45 / 90
第2章 惑星カーニン編
3. カイちゃんとサラちゃん
しおりを挟む
「あ、あなたは精霊様でしょうか?」
良かったパルさんからこの惑星の言語の知識を頭にコピーさせてもらっていたお蔭で相手の言っていることが分かる。 それにしても、精霊? なんだろう? 地球で読んだラノベには出て来たけど惑星ルーテシアでは聞いたことが無い。さてどう答えようか? 私の魔力量を見た後でただの人間というのは通用しないだろうな。ただ正直に神だと言うのはやめた方が良いだろう、神に見捨てられた惑星で余計な期待を持たせてしまうとまずい。
「私はただの使いです。お騒がせしてすみません、人を探しているだけなので気にしないで下さい。」
「なんと精霊様の御使い様でございましたか。失礼しました。」
いや、私は精霊の使いなんて言ってないんだけど。まあせっかく勘違いしてくれたんだ、否定も肯定もしないでおこう。
「ホサールという方を探しているのですがご存じありませんか? 大魔導士パル様の弟子だった人です。」
「パル様の弟子ですか。あの方が弟子を取っていたとは知りませんでした。お役に立てず申し訳ありません。」
「いえ、大丈夫です気にしないで下さい。ところで今年はずいぶん豊作の様ですね。」
と私は周りを見渡しながら言う。
「はい、これも精霊様のお蔭でございます。 精霊様に私達の感謝をお伝えください。」
....ごめん、精霊様には面識が無いので伝えられません。
「豊作なのはここだけでは無いのですね。」
「今年についてはまだ分かりませんが、この数年はどの国も豊作が続いていると聞いております。」
「それは何よりです。」
本当に良いことずくめなのだが、なぜだ? ここは神に見捨てられた惑星だ、自然災害や異常気象が続いて凶作が続いていると思っていたのだが。いい方向に予想が外れている。
それではと挨拶して私は次の場所に瞬間移動する。ちなみに先ほどの女性の名前はトリエンさんで、グリアス王国の筆頭魔法使いらしい。瞬間移動の魔法を使っていたし、かなり優秀な魔法使いの様だ。私もトモミと名前だけ名乗っておいた。
精霊様とは何者なのだろう。トリエンさんは豊作なのは精霊様のお蔭と言っていた。ということは、精霊様が神に変わってこの惑星を安定させてくれているのか。だとすると色々な意味で一度会ってみなければなるまい。ホサールさんを探すついでに精霊様とやらも探すことにしよう。きっと大きな魔力を持っているだろうから魔力パターンが分からなくても探査魔法で見つけられるだろう。
それにしてもパルさんの話とずいぶん違う。この惑星から神が居なくなったのが約100年前、もちろん超越者の仕業だ。それ以降自然災害や異常気象が頻発しパルさんがこの惑星で生活している頃にはかなり悲惨な状況になっていたらしい。パルさんは自分の魔力で周りの地域を災害から守って人々から慕われていたそうだが、それでも惑星全体からみれば小さなあがきに過ぎなかったらしい。
次の場所に到着して辺りを見渡す。ここは大きな森の上空の様だ。1キロメートル位離れたところに神殿の様な大きな建物が見える。建物から黒い煙が上がっている。火事か? と考えていた時、突然「キャー」という甲高い悲鳴が聞こえた。ここは森の中なので見通しが悪い。私は声のした方向に空中を移動する。
見えた、小柄な人族がふたり、5~6人の武器を手に持った同じく人族の男達に追いかけられている。逃げている小柄な人族は子供かもしれないが、追いかけている方はどう見ても保護者という感じではない。一児の母としては見過ごせないよね。私は瞬間移動で逃げている人族を近くに引き寄せた。
<< 静かにしてね。>>
口の前に人差し指を立てながら念話で呼びかける。近くで見るとやはり子供の様だ。男達は追っかけていた獲物がいきなり消えたものだから、とまどってあたりをキョロキョロ見渡しているが、まさか上空にいるとは気付かない。しばらくすると諦めたのかどこかに去って行った。
