新米女神トモミの奮闘記

広野香盃

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第3章 惑星マーカス編

16. ガープとの対決

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<< 待っていたぞ、意外と早かったではないか。>>

 おどろいて目を見張る私の前に皇帝ガープが浮かんでいた。完全に裏をかかれた様だ。

<< まったく、アバターなんかで俺を誤魔化せると思うとはこの次元の神は馬鹿なのか? それとも俺を馬鹿にしているのか? アバターなど魔力の有無ですぐに区別できるだろうが。>>

 ごもっともです。でも馬鹿なのは私であってこの次元の神がすべて馬鹿だと思われるのは心外だ。それにしても意外なことがひとつ。皇帝ガープの魔力がそれほど強くない。いや、もちろん私なんかよりは遥かに強いのだが、ラースさんの話を聞いていたからか私の超越者のイメージからは劣るのだ。皇帝ガープは強いけどラースさんには劣る。そう理解すると少し恐怖が和らいだ。こうなったらとことん抵抗してやろうじゃないか。我ながらこんな度胸があったのかと思うくらい気持ちが落ち着いている。

<< ガープさんはお暇なんですね。私なんかの為に今まで待ってくれていたんですか? >>

<< はははっ、自分を卑下してはいけないな。お前にはそれだけの価値があるのだよ。>>

<< そうだったんですね。自分を見直すことにします。それで私に何かご用でしょうか? >>
 
<< なあに、ちょっと頼みごとがあってね。私を連れてキミの次元に瞬間移動してもらいたいんだ。>>

<< 残念ですが、あなたは招待状をお持ちでは無い様ですのでお断りさせて頂きます。>>

 と言って私は瞬間移動で逃げ出そうとしたが出来なかった。おそらく皇帝ガープが何らかの方法で瞬間移動を出来なくしている。

<< 大丈夫だすぐに是非とも私を連れて帰りたくなるさ。俺とお前は友達になるのだよ。>>
 
 皇帝ガープがそう言った途端、頭が割れる様に痛んだ。なんだこれは??? まずい! あたまがボーとして考えがまとまらない。それだけじゃない、皇帝ガープが好ましい異性に思えてくる........どうして今まで気づかなかったんだろう。彼は超越者の威信をかけて彼を追い出した奴らと戦おうとしているのだ。素敵じゃないか...

<< さあ、俺達は友達だ。俺をお前の次元に招待してくれるな? >>

 と言いつつガープ様は手を差し出してくる。

<< はい、ガープ様喜んで! >>

 ガープ様のお役に立てると思うと私は恍惚感に満たされる。ああ、ガープ様。なんて素敵なんだろう...。私はいそいそとガープ様の手を取り瞬間移動の魔法を使おうとした。

<< トモミ! しっかりしろ! ガープの精神攻撃だ! >>

 その瞬間ハルちゃんの必死の声が頭に響いた。ハルちゃん!!! と考えただけでガープは私の心から綺麗に消え去った。ガープの精神攻撃が解けたのだ! 一瞬動作が止まった私を不審に思ったのかガープが話しかけてくる。

<< どうした? >>

<< いえ、なんでもありません。ガープ様のお役に立てると思うと嬉しくて身体が震えてしまって...。>>

 私の返事を聞いてガープの顔がニヤリと歪む。その瞬間私は繋いだ手を通して全力の破壊魔法をガープの身体に流し込んだ。繋いだ手から魔力を流したのだからたとえ結界を張っていたとしても役に立たない。ガープの身体は瞬時に消滅した。

 終わった? あまりにあっけない幕切れにとまどう私。考えてみれば自分の意志で誰かを殺したのは初めてだ。でも後悔はない...少なくとも今は。そんなことを考えた瞬間私は自分が甘かったことを知った。私の手が再び強い力で握られたのだ。あわてて視線を下ろすとガープの手が復活していた。さらに手から腕と順に身体が修復されて行く。くそ、私やリリ様と同じで魂を滅しない限り復活出来る様だ。だが身体がある程度復活するまで魔法は使えないはずだ、少なくとも腕だけの復活では無理だ。私は再び破壊魔法を流し込んだ。ガープの腕が再び消え去る。そのチャンスに私は出来る限る遠くへ瞬間移動した。移動が終わると更に遠くに瞬間移動する。目標は定めていないとにかく逃げる。だが、逃げながらも私はガープのことなんか考えてはいなかった。

<< ハルちゃん! ハルちゃん!! ハルちゃん!!!>>

 私は泣きながら叫ぶ。もう一度だけで良い、ハルちゃんの声が聞きたい。

<< トモミ、大丈夫だよ。そんな大きな声で叫ばなくても聞こえるから。>>

<< ハルちゃん!!!!!!! >>

<< 声を落とすんだ、ガープに気付かれてしまうよ。>>

 そうだ、私はガープから逃げているんだった。すっかり忘れていたよ。

<< ハルちゃん、どうして? >>

 と念の出力を落としてささやく。

<< 話は後だ。とにかく逃げるよ。理由は分からないけど今のトモミは魔力が少しも減ってない、あれだけ瞬間移動を繰り返したのにね。これなら逃げ切れるかもしれない。 >>

