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第58話
しおりを挟むここはウエス国の森の中。
リリィは夢を見ていた。
魔神の城。王の間で魔神と対峙している。黒いオーラを纏ったその男は、リリィとその隣にいるフィーネを睨みつけている。その威圧感は、リリィの足の震えが止まらないほどのものだ。
「リリィ、落ち着いて。あなたなら出来る。」
フィーネが力強い声でリリィに語りかける。
「わかった。やってみる。」
リリィは、声を絞り出す。
「魔神!私の99回の転生で得た経験値のエネルギーをお前にぶつける!」
フィーネはそういうと、両手を掲げて魔法陣を出した。
「リリィ。私が魔神に攻撃したら、あなたがトドメを刺して。」
フィーネがリリィに優しく語りかける。その眼には涙が浮かんでいる。
「フィーネ、何をするの?」
リリィが聞くと、フィーネは微笑んだ。
「魔神!行くわよ!」
フィーネが両手を魔神に向けると、魔法陣が魔神を包み込み、眩い光がフィーネと魔神を覆い尽くす。
「フィーネ!」
リリィが叫ぶ。
グワーッ!
魔神の悲痛な叫び声がこだまする。
光が消えるとフィーネも消えていた。
魔神は瀕死の状態だ。
「フィーネ!」
リリィは、涙を堪えて、両手で剣を握り、魔神に振り下ろした。
リリィは、そこで目を覚ました。
丸太小屋の寝室。
横を見るとハクが寝ている。
「夢か......」
リリィは、そうつぶやくと体を起こした。
ベッドから起き上がり、下の階に行く。自分でお湯を沸かし紅茶を淹れる。
リリィは、紅茶を飲んで一息ついた。
上の階から誰か降りてくる。
そちらを見ると、ハクだった。
「リリィ、眠れないのか?」
「うん...嫌な夢を見ちゃって。」
「おいらにも紅茶淹れてくれよ。」
リリィは、ハクの分の紅茶を淹れた。
しばらく二人は黙って紅茶を飲んだ。
「ねぇ、少し散歩しない?」
リリィが提案する。
「夜の散歩か。いいね。行こう。」
ハクも乗り気だ。
二人は丸太小屋を出て歩き出した。
「何処に行くんだ?」
ハクが聞く。
「この間、みんなで行ったお花畑に行こう。」
「わかった。」
二人は森の中をどんどん進んでいく。
「何かあったら、おいらがリリィを守るからな。」
ハクが言う。
「ありがとう、ハク。」
リリィが少し照れながら答える。
しばらく歩くと、目の前が急に開けた。
丘の上まで行くと、眼下には一面の花畑。そして、空には満天の星空。
「うわーっ!」
リリィもハクもしばらく立ち尽くした。
「こんなに綺麗な景色初めて。」
「コレは凄いな。おいらも感動した。」
リリィとハクはその場に座って、しばらく空を見上げていた。
「私ね。ハクやフィーネたちと家族になれて幸せなんだ。」
「おいらもそう思うぞ。」
「だから、みんなと離れたくない。絶対に。」
「そうだな。」
「私たち、魔神に勝てるかな?」
リリィが少し震える声で言う。
「おいらたちなら勝てるさ。」
ハクがワザと大きな声で返す。
「ねぇ、ハク。フィーネは居なくならないよね?」
リリィは涙声でハクに問いかける。
「フィーネは、リリィを置いて何処かに行ったりしないよ。」
ハクはリリィを励ますように言った。
「私、不安で仕方ないの。フィーネが死んじゃうんじゃないか?って。」
「フィーネは強い。絶対に死なないよ。」
リリィは、ハクに寄りかかった。
ハクは一瞬、戸惑ったが、そのまま受け入れた。
「リリィも頑張ってるし、絶対に勝てるさ。」
ハクはリリィの頭に手を置いて撫でた。
「お母さんも、見てくれてるかな?」
「うん。きっと見てるよ。」
しばらく静寂の時間が流れた。
リリィとハクの息遣い。それと、時折り吹く風のざわめき以外には何も聞こえない。
「リリィ。お母さんの近くに行ってみないか?」
ハクが突然提案する。
「えっ?お母さんの近くって?」
リリィが驚いて答える。
「どの星がお母さんか分からないけど、出来るだけ近くに行こう。」
ハクはそう言うと、竜の姿になった。
「さあ、乗って。」
ハクに促されて、リリィはハクの体に乗った。
「ちゃんと掴まってて。」
「うん。」
ハクは、空に舞い上がった。見る見るうちに森が小さくなって行く。
「見て!あれが丸太小屋ね。あそこはウエス湖!」
リリィが叫ぶ。
「リリィ。上を見て。」
ハクが言うと、リリィは上を見上げて息を呑んだ。
「凄い!星の中に居るみたい!」
満天の星空に包み込まれているような感覚だった。とても幻想的で、今まで見たことのない光景。
「この中に、お母さんも居るのかな?」
リリィがつぶやく。
「きっとリリィのことを見守ってるさ。」
ハクが答える。
「ありがとう。ハク。私、やれそうな気がする。」
「おいらが居るから大丈夫。それにフィーネや皆んなも居る。」
「うん!」
ハクとリリィは、しばらく空を飛び、そして、丸太小屋に帰って行った。
物音に気付いたフィーネが二階から下に降りると、リリィとハクが紅茶を飲んでいた。
「どうしたの?二人とも。」
フィーネが聞くと、
「ちょっと良いことが、あったんだ。」
「そう。おいらとリリィだけの秘密だ。」
リリィとハクが目を合わせて笑った。
フィーネは、不思議そうな顔をして、自分の紅茶を淹れて座った。
「まあ、いいわ。お邪魔して良いかしら。」
「もちろん。どうぞ。」
リリィたちは、夜明けまで他愛のない話をして過ごしたのだった。
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