それを見定めて、私はゆっくりと地面に降りた。子供達は驚きの余り座り込んでいる。ひとりは7~8歳くらいだろうか、もうひとりはもっと幼い、ふたりとも女の子だ。静かだったのは私の念話の所為ではなく、驚きの余り言葉が出なかっただけかもしれない。
「大丈夫? 怪我はない?」
「.........」
相変わらず返事はない、口をポカンと開けたまま私を見つめているだけだ。 その内、ひとりが思い切った様に口を開いた。
「魔法使い様ですか?」
「えっ、まあそんなものね。」
と返す。幼い方の子が足に怪我をして血が流れているのに気付いたので、私は手を翳して怪我を直し、血の汚れも取り除いてあげた。ちなみに私は魔力遮断結界を張っている時は杖を通さないと魔法が使えないが、直接手で触れたり距離が近ければ魔法の行使は可能だ。子供達は目を丸くして見つめている。年上の子がカイ、下の子がサラという名前らしい。
「よかったらあなたたちの家まで送っていくわよ。」
と私が言うと、最初に話しかけて来た子が思い出した様に訴えた。
「魔法使い様、精霊の神殿の人達を助けて! 奴隷狩りの人達に襲われているんです。私達は逃げる様に言われたんですけど、見つかってしまって追われていたんです。」
と真剣な表情で言う。どうしよう。子供達の言うことを鵜呑みにするわけにもいかない、近づいて状況を良く見てから判断するしかないだろう。問題はこの子達をどうするかだが、ここに残しておくとまたさっきの連中に狙われるかもしれない。連れて行こう。私と一緒に居る以上に安全な場所はないだろうしね。
カイちゃんの案内で上空から先ほど見えた神殿らしき建物に近づく。神官服の様なものを来た集団と汚れた服を着た集団が争っている。火災も発生している様だ。あれは先ほどの子供達を追いかけていた連中の恰好に似ているな。上空から近づく私達には誰も気づかない。空なんて見ている余裕はないものね。距離が縮まると声が聞こえてくる。
良かったパルさんからこの惑星の言語の知識を頭にコピーさせてもらっていたお蔭で相手の言っていることが分かる。 それにしても、精霊? なんだろう? 地球で読んだラノベには出て来たけど惑星ルーテシアでは聞いたことが無い。さてどう答えようか? 私の魔力量を見た後でただの人間というのは通用しないだろうな。ただ正直に神だと言うのはやめた方が良いだろう、神に見捨てられた惑星で余計な期待を持たせてしまうとまずい。
「私はただの使いです。お騒がせしてすみません、人を探しているだけなので気にしないで下さい。」
「なんと精霊様の御使い様でございましたか。失礼しました。」
いや、私は精霊の使いなんて言ってないんだけど。まあせっかく勘違いしてくれたんだ、否定も肯定もしないでおこう。
「ホサールという方を探しているのですがご存じありませんか? 大魔導士パル様の弟子だった人です。」
「パル様の弟子ですか。あの方が弟子を取っていたとは知りませんでした。お役に立てず申し訳ありません。」
「いえ、大丈夫です気にしないで下さい。ところで今年はずいぶん豊作の様ですね。」
と私は周りを見渡しながら言う。
「はい、これも精霊様のお蔭でございます。 精霊様に私達の感謝をお伝えください。」
....ごめん、精霊様には面識が無いので伝えられません。
「豊作なのはここだけでは無いのですね。」
「今年についてはまだ分かりませんが、この数年はどの国も豊作が続いていると聞いております。」
「それは何よりです。」
本当に良いことずくめなのだが、なぜだ? ここは神に見捨てられた惑星だ、自然災害や異常気象が続いて凶作が続いていると思っていたのだが。いい方向に予想が外れている。
それではと挨拶して私は次の場所に瞬間移動する。ちなみに先ほどの女性の名前はトリエンさんで、グリアス王国の筆頭魔法使いらしい。瞬間移動の魔法を使っていたし、かなり優秀な魔法使いの様だ。私もトモミと名前だけ名乗っておいた。
精霊様とは何者なのだろう。トリエンさんは豊作なのは精霊様のお蔭と言っていた。ということは、精霊様が神に変わってこの惑星を安定させてくれているのか。だとすると色々な意味で一度会ってみなければなるまい。ホサールさんを探すついでに精霊様とやらも探すことにしよう。きっと大きな魔力を持っているだろうから魔力パターンが分からなくても探査魔法で見つけられるだろう。
それにしてもパルさんの話とずいぶん違う。この惑星から神が居なくなったのが約100年前、もちろん超越者の仕業だ。それ以降自然災害や異常気象が頻発しパルさんがこの惑星で生活している頃にはかなり悲惨な状況になっていたらしい。パルさんは自分の魔力で周りの地域を災害から守って人々から慕われていたそうだが、それでも惑星全体からみれば小さなあがきに過ぎなかったらしい。
次の場所に到着して辺りを見渡す。ここは大きな森の上空の様だ。1キロメートル位離れたところに神殿の様な大きな建物が見える。建物から黒い煙が上がっている。火事か? と考えていた時、突然「キャー」という甲高い悲鳴が聞こえた。ここは森の中なので見通しが悪い。私は声のした方向に空中を移動する。
見えた、小柄な人族がふたり、5~6人の武器を手に持った同じく人族の男達に追いかけられている。逃げている小柄な人族は子供かもしれないが、追いかけている方はどう見ても保護者という感じではない。一児の母としては見過ごせないよね。私は瞬間移動で逃げている人族を近くに引き寄せた。
<< 静かにしてね。>>
口の前に人差し指を立てながら念話で呼びかける。近くで見るとやはり子供の様だ。男達は追っかけていた獲物がいきなり消えたものだから、とまどってあたりをキョロキョロ見渡しているが、まさか上空にいるとは気付かない。しばらくすると諦めたのかどこかに去って行った。
それを見定めて、私はゆっくりと地面に降りた。子供達は驚きの余り座り込んでいる。ひとりは7~8歳くらいだろうか、もうひとりはもっと幼い、ふたりとも女の子だ。静かだったのは私の念話の所為ではなく、驚きの余り言葉が出なかっただけかもしれない。
「大丈夫? 怪我はない?」
「.........」
相変わらず返事はない、口をポカンと開けたまま私を見つめているだけだ。 その内、ひとりが思い切った様に口を開いた。
「魔法使い様ですか?」
「えっ、まあそんなものね。」
と返す。幼い方の子が足に怪我をして血が流れているのに気付いたので、私は手を翳して怪我を直し、血の汚れも取り除いてあげた。ちなみに私は魔力遮断結界を張っている時は杖を通さないと魔法が使えないが、直接手で触れたり距離が近ければ魔法の行使は可能だ。子供達は目を丸くして見つめている。年上の子がカイ、下の子がサラという名前らしい。
「よかったらあなたたちの家まで送っていくわよ。」
と私が言うと、最初に話しかけて来た子が思い出した様に訴えた。
「魔法使い様、精霊の神殿の人達を助けて! 奴隷狩りの人達に襲われているんです。私達は逃げる様に言われたんですけど、見つかってしまって追われていたんです。」
と真剣な表情で言う。どうしよう。子供達の言うことを鵜呑みにするわけにもいかない、近づいて状況を良く見てから判断するしかないだろう。問題はこの子達をどうするかだが、ここに残しておくとまたさっきの連中に狙われるかもしれない。連れて行こう。私と一緒に居る以上に安全な場所はないだろうしね。
カイちゃんの案内で上空から先ほど見えた神殿らしき建物に近づく。神官服の様なものを来た集団と汚れた服を着た集団が争っている。火災も発生している様だ。あれは先ほどの子供達を追いかけていた連中の恰好に似ているな。上空から近づく私達には誰も気づかない。空なんて見ている余裕はないものね。距離が縮まると声が聞こえてくる。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる