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第22話
しおりを挟むここはウエス国の森の中。
「待てー!」
「待つキキー!」
「待たないキー!!」
今日もリリィたちは追いかけっこをしている。
「待つキ!」
急にモックが立ち止まった。
「急に止まらないで!」
リリィは、止まろうとするが間に合わない。
ドーン!
モックにリリィとドンキーがぶつかってしまった。
3人とも目が回って気絶している。
「ちょっと!リリィ、大丈夫?」
フィーネが心配して駆け寄る。
リリィが目を覚ました。
「うーん……大丈夫。それより、モックとドンキーは?」
モックとドンキーも動き出した。大丈夫そうだ。
「大丈夫キキー。」
「ごめんキー。」
モックの様子が何かおかしい。
「モック、どうしたの?元気ないよ。」
リリィが聞くと、モックが叫んだ。
「追いかけっこ以外の遊びがしたいキーーーー!!!!」
モックの叫びは遠くウエス山まで届いた。
「追いかけっこ以外の遊び?」
フィーネが聞く。
「もう、追いかけっこは、飽きたキー!違う遊びがしたいキー!」
「そうは言っても、他の遊びなんてないよ。」
リリィが言う。
「仕方ないわね。私が何とかするわ。」
フィーネが何か思いついたようだ。
「ちょうど、露天風呂の反対側の土地が開いてるから、ここに作りましょう。」
フィーネは何か作るつもりのようだ。
両手をかざすと、材木や石、砂などが飛んできて、何かが組み上げられていく。
リリィとモックとドンキーは、ワクワクしながらそれを見ている。
「よし、出来た。公園の完成よ!」
リリィたちの目の前には、ブランコやシーソー、鉄棒に砂場、簡単なフィールドアスレチックコースまで、見事な公園が出来上がっていた。
「凄い!公園だ!」
リリィの目がキラキラしている。
「公園ってなんだキー!」
「キキー!」
「ブランコやシーソーを使って遊ぶのよ。遊び方は、リリィ、知ってるわよね?」
「もちろん、知ってるわ!懐かしい!嬉しい!」
早速、リリィたちは、公園で遊び始めた。
「これでしばらくは安泰ね。」
フィーネは、そういうと、ロッキングチェアに戻って、紅茶を一口すすった。
「公園とは、考えたな。フィーネ。」
イブが感心して言う。
「伊達に99回も転生してないからね。」
フィーネは自慢げだ。
フィーネたちの暮らしが充実してきていたそのころ。
森の中を動く2つの影があった。
ゲンブとホウオウだ。
「スザクに揺さぶりをかけるって、どうするんだ?」
ゲンブが聞く。
「スザクと私にしかわからないことがあるんだよ。そこを攻める。」
ホウオウが答える。
「おーこわ。お姉さんは怖いねぇ。」
ゲンブが身震いする。
「スザクは必ず取り戻す。」
ホウオウはそういうと、速度を上げて走り出した。
「待ってくれよ!」
ゲンブも後を追う。
そのころ、スザクは露天風呂を満喫していた。
「あー、気持ちいい!」
ガラガラガラ。
誰かが入ってきた。
スザクが振り向くと……
何とオルガだ!!
スザクは慌てて、露天風呂の奥に隠れた。
「な、なんでオルガが!?」
この時、スザクは気づいていなかったが、間違えて男湯に入ってしまっていたのだ。
そんなこととは知らず、オルガが湯船につかる。
「あー、生き返るな。これもフィーネさんのお陰だ。」
すでにタップリ湯船につかっているスザクは、のぼせていた。
「頭がクラクラする……でも我慢しなきゃ。」
朦朧とする頭で、スザクは何とか耐えていた。
そんな危機的状況とは露知らず。オルガは、すっかりのんびりしていた。
「本当に気持ちいい。帰りたくなくなるな。」
スザクはついに我慢が出来なくなった。視界がぐにゃりと歪み、世界が回りだした。ちょうどオルガからは陰になって見えない場所に上がろうとしたその時、足を滑らせた。
バッシャーン!!
オルガが驚いて音のした方を見る。
すると、誰かが溺れている!これは大変だと思い、オルガは走った。
そして、溺れている人を抱き上げた。
何か、すごく柔らかい感触がする。
顔を見ると……スザクだった。
「わー!!スザクさん!!大丈夫で、す、か!?」
と言った瞬間に、オルガの目はスザクの胸に釘付けになっていた。
ガラガラガラッ
「大丈夫!?」
フィーネとイブ、リリィたちが露天風呂に入ってきた瞬間。
オルガと目が合った。オルガはスザクを抱きかかえている(もちろん素っ裸で)
フィーネは顔を赤くして叫んだ。
「どうぞ!ごゆっくり!!」
バタン!
そして扉を閉めた。
「これは、違うんだ!フィーネさん!!」
オルガが叫ぶも後の祭り。
「何があったの?」
のぼせているスザクは状況がわかっていない。
その後、オルガは必死にフィーネの誤解を解いたのであった。
その夜。
「ねえ、オルガ。」
フィーネがオルガの方を向いて話しかける。
「あの、好きな人っているの?」
フィーネは顔を赤らめた。
「僕には、そういう人はいないな。大事な人はいるけど。」
オルガが答える。
「大事な人って、お母さん?」
「そうだね。母さんが一番大事な人だ。」
「そうか……」
フィーネは少しがっかりした。
「でも、大事にしたい人は他にもいるよ。」
「それって誰なの?」
フィーネが聞くと、オルガは顔を赤くして、
「森の中に住んでて、紅茶が好きで、面倒くさいが口癖のちょっと取っ付き辛い人。」
フィーネはオルガの目を見ていった。
「きっと、その人もオルガのことを大事にしたいって思ってるんじゃないかな?」
「そうだと良いな。」
オルガはそういうと紅茶を一口すすった。
「きっとそうよ。」
フィーネもそういうと、紅茶をすする。フィーネの胸が少しだけ苦しくなった。
空には、こぼれそうな程の数の星が瞬いている。
ちょっと甘くて、ほろ苦い夜だった。
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