って何? と思ったけど、その疑問は後回しだ。ホールにはまだ次々と負傷者が運ばれて来ているのだ。私はホールの人達に向かって手を上げた。一瞬でホールに静寂が訪れる。
「回復した皆さんは、負傷者の方と場所を変わってください。元気な方は町から負傷者を運び入れる手伝いをお願いします。」
私がを声出すと。沢山の人が 「ハハッ」という感じで頭を垂れてから一斉に出口に向かっていく。私は運び込まれてくる負傷者の治療を再開した。治療が終わると負傷者だった人は皆、感謝の言葉を残して救助の手伝いにホールを飛び出して行った。
何時間治療を行っただろうか、気が付くと運び込まれる負傷者は途切れている。私は治療スタッフのリーダーと思わしき方に、「後はお願いします。」と声をかけて神殿を後にした。
町に入るとまだまだ救助活動は続いているようだ。すぐに助け出せる人は神殿に運び込んだが、建物の下敷きになっている人の捜索と救助に手間取っているのだろう。家族を探しているのだろうか、泣きながら素手で瓦礫を掘り返している10歳くらいの男の子がいる。指から血を流しているが気にしている様子は無い。
ここで女神の力を使わずしてどこで使うというのか。念ずると、私の身体は宙に浮かんだ、そのまま高度を取り町全体が見渡せる位置まで上昇する。下からスカートの中が見えるかもしれないが今はそれどころじゃない。
目を瞑って瓦礫の中にいる人を探索する。視える! どんな人かまでは判らないが、人々の魂が瓦礫の下で赤く光っている。全部で50~60人...いやもっといる。瓦礫を掘り起こしている時間は無い。私は全員を町の広場に瞬間移動させた。途端に頭がクラッとする。魔力の使い過ぎだろうか。でもほとんどの人が大怪我をしている。 ここで止めるわけには行かない。私は続けて治療にかかった。
「ここはどこだ?」
「助かったのか?」
「見ろ、怪我が治っていく。」
「ちぎれた腕が生えてきたぞ。」
「目が見える。見えるぞ!」
さまざまな声が聞こえて来た。
助け出された人達は最初は何か起こったか判らず茫然としていたが、誰かが上空の私を指さして何か叫ぶと、全員が私に向かって頭をさげて祈りのポーズになった。
ここで漸く自分のやらかしたことに理解が及んでくる。私、祈られてる! 神様みたいに祈られてる! と理解すると恥ずかしさが頂点に達して顔が熱くなった。たぶん真っ赤になっているだろう。私は逃げる様に上空から神殿に向かった。途中で先ほどのメイドさんと合流、そこからは徒歩で神殿に向かう。道はごった返していたが、私が近づくと皆アッと言う間に道の端により頭を下げた。私に向かって真剣に祈っている人もいる。私は日本人特有の愛想笑いをしながら神殿に入り、メイドさんに少し休みたい旨を伝えた。
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