74 / 90
第3章 惑星マーカス編
10. ダンジョン閉鎖
しおりを挟む
それからしばらく当たり障りのない話をしてから、私はチームのメンバーとの合流予定があるからと言ってその場を離れる。これは嘘ではない、サマンサさん達と落ち合うのだ。もっとも第一階層まで戻ってからだけど。
上層まで戻り、サマンサさん達との待ち合わせ場所に赴く。しばらく待っているとアルトくんが走って来た。少し興奮している様だ。
「トモミさん! ゴブリンを10匹倒せましたよ! 母さんが、これでEクラスに上がれるだろうって。」
「やったわね!おめでとう!」
「何よアルト、自分のことばっかり。私なんか12匹倒したんだから。」
と後からやってきたコトラルさんが口を挟む。
「それはサーシャ姉さんの助けがあったからだろう。」
「誰かに助けてもらっても倒せばいいのよ。そしたら成長できるの。ダンジョンのルールだって母さんが言ってたもの。」
「でも卑怯だよ。」
「卑怯って、モンスターに?」
「違う。真面目に強くなろうとしている他の冒険者にさ。」
「それを言うならダンジョンの存在自体が卑怯よ。外ではこんなに早く強くなれないもの。」
「それはそうなんだけど。」
「はいそこまで! 聖女様、ご無事で何よりです。」
追いついたサマンサさんが2人の口論を止めてくれた。それにしても相変わらずの聖女呼びだ。この人ブレないな。それにしても、このモンスターを倒せば強くなれる仕組みを作ったのは超越者で間違いない。目的は魂の促成栽培か?でも問題はそうして成長させた魂をどうしているのかなんだけど。
サーシャさんも加え5人でダンジョンを出て、出口にあるギルドのカウンターで採取した魔晶石を売却する。サマンサさん達はゴブリンの魔晶石50個、ホーンラビットの魔晶石5個を売却していた。どちらの魔晶石もひとつ1000ギニーでの買い取りなので合計55,000ギニーの儲けだ。宿屋に110日泊まれる額、サマンサさん達4人でもひと月弱泊まることができる。これだけの額を1日で稼いだわけだ。
私はと言うとゴブリンの魔晶石5個、スライム4個、スケルトン10個、大蜘蛛3個、大百足5個を買い取ってもらう。ゴブリン、スライム、スケルトンは第1階層のモンスターで魔晶石はひとつ1,000ギニー、大蜘蛛、大百足は第2階層のモンスターで魔晶石は5倍の5,000ギニーだ。合計59,000ギニーで買い取ってもらえた。片手間にやったにしてはかなりの額だ。しかし、今更だがスケルトンってどう考えても生物では無いよな。一体どうやって動いているんだろう。
お金を受け取ると宿屋に戻って食事だ。上機嫌のコトラルさん、アルトくんから今日のゴブリン狩りの様子を聞く。ふたりとも随分腕が上がった様だ。特にアルトくんは身振り手振りを合わせて解説してくれる。明日の目標は50匹と宣言する。サマンサさんが欲張っちゃダメとたしなめている。私もそう思う。危険なことをしている時は慎重すぎる方が良いのだ。
食事の後は自分の部屋に引き上げた。落ち着いて今日の超越者一族と思われる少女との出会いを考えてみる。この惑星への超越者一族の関与は確定だ。それとダンジョンは超越者が作った魂の促成栽培の場で間違いない。問題はリリ様にどう報告するかだ。下手に報告すれば恐らく神と超越者の戦いになるだろう。あの少女とも戦わないとならなくなるかも知れない。戦いたくない。決めた、もう一度あの超越者の少女に会って、腹を割って戦いを避ける方法について話し合ってみよう。リリ様に報告するのはその後だ。
ベッドの中に入ると緊張が緩み、途端に心細くなった。今までは寝る時はいつも側にハルちゃんがいた。頼り甲斐があるとはお世辞にも言えなかったが、誠実で思慮深くお節介焼きで何より優しかった。
<< トモミ...>>
「ハルちゃん!!!」
自分の大声で目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていた様だ。珍しい。最近は身体が眠りについても意識があることが多かったのだが。ハルちゃんが亡くなってからどうも自分であって自分でない様な不思議な気分だ。
サマンサさん達と一緒に朝食を取った後、昨日と同じようにダンジョンに向かうが、なんだか入口あたりが騒がしい。沢山の冒険者と思われる人たちがダンジョンに入らずに入口付近に集まっている様だ。
冒険者達は興奮した様子で互いに何か言い合っている。冒険者達の話し声に負けじとギルドの職員が声を張り上げる。
「昨日ダンジョン内で聖女様にお会いしたとの報告が上がっている。信頼できるAクラスのチーム闇夜の風からだ。よってスタンピードが起きる可能性があると判断して、事実確認が取れるまでダンジョンは一時閉鎖と決まった。分かったら皆んな今日は帰ってくれ。調査の結果は明日ギルド本部にて報告する。場合によっては町全体への避難命令が出る可能性もあるから注意しておいてくれ。」
やらかした!間違いなく昨日私が助けたパーティがギルドに報告したのだろう。噂になるとは思ったけどまさかダンジョン閉鎖に踏み切るとは、よっぽど信頼されているパーティだったんだな。
「あら、聖女様ですって。何をなさったのかしら?」
と言いながらサマンサさんがジト目で見つめてくる。
「さっ、さあ、見間違えって可能性も有りますからね。でも仕方ありませんから今日は帰りましょう。」
と言って冷や汗をかきながらサマンサさん達を出口に誘導する。さてダンジョンに入れないなら今日はどうしようかと話していると、サマンサさんが申し訳なさそうに言い出した。
「聖女様、申し訳ないのですが今日は別行動でよろしいでしょうか。実はコトラルとアルトにEクラスへの昇級試験を受けさせたいのです。確か今日の午後に予定されていたはずなので今から申し込めば間に合うかと。」
もちろん私に否はない。サマンサさん達と別れて私は町を散策することにした。ここに着いてからはダンジョンに入るばかりで散歩すらしたことがない。良い機会だろう。美味しい物があるといいな。といつもの食い意地を発揮してニマニマする私。色々な屋台や店で買い食いしながら町を巡る。見たことが無い食べ物ばかりだが味は悪くない。特にこの焼いた烏賊に焼肉のたれを掛けたようなものがなかなかだ。だけどこの内陸で烏賊は取れないだろう。いったい何の肉なんだろう、屋台のおじさんに恐る恐る聞いてみると、なんでもトラマンという巨大な芋虫を干したものだとか。聞かなきゃよかった...。
その時、
「聖女様。」
と突然声を掛けられた。サマンサさん達ではない、男性の声だ。思わず咳き込みそうになるのを堪えて振り返る。そこにはダンジョンで助けた冒険者のひとりが立っていた。なんで分かった? あの時は目深にフードを被っていたんだよ。絶対分からないと思っていたのに。
「聖女様ですか? 人違いですよ。」
「その声だ間違いないぜ。それに杖の傷が同じだ。」
しまった、声までは変えていなかった。それに杖か。私の杖にはトムさんに剣で切り付けられた特徴的な傷がある。まずい...。いやまだ誤魔化せるはずだ。
「さあ、なんのことでしょうか? 私はただのEクラスの冒険者です。聖女なんかではありません。」
「そうか? 人違いをしてしまった様だな。すまねえ。」
「いえ、大丈夫です。」
悪いが人違いということにさせてくれ、と心の中で謝りながらあわてて立ち上がり人ごみに紛れようと急ぎ足で歩こうとしてドンと誰かとぶつかった。
「ごめんなさい。」
と言いつつあわてて振り返ると、またまた見知った顔がこっちを見ていた。イースちゃんだ。なんと同じ年くらいの男の子と一緒、デート中かな。
「トモミちゃん。」
と嬉しそうに声を掛けてくる。ちゃん付でよばれて改めて自分の外見もイースちゃんと同じ歳くらいだったと思いだす。
「イースちゃん。偶然ね、今日はデートかな?」
と聞いてみると真っ赤になった。図星だったらしい。
「そ、そんなんじゃありません。」
と言っているがその顔を見ればバレバレだよ。
「こんにちは、イースの友達のハンスです。」
私が話題を振ったからか、男の子が挨拶をしてくれた。
「初めまして、トモミです。」
と言いつつハンスくんを見る。ふむ、どう見ても人族だ。イースちゃんみたいな特別な力はありそうにない。
「トモミちゃんは今日はお休みなの? だったら一緒に来ない? 私達、近くの森へピクニックに行く途中なの。綺麗な花が沢山咲いているところがあるのよ。」
とイースちゃんが誘ってくれる。
「でもデートのお邪魔では?」
上層まで戻り、サマンサさん達との待ち合わせ場所に赴く。しばらく待っているとアルトくんが走って来た。少し興奮している様だ。
「トモミさん! ゴブリンを10匹倒せましたよ! 母さんが、これでEクラスに上がれるだろうって。」
「やったわね!おめでとう!」
「何よアルト、自分のことばっかり。私なんか12匹倒したんだから。」
と後からやってきたコトラルさんが口を挟む。
「それはサーシャ姉さんの助けがあったからだろう。」
「誰かに助けてもらっても倒せばいいのよ。そしたら成長できるの。ダンジョンのルールだって母さんが言ってたもの。」
「でも卑怯だよ。」
「卑怯って、モンスターに?」
「違う。真面目に強くなろうとしている他の冒険者にさ。」
「それを言うならダンジョンの存在自体が卑怯よ。外ではこんなに早く強くなれないもの。」
「それはそうなんだけど。」
「はいそこまで! 聖女様、ご無事で何よりです。」
追いついたサマンサさんが2人の口論を止めてくれた。それにしても相変わらずの聖女呼びだ。この人ブレないな。それにしても、このモンスターを倒せば強くなれる仕組みを作ったのは超越者で間違いない。目的は魂の促成栽培か?でも問題はそうして成長させた魂をどうしているのかなんだけど。
サーシャさんも加え5人でダンジョンを出て、出口にあるギルドのカウンターで採取した魔晶石を売却する。サマンサさん達はゴブリンの魔晶石50個、ホーンラビットの魔晶石5個を売却していた。どちらの魔晶石もひとつ1000ギニーでの買い取りなので合計55,000ギニーの儲けだ。宿屋に110日泊まれる額、サマンサさん達4人でもひと月弱泊まることができる。これだけの額を1日で稼いだわけだ。
私はと言うとゴブリンの魔晶石5個、スライム4個、スケルトン10個、大蜘蛛3個、大百足5個を買い取ってもらう。ゴブリン、スライム、スケルトンは第1階層のモンスターで魔晶石はひとつ1,000ギニー、大蜘蛛、大百足は第2階層のモンスターで魔晶石は5倍の5,000ギニーだ。合計59,000ギニーで買い取ってもらえた。片手間にやったにしてはかなりの額だ。しかし、今更だがスケルトンってどう考えても生物では無いよな。一体どうやって動いているんだろう。
お金を受け取ると宿屋に戻って食事だ。上機嫌のコトラルさん、アルトくんから今日のゴブリン狩りの様子を聞く。ふたりとも随分腕が上がった様だ。特にアルトくんは身振り手振りを合わせて解説してくれる。明日の目標は50匹と宣言する。サマンサさんが欲張っちゃダメとたしなめている。私もそう思う。危険なことをしている時は慎重すぎる方が良いのだ。
食事の後は自分の部屋に引き上げた。落ち着いて今日の超越者一族と思われる少女との出会いを考えてみる。この惑星への超越者一族の関与は確定だ。それとダンジョンは超越者が作った魂の促成栽培の場で間違いない。問題はリリ様にどう報告するかだ。下手に報告すれば恐らく神と超越者の戦いになるだろう。あの少女とも戦わないとならなくなるかも知れない。戦いたくない。決めた、もう一度あの超越者の少女に会って、腹を割って戦いを避ける方法について話し合ってみよう。リリ様に報告するのはその後だ。
ベッドの中に入ると緊張が緩み、途端に心細くなった。今までは寝る時はいつも側にハルちゃんがいた。頼り甲斐があるとはお世辞にも言えなかったが、誠実で思慮深くお節介焼きで何より優しかった。
<< トモミ...>>
「ハルちゃん!!!」
自分の大声で目が覚めた。いつの間にか眠ってしまっていた様だ。珍しい。最近は身体が眠りについても意識があることが多かったのだが。ハルちゃんが亡くなってからどうも自分であって自分でない様な不思議な気分だ。
サマンサさん達と一緒に朝食を取った後、昨日と同じようにダンジョンに向かうが、なんだか入口あたりが騒がしい。沢山の冒険者と思われる人たちがダンジョンに入らずに入口付近に集まっている様だ。
冒険者達は興奮した様子で互いに何か言い合っている。冒険者達の話し声に負けじとギルドの職員が声を張り上げる。
