エルドランド双王記〜王女と剣士と、王冠のゆくえ〜

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第11話 エルドランド城内の攻防

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ゴラム達は馬車を懸命に走らせた。ガルムヘルムの町を過ぎ、エルドランド樹海の中を突っ切る。走り続けること10日ほど、ついに首都エルドの近くまでたどり着いた。

「止まれ!!」
突然、男が馬車の前に立ちはだかった。
ゴラムは慌てて手綱を引き、馬車を止めた。
「何事だ!急に飛び出すと危ないぞ!」
灰色の髪に甲冑を身に着けた老齢の男にゴラムは見覚えがあった。
「お前は、ヴァルカ!」
「酒場にいた男!?」
キャスが叫ぶ。
「誰かと思えばお前か、ヴァルカ。」
サウザー王子が驚いた顔で言った。
「ヴァルカを知っているの?」
アンヌがサウザン王子に尋ねる。
「話はあとだ、馬車に乗せてくれ。私も一緒に行く。」
ヴァルカは、そういうと馬車に乗り込んだ。

ヴァルカを加えた一行は検問を無事通過して、首都エルドに入った。
町は一見したところ、いつも通りに見える。
ヴァルカが身を隠しながら小声で言った。
「どこか適当な酒場に入って話をしよう。」
ゴラムたちは、馬車を停め、エルフの酒場に向かった。

大きなテーブルに
ゴラム、アンヌ、ミカ、キャス、サウザン王子、従者のセリーナ、そしてヴァルカが座った。
「さて、何から話をしようか。」
ゴラムが口火を切る。
「ヴァルカに言われた通り、遺跡を調べた。俺はゴブリン王の子供で、この腕の痣がその証拠だ。あの遺跡は妙に新しかった。あれはゴブリン城なんだろ?ヴァルカ?」
ゴラムの言葉に観念したようにヴァルカが話し出した。
「ゴラムのいう通り、あれは焼け落ちたゴブリン王の城だ。あの日、ヴェールの影の奇襲を受けたゴブリン軍は成す術もなく負けた。王と妃は処刑され、俺は妃に赤子を託されて逃げた。赤子を子供の居なかった夫婦に預けて、俺は姿を隠した。」
「・・・俺は、ヴァルカに命を助けられたのか。」
ゴラムが呟く。
「姿を消した俺は、ヴェールの影の内部に潜り込んだ。」
「なんだって?ヴァルカ、お前はヴェールの影にいたのか?」
ゴラムが驚いて聞く。
「まあ、落ち着け。俺はヴェールの影の目的なんてどうでもよかった。俺の目的は、組織の弱体化だ。王国転覆派がほとんどだった状況を少しずつ変えていった。王国復活派の勢力を広げていったんだ。エリーゼはよく働いてくれたよ。あの娘には感謝している。」
「すべて、ヴァルカが裏で動いた結果なのか。ヴァルカはゴブリン王の復活が望みなのか?」
ゴラムが神妙な顔で聞く。
「そうだな。俺の目的は、ゴブリン王の復活と双王制の再興。そのために人生を捧げてきた。」
「・・・俺は、王になるつもりはなかった。でも、今は分からなくなった・・・。」
ゴラムは苦渋の表情を浮かべながら、声を絞り出す。
「ゴラム。。。もし、あなたがどんな道を選んでも私は応援するわ。」
アンヌが言うとほかのメンバーもうなずく。

ヴァルカがさらに続ける。
「今、エルドランド城内は、転覆派と復活派の2大勢力が裏で勢力拡大を狙って派閥争いをしている。今のところ、復活派がやや優勢だが、分からない。そして、どうやら転覆派が実力行使に出るという情報を得た。」
「実力行使。。。反乱か。」
ゴラムがつぶやく。
「事態は一刻の猶予もない。君らにも手を貸して欲しい。」
「わかったわ。ねえ、ゴラム。ヴァルカやエリーゼを助けましょう。」
アンヌがいつになく真剣な表情で言う。
「よし、まずは転覆派の制圧。そのあとのことは、その時に考えよう。」
ゴラムが覚悟を決めたような声で言う。
「僕は、アンヌ姫の決断を尊重するよ。」
サウザン王子が言う。
キャスとミカも意見は同じのようだ。

「よし、エルドランド城に行くぞ、国王の安全の確保と転覆派の制圧が目標だ。」
「おう!」

ゴラムたちは、エルドランド城に向かって動き出した。

正門の前は、いつも通り衛兵が2人立っていて、一見したところ何も異変は感じられない。

アンヌが衛兵のところに行った。
「向学の旅から戻りました。扉を開けなさい。」
衛兵は言われたとおりに扉を開けた。
ゴラムが衛兵の前を通ったときだった。衛兵がゴラムに耳打ちした。
「転覆派が王の間に向かっています。どうか国王陛下をお守りしてください。」
ゴラムは黙って頷いた。

城内に入ると、人が慌ただしく動き回っている。
「白い花が復活派、赤い花が転覆派だ。」
ヴァルカが言う。
まずは、ミカの部屋に向かう。幸運なことにミカの部屋は手つかずだった。
ここを基点にすれば、作戦も組みやすい。
「王の間に行って、国王のお身を守るのが先決だな。」
サウザン王子が言う。
「よし、俺(ゴラム)とミカ、サウザン王子、アンヌの4人で行こう。キャスはここを守ってくれ。」
ゴラムの作戦に皆、うなずく。

「行くぞ!」
ゴラムたちはドアを開け、廊下に出て、王の間まで最短距離を行く。
赤い花をつけている敵は避け、できるだけ戦わずに進む作戦だ。
王の間の前の広い廊下にたどり着いた。
扉の前に赤い花をつけた数人の黒いヴェールの人影がいる。
「あいつらは、俺とサウザン王子で片付けよう。」
ゴラムがいうと、
「わかった。僕に任せてくれ。」
サウザン王子が返す。

ササッ。
サウザン王子が壁際に沿って身を潜めながら近づいていく。
ゴラムもそのあとを追う。
そして、2人同時に飛び掛かった。
ウリャーッ!
「て、敵襲だ!グワッ!」
バシュッ!キンッ!スバッ!
サウザン王子の二刀流は、まるでダンスを踊っているように華麗だ。
あっという間に敵を倒していく。
ウオーッ!
ゴラムは豪快に剣を振り回し、敵を蹴散らしていく。
王の間の前の敵はあっという間に、一掃された。
「よし!中に行くぞ。」

王の間の大きな扉がゆっくりと開く。

「ゴラム様!サウザン王子様!」
背後から声をかけられた。振り返ると、そこにいたのは、王国復活派のエリーゼだった。
「私もお供します。」
「エリーゼ、頼みます。」
アンヌが言う。

扉を開けると、玉座にエルドランド王が座っていた。
そして、その横には、王国転覆派のザハークが剣を片手に持ち立っている。
「お父様!」
アンヌが叫ぶ。
「ザハーク!国王陛下から離れろ!」
エリーゼが怒りを込めて言う。
「わらわに任せろ!闇に堕ちよ!ダークネス!」
ミカが放った、細く範囲を絞り込んだ黒い波動がザハークに向かい命中した。
「グハッ」
ザハークに相当なダメージを与えたのは間違いないが、まだ立っている。
そして、右手を上げ、反撃をしてきた。
「くっ、深紅の波動よ!咲き誇れ!ローズウェーブ!」
真っ赤な波動が襲ってくる。
「防御せよ!バリア!」
ミカのバリアで弾き返す。そして、ゴラムとサウザン王子が素早く飛び掛かった。

「残念だったな!」
ザハークは叫ぶと同時に左手の剣をエルドランド国王の首に振り下ろした。

「やめろー!!」
ゴラムとサウザン王子が同時に叫ぶ。
「お父様!」
アンヌが涙声で叫んだ。

「アンヌ!後は頼んだぞ!!」
エルドランド国王が叫んだ直後、胴体から切り離された首が無残にも床に転がった。

「お父様ーーー!!!」
アンヌが絶叫し、嗚咽した。
ミカがアンヌの体を支える。

「く、許さん!ザハーク!」
ゴラムとサウザン王子がザハークに切りかかろうとした瞬間。
「ここは一旦、引こう。さらばだ諸君!テレポート!」
瞬間移動魔法を唱えたザハークは、消えてしまった。

「またしても逃げられてしまった……。」
エリーゼが膝から崩れ落ちる。

「国王陛下……。」
ゴラムとサウザン王子は、エルドランド国王の切り離された頭をただ茫然と見るしかできない。

「お父様!いやー!」
アンヌがエルドランド国王の亡骸に抱き着こうとするが、ミカがそれを止めた。
「アンヌ!今は見るな!行くぞ!後はゴラムたちに任せるのじゃ!」
「いや!お父様と一緒にいる!」

最悪の事態になってしまった。
ゴラムたちはしばらくの間、その場から動くことが出来なかった。




エルドランド国王の遺体は、ハンス大臣と執事によって丁重に弔われ、
国王不在のエルドランドは、摂政としてハンス大臣が治めることになった。
2週間後、エルドランド国王の国葬が盛大に行われた。




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