<< 了解。とりあえず瞬間移動を繰り返すわね。>>

 間違いなくガープは後を追ってきているはずだ。私は何もない空間をひたすら逃げる。この宇宙に現在存在する銀河はひとつだけ、ほとんどスカスカの状態だ。そのスカスカの何もない空間を瞬間移動する。 今の私の魔力なら一度の瞬間移動で100万光年くらい移動できる。もう百回くらい移動を繰り返したので1億光年以上の距離を移動したはずだ。振り切れたかなと期待した瞬間前方にガープが現れた。くそ! 直線的に逃げていたから次の移動先を予測して先回りされた様だ。私は咄嗟に再度瞬間移動して逃れる。危なかった、先ほどのはガープの予測が甘かったのか現れた時点でこちらと100キロメートルくらいの距離があったから何とかなったが、もう少し近かったら瞬間移動を封じられて捕まっていただろう。

<< トモミ、直線的に逃げるのは無しだ、瞬間移動の度に方向と距離を変えるんだ。>>

 とハルちゃんのアドバイスが入る。ハルちゃんのアドバイスに従ってジクザクに瞬間移動を行う。距離も出来る限り遠くへではなく長くしたり、短くしたりと変化を付ける。これならガープも予測できないはず。ふと気付くとラルフさんの居る銀河が近くにせまっていた。ぐるっと回って出発地点に戻ってきてしまった様だ。そろそろガープを撒けただろうかと考え始めたとき不意に瞬間移動が出来なくなった。
 
<< いやはや、お転婆なお嬢さんだな。私にこれだけ手間をかけさせたやつは初めてだよ。人族の身体を持った神がこれほど厄介とは思わなかったぞ。>>

 という念話と共に10メートルくらい離れた位置にガープが現れた。いったいどうやって...。

<< どうやったか不思議かい? 教えてやっても良いがそれは君達の次元に着いてからにしよう。>>

 とガープが言うなり頭が痛くなった。精神攻撃だ! だが今度は大丈夫の様だ、頭痛がするだけでガープのことを好きになったりしない。

<< トモミ...>>

 とハルちゃんが心配そうに話しかけてくる。

<< 大丈夫だよ、私にはハルちゃんが付いているもん。>>

 私は屈んで頭を下げ、ガープの精神攻撃に抗っている振りをしながら両手の平の間に魔力を溜めた。魔力は魔力遮断結界で覆っているから相手には分からないはずだし、それに加えてガープだって精神攻撃を仕掛けている間は注意が散漫になっているかもしれない。

<< 馬鹿な...これほど長く私の精神攻撃に耐えるだと...。>>

 ガープがそうつぶやいた瞬間私の破壊魔法が炸裂した。私の渾身の一撃を受けガープの身体は再び消滅する。今だ! 私は再び瞬間移動で逃げようとする。が、何故だ!? 相変わらず瞬間移動が使えない。あたふたしている内にガープの身体が復活してくる。しまった! 再び破壊魔法を放つが遅い。復活したガープの防御結界に防がれた。復活するのが早い!

 復活したガープと10メートルほどの距離を置いて相対する。こうなったら敵わないまでも出来る限り抗うだけだ。ハルちゃんの前で無様な恰好は見せられない。

<< まったく驚かせてくれる。だが、私の勝ちだ。>>

<< そうかもしれませんが、あなたも無傷で帰れるとは思わない事ですね。>>

 と言いながら私は両手を胸の前に伸ばし、腕の間に特大の魔力遮断結界を形成して魔力を溜め始める。ラースさんが私達の次元に侵入しようとした時に次元ゲートを破壊した魔法の要領だ。あの時魔力を溜めるのに協力してくれた精霊さん達は居ないが、私の魔力はあの時とは比べものにならない位強くなっている。問題は魔力を溜める間ガープが待ってくれるとは思えない事だ。

 案の定ガープの強力な破壊魔法が私の防御結界を揺らす。「このやろう!」と心の中でつぶやきながら魔力を溜め続ける。まだだ!

<< そんなもので私の身体を破壊しても何度でも復元するだけだ。無駄だぞ。>>

 そう、私もガープも魂が無事なら身体なんか何度でも復元できる。そして私はガープの魂を攻撃する手段を持っていない。一方でガープは私の魂を捕えることが出来るのだろう。でなければ他人の魂の力を手に入れることなんて出来ないはずだ。どうしょうもないのか...。と力が抜けそうになる。

<< 違うよ。僕には見える。ガープは魂の力を消耗している。他人の魂の力を使っているガープは使った魔力を自力で回復出来ないんだ。 ガープに魔力を使わせ続ければ勝てる。>>

 ハルちゃんが励ましてくれる。ええ、信じるよハルちゃん。

<< 行っけ~~~ >>
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