新米女神トモミの奮闘記

広野香盃

文字の大きさ
77 / 90
第3章 惑星マーカス編

13. スタンピード

しおりを挟む
 しばらく待っているとカイルさんからの伝令が来た。町全体の避難命令を出したが避難の完了までには半日以上かかるだろうとの事。それとAクラスとBクラスの冒険者は町を守るために残る事に成った旨の連絡があった。了解し、避難が完了したら再度連絡を貰えるようお願いする。
 さてと、私は周りを見回した。この部屋にはリリ様、イースちゃん、ハンスくん、サマンサさん、サーシャさん、コトラルさん、アルトくん、それに私の8人だけだ。このメンバーには本当のことをいっても良いだろう。

「皆さん、魔王さんへの説得とスタンピードからの町の防御を同時に行うことは私ひとりでは無理です。ですので私の上司のリリ様に応援を求めました。」

「聖女様、私達では頼りになりませんか?」

「サマンサさん、とりあえず私の話を聞いてもらえませんか? それから判断して下さい。まず私は聖女ではありません、神です。」

「えっ、神様?」

 とサマンサさんが考え込んだ。今の内だ、私は皆にこの宇宙と神について、超越者と神の経緯について、この星のダンジョンに超越者の子孫が住んでいることについて。神は超越者との戦いではなく共存を望んでいることについて話をする。

「そういえば聖女さまも魔王を宥めて眠りにつかせるのであって、退治するわけではありませんね...。」

 相変わらずサマンサさんは聖女にこだわっている様だな。

「....と言う訳で、ここで超越者と戦うつもりはありません。あくまで目的は説得です。でもスタンピードで町を破壊させるつもりもないのです。ダンジョン中のモンスターが一気に出てくれば町中のAクラス冒険者が束になっても敵わないでしょう。ですので私がダンジョンの外でモンスターが町に向かうのを食い止めます。超越者の説得にはリリ様それにイースさんとハンスくんに行ってもらいます。」

「それで私達は?」

「サマンサさんとサーシャさんには他の冒険者と一緒に町の防衛をお願いします。コトラルさんとアルトくんは町の人達と一緒に退避です。」

 コトラルさんとアルトくんが不満を漏らしたが、サマンサさんの一喝でおとなしくなる。やっぱりサマンサさんは怖い...。

「残念ですが承知しました。」

 よかった何とか納得してくれた様だ。 

 その時カイルから伝令が来て町の避難が完了した旨を伝えてくれる。

<< それでは行きましょうか >>

 とリリ様が言う。

「トモミちゃん、モンスターは出口からだけ出てくるとは限らないから注意して。」

 とイースちゃん。

「了解。ありがとう。」

 私とリリ様、イースちゃん、ハンスくんの4人だけがダンジョンに向かう。サマンサさんとサーシャさんは万が一私が撃ち漏らしたときの為に町の最後の砦として他のAクラス、Bクラスの冒険者と共に町の近くで待機だ。コトラルさんとアルトくんは不承不承ながら退避に同意してくれた。

 リリ様とイースちゃんがダンジョンの入り口から中に進むのを見送り、私は入り口から少し離れた位置まで後退して10メートルくらいの高さまで浮かび魔力遮断結界を解除した。探査魔法を常時使用してモンスターの動きを探る。探査魔法はダンジョンの内部までは調べられないが、モンスターがダンジョンが出て来しだい知ることが出来るはずだ。町の方からは「飛んでる!」とか「光ってるぞ!」とかの声が聞こえるが今は無視だ。
 
 緊張のまま時が過ぎて行くが何も起こらない。このままイースちゃんのお父さんの説得に成功すればよいと思ったが世の中そう甘くはなかった。ダンジョン上部の地面に沢山の亀裂が入いり、その割れ目から一斉にモンスターが這い出して来る。

「来ましたね....。」

 私は広範囲に破壊魔法を打ち込む。沢山のモンスターが一斉に消滅するが、消える先から新しいモンスターが這い出して来る。この野郎! 私の魔力をなめるなよ。今の私の魔力はリリ様に匹敵してるんだ。魔力切れなんか期待しても無駄だからな。私は途切れなく連続して破壊魔法を打ち込み続ける。だがモンスターの出現頻度は増え続けついに私の破壊魔法をすり抜けるモンスターが現れる。くそ、これ以上の対応は無理だ後は冒険者の皆さんにお任せするしかない。
 
 そのうちに防御結界を使うモンスターが現れた。それほど強力な結界ではないので対応可能だが、これ以上破壊魔法を強くすると地形が変わるが仕方が無い、町を守ってくれている冒険者の命の方が大切だ。私の強力な破壊魔法を連続して浴びて地面がどんどんえぐれて行く。このままだとダンジョンが無くなってしまいそうだ。深さから言ってすでに第一階層までは無くなったと思う。

 その時ダンジョンから遠く離れた地面から何か巨大なものが飛び出した。しまった! あんなところにもダンジョンからの出口があったのか! 幸いそこから飛び出したのは一匹だけだ。飛び出したモンスターは全長30メートルくらいの巨体。全身が炎に包まれている。火竜というやつだろうか? そいつは私の方向に向きを変えると炎のブレスを吐いた。もちろん防御結界を張っているので私に届く前に弾かれる。だが私の攻撃も相手の防御結界に弾かれた。くそ、ダンジョンへの破壊魔法の連射を継続しながらの片手間での攻撃では仕留められない。モンスターは私に体当たりをするつもりかぐんぐん近づいてくる。避けたら町の方が危ない。数秒でいいから溜めを作る時間が欲しい。幸い私の連続攻撃によってダンジョン上部の穴はかなり深くなっている。これなら攻撃を中断しても数秒間はモンスターが地上に現れないかもしれない。

 意を決して一瞬ダンジョンへの破壊魔法を止め、その分の魔力を手の平の間に蓄積する、彗星・小惑星除去作業にくたいろうどうの要領だ。溜めた数発分の魔力を破壊魔法として放出するとさすがの火竜も光の粒子となって消えた。すぐにダンジョンへの攻撃を再開するが、飛翔型のモンスターが10匹ほど町に向かった後だった。ごめん、冒険者さん達。

 その後はしばらくこう着状態が続く。私の破壊魔法で穿たれた穴はすでに第3階層に達している。その時ようやくモンスターの出現が止まった。と同時にリリ様とイースちゃん、ハンスくんが私の傍に瞬間移動した。

<< ごめん、トモミ。説得できなかった。>>

 とリリ様が念話で伝えてくる。ありゃ、リリ様でも無理だったか。イースさんのお父さんと全面対決するしかないのだろうか。でもそうなったらこの星がただでは済まないだろう。どうしょう? どうしたらいい?

 そんなことを考えていると火竜が出てきた穴から一人の男性が飛び出し、そのまま私達の方に飛んでくる。黒のスーツ姿で結構カッコいい。男性は私の前10メートルくらいまで接近するとそこで止まり私に向かって優雅に上半身を傾けお辞儀をした。

「我が名はライネル、超越者一族の長だ。ラース様を滅した神トモミ殿とお見受けする。死に花を咲かせる相手としては申し分ない。私と勝負してもらおう。」

 リリ様より私を対戦相手としてご所望の様だ。どうして? 

「ちょ、ちょっと待って下さい。私達は超越者一族との共存を望んでいるんです。なぜ戦わなければならないんですか?」

 と一応尋ねてみる。
 
「神と共存などするくらいなら我ら一族は死を選ぶ。神に見つかった以上我らの野望は絶たれた。あとは潔く散るのみ。」

「そ、それは一族の総意なんですか? 少なくともここに居るイースちゃんはそんなこと望んでいませんよ。」

「ふん、裏切者は好きにするが良い。強要はせん。」

 ふむ、きつい言葉を使っているが要するに好きにしろと言うことだ。案外神との共存に反対しているのはこの人のみだったりして。その時イースちゃんが大声で叫ぶ。

「お父さんいい加減にして! 超越者の誇りよりお母さんの方が大事じゃないの!」

「だから助かりたければ降参すれば良いと言っている。トモミ殿、どうか超越者一族の長としての最後の矜持を通させてくれぬか。」

 どう見ても決心は固いね。やるしかないかと考えた時、リリ様の声が響いた。

「戦うなら私が相手をします。トモミは戦いの神ではありません、きっとあなたを傷つけるのを躊躇して碌な戦い方をしないでしょう。それでは戦う相手としてあなたにも悔いが残るのでは?」

「何を馬鹿なことを、ラース様を滅した神が戦えないだと!?」

「あれは事故です。トモミはゲートを破壊しようとしただけです。」

「なんだと....。」

 ライネルさんはそれを聞いた途端見るからに気落ちしてしまった。まるで自分を支えていた最後のものが崩れ落ちたかの様だ。

「ふっふっふっ、あははははは、ならばもう何も望まんとっとと殺すがよい。」

 といってライネルさんは自らの防御結界を解除した。その姿はとても悲しそうで...私は見ていられなかった。

「ライネルさん、分かりました。私はあなたと戦います。」

 と静かに告げる。我ながらバカな行動だとは思うがライネルさんの心を救うにはこれしかないと感じたんだ。不老不死で無い者はいつかは死ぬ。それなら納得のいく最後を迎えるのもひとつの幸せなのかもしれない。ライネルさんは驚いた様に顔を上げた。すかさず私は言葉を続ける。

「でも覚悟して下さいね。最初から全力で行きます。言っておきますが私は強いですよ、魔力だけならリリ様にも負けません。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

婚約破棄を突き付けてきた貴方なんか助けたくないのですが

夢呼
恋愛
エリーゼ・ミレー侯爵令嬢はこの国の第三王子レオナルドと婚約関係にあったが、当の二人は犬猿の仲。 ある日、とうとうエリーゼはレオナルドから婚約破棄を突き付けられる。 「婚約破棄上等!」 エリーゼは喜んで受け入れるが、その翌日、レオナルドは行方をくらました! 殿下は一体どこに?! ・・・どういうわけか、レオナルドはエリーゼのもとにいた。なぜか二歳児の姿で。 王宮の権力争いに巻き込まれ、謎の薬を飲まされてしまい、幼児になってしまったレオナルドを、既に他人になったはずのエリーゼが保護する羽目になってしまった。 殿下、どうして私があなたなんか助けなきゃいけないんですか? 本当に迷惑なんですけど。 拗らせ王子と毒舌令嬢のお話です。 ※世界観は非常×2にゆるいです。     文字数が多くなりましたので、短編から長編へ変更しました。申し訳ありません。  カクヨム様にも投稿しております。 レオナルド目線の回は*を付けました。

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

処理中です...