新米女神トモミの奮闘記

広野香盃

文字の大きさ
57 / 90
第2章 惑星カーニン編

14. 宇宙空間へ

しおりを挟む
<< 後は様子を見るだけです。5,000くらいの惑星で実績のある魔道具なのでたぶん大丈夫とは思いますが。魔晶石の残量が3パーセントまで下がるとスリープモードに移行しますので、それまでに魔力の再チャージをお願いします。念のために半分まで減ったらチャージするのがお勧めです。>>

<< 本当にこれだけで惑星が安定化するのか!? 便利な物じゃのう。>>

<< ええ、前にも言いましたが自慢の魔道具なのです。作ったのは私じゃないですけどね。>>

<< もうお昼ですし、とりあえず我家で食事はいかがですか? ロキさんもよろしければ。>>

 神殿でも食事は用意してくれるだろうけど、毒スープ事件があったばっかりだからね。

<< 申し出はありがたいがわしは物を食べんのじゃ。じゃがお邪魔はさせていただこう。>>

 そうなんだ、まあ他の神様達もアバターの時は別にして普段は食べないけどね。私が特別なんだ。

<< 分かりました。それで昼からはどうします? >>

<< もしこの神殿から出る許可が下りるのであれば、この神殿に来るまで続けていた伝道の旅の続きを再開したいと考えております。>>

 とドリスさんが言う。

 そうか、この神殿に居るのは、暗殺者から身を守るためにここに来いとグリアス王国から連絡が来たからだもんね。となると旅を続けるには王国側の許可が必要になるな。無断で出発するとラザロさんやカルロスさんの責任問題になりかねない。一度地上に戻って近くにいた副神殿長のローザさんに許可を求める。

「ローザさん、私が護衛として同行すると言っても難しいですかね。」

「女神様、申し訳ありません。少なくとも国にお伺いを立て許可を得る必要があるかと。」

 まあそうだよね。そうだ、いっそ王様と直接話出来ないかな。ロキさんのお披露目のことも相談したいし。

「ローザさん、国王様に会って相談したいことがあるのですがどうすれば良いでしょうか。」

「国王様にですか! 分かりました至急使者を立てます。女神様がお会いになるとなれば無下にはされないと思います。」

「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

<< ドリスさん、許可を得るまでは外出は無理の様ですね。>>

<< その様ですね。どうしましょうか? >>

<< もし、よければ私の仕事に付き合ってくれますか? 急ぎの仕事ではないのですが時間のあるうちに済ませてしまえば後で自由な時間が増えますから。>>

<< わしも一緒に行ってよいかの? >>

 ロキさんだ。地上に移動してからすぐに亜空間に引っ込んでしまったのだが念話は聞こえる様だ。

<< もちろんいいですよ。ただ一緒に瞬間移動するには亜空間からでてもらわないといけないですけど。 >>

<< 了解じゃ。>>

<< それと、行き先は宇宙空間ですが良いですか。>>

<< ああ、構わんよ。その方が都合が良い。>>

 ロキさんは宇宙空間と言うのも理解しているのかな。いったい何者なんだろう。

 そういうわけで、私達はローザさんに断りを入れて瞬間移動した。神殿から出ることになるけど、行き先には暗殺者はいないから許してもらおう。いざとなれば私が責任を取るからと言っておいた。

 自宅に帰ると私とドリスさんは昼食の用意をしているエリスさんの手伝いに向かう。ロキさんは着いたとたん亜空間に入ってしまった。

 料理が出来ると皆を呼んできて食卓を囲む。今日はネスレさんも一緒だ。ハルちゃんはアレフさんとの打ち合わせで不在、そういえば朝私が送って行ったんだった。ネスレさんの報告によると、カイちゃん、サラちゃんは頑張ってタロウの相手をしてくれていた様だ。

「カイちゃん、サラちゃん、ありがとうね。」

 と私が言うとふたりは照れた様に笑った。

 昼食を終えた私とドリスさん、ロキさんが着いた先はある惑星に近い宇宙空間。この惑星に衝突しようとしている彗星の除去が今回の仕事だ。ひとつの惑星に小惑星や彗星が衝突するのは1万年に1回くらいだが、何せ神が管理している惑星だけで100万個くらいあるのだ。ざっと考えても年に100回だ。対応するのは惑星に衝突するかどうか微妙なものも含まれるので対応が必要な数はもう少し多い。今の所これらの防止を私がほぼ一手に引き受けている。

 こうなったのには訳がある。第一回神界総会でパルさんを含む亜神仲間3人と知り合いになったのだが、どの亜神達も惑星を安定させるための魔力不足で困っていたのだ。そこで私は考えた。我が惑星ルーテシアにはアレフさん特製の魔道具がある。魔力を効率よく使いながら惑星を安定させ、自然災害や異常気象の発生を防止してくれているのだ。この魔道具は前女神であるルーテシア様の経験に基づいたノウハウを当時魔道具開発部の主任だったアレフさんが魔道具としてプログラミングしたものだ。もしこの魔道具が無かったら、私は数倍の魔力を使ってかつ1日の半分の時間をその作業に当てる必要があっただろう。惑星ルーテシア自慢の魔道具だが、これをこのまま他の惑星に持ち込んでも役に立たない。魔道具のプログラムが惑星ルーテシアに特化した仕様になっているからだ。たとえば、○○○火山と□□□火山のマグマの合計熱量が◎ジュールを越えた場合、その超えた分の熱を△△△海溝へ逃がして平準化すると言うように、この惑星の固有名詞てんこ盛りの仕様になっている。
 そこで、アレフさんにルーテシア様のノウハウの肝を読み解き、どの惑星に設置しても機能するようにプログラムを汎用化できないかと相談を持ちかけた。彼の天才的頭脳ならひょっとしたらと期待したのだが、やはり彼は天才だった。時間は掛かったものの見事に実用化してくれたのだ。アレフさんの作ってくれた魔道具を亜神仲間にプレゼントしたところ大好評だったのだが、この話に飛びついてきたのが何と上級神リリ様と中級神の皆様だった。もちろん魔力不足が理由ではない。当時は超越者が自分を疑う神達を次々と行方不明(おそらく自分の居る次元に連れ去った)にしたため、1万個を超える惑星が神が居ない状態だった。何とかしたいのだが下級神は担当の惑星から離れられないため複数の惑星の管理は無理だ。となると上級神と中級神で対応するしかない。でも上級神はリリ様ひとり、中級神は90人しかいない(本当は100人居たのだが超越者に連れ去られた)。それだけの人数で1万個の惑星の面倒はとてもじゃないけど見ることが出来ない。なにせ惑星の安定化には魔力だけでなく時間も掛かるのだ。悩んでいるところに私の魔道具の話が来たわけだ。魔力さえ注いでおけば放って置いても惑星を安定に保ち続けてくれる、しかも魔力のチャージの頻度もひと月に1回程度で済む(魔力チャージの頻度は使われている魔晶石の大きさによる、私が亜神仲間にプレゼントしたものは余り大きな魔晶石を使っていなかったのでこの程度)。これなら多くの惑星を救えるということで大騒ぎになった。結果としてリリ様や中級神の皆様は神の居ない惑星に次々と魔道具を設置して回り、現在は設置した惑星を巡りながら魔晶石への魔力チャージを行っている。これにより約5000個の惑星が救われたといっても過言ではない(ただし惑星の安定化は出来ても惑星に住む人族の戦争や人権侵害の防止までは手を出せていない、それでも自然災害と異常気象で絶滅するよりはるかにましだ)。もちろんそれだけの数の魔道具をアレフさんひとりで作れるわけもないので、設計書を公開して自分達で作成してもらった。神界が喜びに満ちた一方で問題が発生した。リリ様や中級神の皆様が魔道具への魔力チャージに時間を奪われる中、今まで中級神の皆様が行っていた小惑星や彗星の除去の時間が取れなくなってきたのだ。そこで白羽の矢が立ったのが私だ。 
 私は他の神と違い、惑星や銀河等の天体をその身体としているわけでなく、生身の人間の身体である。だから自分の管理する惑星を離れ、自由に銀河中を動き回ることが出来る。私以外でこんなことが出来るのは、銀河全体がお身体の上級神リリ様だけである。この特技を買われ宇宙空間での作業を度々依頼されるようになった。 
 本当は惑星ルーテシアでの仕事を自然災害防止の魔道具と、女神代行官のアレフさんに丸投げし、私はハルちゃんとのんびり暮らすはずだったのだがとんだ計算違いだ。まあ元はといえば、第1回神界総会に他の神々がアバターで出席するなか、アバターを作成するのをめんどくさがって、ひとりだけ生身の身体で出席した私が悪い。お蔭で私が惑星から離れて自由に動けることが知れ渡ってしまったのだ。というわけで現在私は3日に1回程度の頻度で、彗星・小惑星除去作業にくたいろうどうに励むことになった。
 もっとも第1回神界総会のお蔭でひとつ助かっていることがある。光速の壁を廃止することが決まったことだ。今までは瞬間移動と言えど、恒星間の移動の様に長距離の場合には数日のロスが避けれなかった。いや、正確には瞬間移動している本人には一瞬で移動したように感じるのだが、目的地についてみると数日経過しているという感じだ。これは念話でのメッセージや情報のやり取りでも同じで、長距離の場合、念話の発信から着信までに数日必要となる。従ってリアルタイムの会話はできなかった。光速の壁撤廃は、神界の組織を上意下達からボトムアップに変えて行こうという流れの中でリリ様が提案され満場一致で可決された。まず、神々のコミュニケーションを円滑に取れる環境にすることが第一だろうとの趣旨だ。驚いたことに、銀河系内の物理法則を変えるのもリリ様の権限でできるらしい。今までは超越者の方針で変えたくても出来なかったとか。この決定がなかったら、1時間の小惑星除去作業のために行き帰りで1週間かかるという様な事態になっていたところだったのだ。感謝である。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】花咲く手には、秘密がある 〜エルバの手と森の記憶〜

ソニエッタ
ファンタジー
森のはずれで花屋を営むオルガ。 草花を咲かせる不思議な力《エルバの手》を使い、今日ものんびり畑をたがやす。 そんな彼女のもとに、ある日突然やってきた帝国騎士団。 「皇子が呪いにかけられた。魔法が効かない」 は? それ、なんでウチに言いに来る? 天然で楽天的、敬語が使えない花屋の娘が、“咲かせる力”で事件を解決していく ―異世界・草花ファンタジー

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...