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第61話
しおりを挟むここはウエス国の森の中。
「待てー!」
「待つキキー!」
「待たないキー!」
リリィ、モック、ドンキーが追いかけっこをしている。
ハクは一人で温泉を満喫していた。
「本当に飽きないわね。」
フィーネはいつもの様にロッキングチェアに揺られながら紅茶を飲んでいる。
「子供が元気なのは良いことだ。」
イブが紅茶を一口飲んで、言った。
リリィたちは森の中に入って行く。
「待てー!」
「待つキキー!」
「待たないキー!」
ガサガサガサっ!
あっという間に森の奥に消えて行ってしまった。
「あまり遠くまで行かないでね!」
フィーネが叫ぶ。
「今のリリィなら大丈夫だろう。」
イブは、あまり心配していないようだ。
そして、
丸太小屋に静寂の時が訪れた。
時折、風で騒めく木々の音とフィーネとイブが紅茶をすする音以外は何の雑音もしない。
ガサガサっ!
森の中からリリィが出て来た。
「待てー!あれ?」
リリィが周りを見回すが、モックとドンキーの姿が無い。
「モック!ドンキー!何処に行ったの?」
二人の返事はない。
「リリィ、どうしたの?」
フィーネが聞くと、
「モックとドンキーが居なくなっちゃった。」
リリィが答えた。
その頃、モックとドンキーの追いかけっこはまだ続いていた。
「待つキキー!」
「待たないキー!」
ドドドドド
二人が走り抜ける所は木の方が避けていく。ついに疲れて走るのをやめてしまった。
「疲れたキー......」
「ドンキーも疲れたキキー」
「そう言えばリリィは、何処に行ったキー?」
「リリィ居ないキキー!」
モックとドンキーは、リリィとはぐれてしまったことに気がついた。
周りを見回すが木ばかりでリリィの姿は見えない。
「リリィが迷子になったキー!」
「きっとひとりぼっちで泣いてるキキー!」
モックとドンキーはリリィを探すことにした。
「リリィ!何処にいるキー!」
「泣いてないで出てくるキキー!」
その頃、丸太小屋では、フィーネが千里眼を使って二人を探していた。
「何処にもいないわね。」
「モックもドンキーも何処に行っちゃったんだろう?」
フィーネは探すのを諦めた。
「二人ともドリアードだから大丈夫でしょう。帰って来るのを待ちましょう。」
「大丈夫かな...二人とも...」
リリィは心配そうに呟いた。
モックとドンキーはリリィを探して歩き回っていたが、くたびれて休んでいた。
「リリィが心配だキー。」
「きっと一人で泣いてるキキー。」
気がつけば周りが薄暗くなってきた。
二人は夜があけるまでその場を動かず過ごすことにした。
「今夜はここで寝るキー。」
「わかったキキー。」
二人は両足を地面に突き刺し、根を張るように眠りについた。
翌朝。
モックとドンキーは、夜明けと共に目を覚まして再びリリィを探して歩き出した。
すると突然、つむじ風が舞った。
「キー!なんだキー!」
モックが叫ぶと、つむじ風に巻き込まれてドンキーが飛んで行った。
「キキー!モック兄ちゃん!」
モックは慌ててドンキーが飛ばされてった方向に走り出した。
「ドンキー、何処だキー!」
ドーン!
何かが落ちた音がした。
モックは音のした方向に向かった。
モックの目に大きなクレーターのような窪みが見えた。
その中心にドンキーが頭から突き刺さっている。
「ドンキー!」
モックがドンキーを助けようと近づくと、またつむじ風が吹いた。
「キー!?」
小さな黒い影がモックの前に立ちはだかった。
「何だキー!?」
バサバサッ!
小さな翼に短い尾、鋭い牙に緑の硬い皮膚。それは、ベビードラゴンだった。子供とは言え、ドラゴンである。ドリアードのモックには手に負えない相手だ。
「キー!モックは負けないキー!そこをどくキー!」
ブウォー!
ベビードラゴンは口から炎を吐き出した。
「危ないキー!」
モックは素早く炎を避けた。
その炎は木に燃え移り、あっという間に拡がって行く。
ドンキーが突き刺さっている窪みの周りが炎に囲まれてしまった。
「キー!熱いキー!」
モックの脳裏に仲間を失った時の火事の記憶が甦る。
「もう家族を失うのはイヤだキー!」
モックは勢いよくベビードラゴンに体当たりした。
ドーーーン!
モックの頭突きがベビードラゴンの頭に直撃した。ベビードラゴンは地面に体を打ちつけられ、堪らず逃げて行った。
「やったキー!勝ったキー!」
モックは喜んで叫んだ。
しかし、炎が燃え広がりドンキーが取り残されたままだ。
「キー。ドンキーを助けるキー!」
モックは周りを見回すが水は近くに無さそうだ。
「キキー!助けてキキー!」
ドンキーが気づいたようだ。助けを求めている。
「キー!今助けるキー!待ってろキー!」
近くに水は無い。ドンキーを助けるには炎の中に飛び込むしかない。
しかし......
「火は怖いキー...」
モックは火事で仲間を失ったことで炎がトラウマになっていた。
「お兄ちゃん、助けてキキー!」
ドンキーが必死に助けを求めている。
モックは震える体を奮い立たせ、意を決した。
「ドンキー!今行くキー!」
モックは前傾姿勢で目を瞑り、炎に向かって飛び込んだ。
「お兄ちゃん!」
「ドンキー!」
モックは素早くドンキーの体を抱え、入って来た方とは反対側の炎の壁に飛び込んだ。
ザザーッ!
煤まみれになったモックは、ドンキーをそっと地面に降ろした。
「モック兄ちゃん、ありがとうキキー!」
「ドンキー、大丈夫かキー?」
ドンキーの無事を確認したモックは、気を失ってしまった。
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