新米女神トモミの奮闘記

広野香盃

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第3章 惑星マーカス編

閑話-2 アンジェラ視点

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私はアンジェラ、トルラ領の領都で冒険者ギルトの受付嬢をしている。私は最近人気の聖女の物語が気になって仕方が無い。創作ではなくつい最近実際にあった話と言うのも驚きだが、物語に出てくる聖女の名前が気になるのだ。トモミ... 私が冒険者登録を担当した少女の名前だ。登録したその日に昇級試験を受けEクラスに昇級した少女。昇級試験で的を破壊して試験官を焦らせた少女。あの時の的の破壊は経年劣化と言うことで片づけられたけれど私はおかしいと思っていたんだ。ひょっとして...あの少女が聖女様だったりして....。
 気になった私はオルネイのギルドに居る知り合いに手紙で問い合わせた。聖女の物語はこの町が舞台となっているからだ。幸い知り合いからはすぐに返事が返ってきた。彼女は聖女様を実際に見たらしい。背格好、髪や目の色、ローブの色、すべて私の記憶と一致していた。何よりダンジョンに入る為の申請時に提示した冒険者証の番号! 間違いないこちらの記録と一致している。私が発行した冒険者証だ。
 これは間違いない。あの少女が聖女様だったのだ。今考えれば随分失礼な物言いをしたと思うが、知らなかったのだから仕方が無い。聖女様はお優しい方だと言うことだからきっと許していただけるだろう。あの時知っていればサインをもらっておいたのだが...。

 大の聖女様ファンである私はさっそく長期休暇をとりオルネイの町を訪れた。馬車でひと月の長旅だ。ギルド長には嫌な顔をされたけれど押し切った。町に着くとすぐに、聖女様と魔王の戦いの跡を見にダンジョンの跡地に向かう。確かにあった、これが戦いの跡と言えるならばだが。ダンジョンの第3階層までとどく大きな穴が開いているのだ。これは聖女様がダンジョンからモンスターが這い出すのを防ぐために放たれた攻撃魔法の跡だという。まるで火山の噴火口の様だ、聞かなければとても人の業とは思えない。それ以外にも聖女様がお泊りになった部屋(当時のまま保管)、聖女様が自らお書きに成ったというダンジョンへ入る為の申請書、聖女さまの等身大の人形(聖女様の衣装を復元して着せてある)、聖女様に回復魔法で腕を復元してもらった冒険者のモンスターに噛み千切られた腕(すでにミイラ化している)、聖女様がお茶を飲むのに使われたカップ(洗わずに保管)等、興味深いものが沢山。宿では聖女様がお食べになったのと同じメニューが食べられるとあって人気を博している。もちろん私もそれを注文した。それから聖女様がピクニックに行かれたという町の近くの花畑やダンジョン最下層にある魔王の隠し部屋(洞窟の中にあることを除けば以外に普通の部屋)を訪れ、聖女様と火竜の戦いの場面の再現画を買い込み帰途についた。もう頭の中は聖女様でいっぱいである。
 そうだ、領都にも聖女様ゆかりの物があるはずだ。聖女様が破壊した試験場の的の残骸なんて絶好の観光資源になりそうじゃないか! それに聖女様の冒険者登録の申請書(書いたのは私だが)、正規の冒険者証と交換した聖女さまの仮冒険者証、聖女様が退治したトラの毛皮(確かまだギルドの保管庫にあったはずだ)、それに武器屋のおやじが聖女さまの防御結界に当ててふたつに折れた剣(私の依頼の所為で折れたと言うことで私が買い取ることになった。業突く張りのおやじめ)。ようし、うちのギルドも聖女様の観光客を呼び込めるようギルド長に相談だ。ひょっとしたら将来国宝になるものもあるかもしれないな。
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