「昨日ダンジョン内で聖女様にお会いしたとの報告が上がっている。信頼できるAクラスのチーム闇夜の風からだ。よってスタンピードが起きる可能性があると判断して、事実確認が取れるまでダンジョンは一時閉鎖と決まった。分かったら皆んな今日は帰ってくれ。調査の結果は明日ギルド本部にて報告する。場合によっては町全体への避難命令が出る可能性もあるから注意しておいてくれ。」
やらかした!間違いなく昨日私が助けたパーティがギルドに報告したのだろう。噂になるとは思ったけどまさかダンジョン閉鎖に踏み切るとは、よっぽど信頼されているパーティだったんだな。
「あら、聖女様ですって。何をなさったのかしら?」
と言いながらサマンサさんがジト目で見つめてくる。
「さっ、さあ、見間違えって可能性も有りますからね。でも仕方ありませんから今日は帰りましょう。」
と言って冷や汗をかきながらサマンサさん達を出口に誘導する。さてダンジョンに入れないなら今日はどうしようかと話していると、サマンサさんが申し訳なさそうに言い出した。
「聖女様、申し訳ないのですが今日は別行動でよろしいでしょうか。実はコトラルとアルトにEクラスへの昇級試験を受けさせたいのです。確か今日の午後に予定されていたはずなので今から申し込めば間に合うかと。」
もちろん私に否はない。サマンサさん達と別れて私は町を散策することにした。ここに着いてからはダンジョンに入るばかりで散歩すらしたことがない。良い機会だろう。美味しい物があるといいな。といつもの食い意地を発揮してニマニマする私。色々な屋台や店で買い食いしながら町を巡る。見たことが無い食べ物ばかりだが味は悪くない。特にこの焼いた烏賊に焼肉のたれを掛けたようなものがなかなかだ。だけどこの内陸で烏賊は取れないだろう。いったい何の肉なんだろう、屋台のおじさんに恐る恐る聞いてみると、なんでもトラマンという巨大な芋虫を干したものだとか。聞かなきゃよかった...。
その時、
「聖女様。」
と突然声を掛けられた。サマンサさん達ではない、男性の声だ。思わず咳き込みそうになるのを堪えて振り返る。そこにはダンジョンで助けた冒険者のひとりが立っていた。なんで分かった? あの時は目深にフードを被っていたんだよ。絶対分からないと思っていたのに。
「聖女様ですか? 人違いですよ。」
「その声だ間違いないぜ。それに杖の傷が同じだ。」
しまった、声までは変えていなかった。それに杖か。私の杖にはトムさんに剣で切り付けられた特徴的な傷がある。まずい...。いやまだ誤魔化せるはずだ。
「さあ、なんのことでしょうか? 私はただのEクラスの冒険者です。聖女なんかではありません。」
「そうか? 人違いをしてしまった様だな。すまねえ。」
「いえ、大丈夫です。」
悪いが人違いということにさせてくれ、と心の中で謝りながらあわてて立ち上がり人ごみに紛れようと急ぎ足で歩こうとしてドンと誰かとぶつかった。
「ごめんなさい。」
と言いつつあわてて振り返ると、またまた見知った顔がこっちを見ていた。イースちゃんだ。なんと同じ年くらいの男の子と一緒、デート中かな。
「トモミちゃん。」
と嬉しそうに声を掛けてくる。ちゃん付でよばれて改めて自分の外見もイースちゃんと同じ歳くらいだったと思いだす。
「イースちゃん。偶然ね、今日はデートかな?」
と聞いてみると真っ赤になった。図星だったらしい。
「そ、そんなんじゃありません。」
と言っているがその顔を見ればバレバレだよ。
「こんにちは、イースの友達のハンスです。」
私が話題を振ったからか、男の子が挨拶をしてくれた。
「初めまして、トモミです。」
と言いつつハンスくんを見る。ふむ、どう見ても人族だ。イースちゃんみたいな特別な力はありそうにない。
「トモミちゃんは今日はお休みなの? だったら一緒に来ない? 私達、近くの森へピクニックに行く途中なの。綺麗な花が沢山咲いているところがあるのよ。」
とイースちゃんが誘ってくれる。
「でもデートのお邪魔では?」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる