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第70話
しおりを挟むここはウエスの森の中。
「では、いきますわよ。バリア!」
リリィの周りにバリアが現れた。
「まずは発声練習からです。」
アイリスがリリィに言う。
「分かりました!アイリス先生!」
リリィは、真剣な表情だ。
「わたくしに続いてください。」
「はい!アイリス先生!」
「あ、え、い、う、え、お、あ、お」
「あ、え、い、う、え、お、あ、お」
「よろしいですわ。その調子です。」
「ありがとうございます!アイリス先生!」
リリィとアイリスの歌の特訓が始まっていた。
朝から夕方まで、リリィは声を出し続ける。
アイリスの特訓は意外にスパルタだ。
フィーネは、喉に良いハーブティーを淹れてリリィのサポートをしている。
「リリィ!アイリス!休憩にしましょう。」
フィーネが2人を呼ぶと、リリィの緊張が解け、笑顔をみせる。
「もう、喉がガラガラ。フィーネ、ありがとう。」
「そうですわね。休憩しましょう。」
リリィとアイリスは、ロッキングチェアに座って、ハーブティーを飲む。
「2人とも、あまり無理はしないでね。」
フィーネが言うと
「大丈夫ですわ。わたくしが見ていますから。喉を潰してしまったら大変ですしね。」
アイリスが答えた。
「ところで、リリィは上達してるの?」
フィーネが聞く。
「リリィさんは、とても飲み込みが早いですわ。意外に速くものになりそうです。」
アイリスが答えた。
平和に見えるウエスの森にも、魔神の見えない影が迫って来ているのをフィーネは感じていた。
噂では北のノーザリア国が魔物に攻め込まれているらしい。
確実に闇の勢力は力を増していた。
「面倒くさいことになりそうね。」
フィーネは嫌な予感がしていた。
「待つキー!」
「待つキキー!」
「おいらは捕まらないぞ!」
モック、ドンキー、ハクの3人は追いかけっこをしている。
フィーネは、それを見ながらロッキングチェアを揺らし紅茶を楽しんでいた。
紅茶の香りは、気持ちを落ち着けてくれる。
フィーネが微睡みかけた時、
「フィーネ!新しい茶葉を持って来たぜ。」
森の中からゴブローが大きな袋を担いで出て来た。
「ゴブロー、いつもありがとう。」
「ご注文の喉に良いハーブの葉も大量に持って来た。」
そう言うとゴブローは大きな袋を下ろして、ふーっと息を吐いた。
「風呂に入ってくるよ。」
ゴブローはそう言うと露天風呂に向かった。
フィーネは、薬草のたくさん入った袋を魔法で動かして、裏の倉庫にしまった。
「ゴブローのお陰で、いつも助かるわ。」
フィーネが一息つくと、今度は別の来客が現れた。
「フィーネさん、こんにちは!」
「こんにちはー。」
オルガとスザク、ホウオウだ。
オルガは、フィーネを見つけると、真っ直ぐに歩いて来た。
フィーネは、立ち上がって3人を迎える。
「3人とも、いらっしゃい。」
フィーネとオルガが笑顔を交わす。
「ブルークリスタルのマスターから、良いものを貰ったから、持って来たんだ。」
オルガは、何やら重たそうなものを両手に下げている。
「何かしら?」
フィーネがオルガに尋ねる。
「マスターが上物を仕入れたって、分けてくれたんだ。コレ。」
オルガがそれをテーブルの上に置いた。
「コレは、お酒ね?」
フィーネが言う。
「そう。上等な果実酒だよ。今夜、みんなで飲もう。」
「凄いわ。じゃあ、このお酒に合う料理をたくさん作らなきゃ。」
「頼んだよ。フィーネさん。」
オルガはニコニコしている。
「紅茶でもいかが?今日はハーブティーよ。」
「いただくよ。フィーネさん。」
オルガ、スザク、ホウオウは丸太小屋の中でハーブティーを楽しんだ。
「リリィ!ハク!オルガたちが来たわよ!」
フィーネが呼ぶと、リリィたちが戻ってきた。
「では、今日はここまでですわ。」
アイリスも疲れた顔をしている。
「疲れたー!」
リリィもへとへとだ。
「オルガが来たのか?」
ハクが走ってくる。
「キー!」「キキー!」
モックとドンキーは、用意されていた水を勢いよく飲んだ。
「今夜は、ゴブローとオルガたちも来たし、改めてアイリスの歓迎会をやりましょう。」
フィーネが言う。
「やったー!」
リリィとハクが声を合わせて喜んだ。
「みんな、疲れたでしょ?先にお風呂に入りましょう。」
いっぺんに賑やかになった丸太小屋で、フィーネたちはアイリスの歓迎会の準備を始めた。
イブがアイリスに真面目な顔で話しかける。
「リリィの歌は、ものになりそうなのか?」
「あの娘は、覚えが早いから大丈夫ですわ。」
アイリスが答える。
「魔神との戦いの鍵はリリィだ。くれぐれも頼むぞ。」
イブがいつになく真剣な表情で言う。
「分かっていますわ。私に任せてください、イブ。」
アイリスが答えた。
「リリィ。あんな小さな娘に世界を託さないとならないとはな。女神とは無力なものだ。」
イブがつぶやいた。
「イブさん、わたくしも同じ気持ちですわ。わたくしたちはやれることをやりましょう。」
アイリスがイブに言う。
「ありがとう、アイリス。ぼくも出来るだけのことをしよう。」
2人の女神は自分たちの無力さを、恥じていた。
フィーネは、魔法でたくさんの料理を作り、アイリスの歓迎会の準備は着々と進んでいた。
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