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第5話 メイストーム
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綾佳の携帯に、最近は週末の恒例行事のように薫からメールが届いていた。
(今晩はボルシチにします。美味しいフランスパン入手済み。)それは、何時もの様に素っ気無い簡単な内容であったが、月に数回のそのメールを見ると何故かほっとした気持ちに成るように成っていた。年に一・二度、八景島の近くに在る薫が住む叔母の家に遊びに行っていた綾佳だったがここ数年仕事の忙しさもあってご無沙汰していた。そんな折、五月の嵐とも言える春先の温帯低気圧の異常発達で、都内が豪雨となり、交通機関が麻痺した。その日、たまたま原宿の近くに来ていた薫が帰るすべを無くしたとのことで、外苑の近くに住む綾佳へ叔母から救済要請があったのが発端だった。
原宿駅は、豪雨から非難した人達と電車の運休の影響でごった返していたが、幸いにも、薫の方から綾佳を見つけてくれた。綾佳は一瞬その若者が薫とは分からなかった。数年前に会った時は、坊主頭の中学生位という認識しかなく、目の前にいる、すらっと背の高く丹精な顔つきをした、ロングヘアーの一瞬女性とも見間違う人物に面食らっていた。
「え、薫ちゃん!見間違っちゃうわね。」
「はあ、暫くぶりですからね、それに、この身なりじゃ・・・今大学のサークルで演劇をかじってるんですよ。」
「はあ、それで・・・」
「何故か、僕が女形やらされていて。」綾佳には、薫の屈託の無い笑顔が眩しく見えていた。雨は小降りになっていたが、駅に来る途中でも小さな側溝や低い土地では水が溢れていた。綾佳は慎重にルートを選んで、駅までたどり着いたが、細かな道を知らない薫では、綾佳のマンションまで行くのは難しかったろうと思い起こしていた。外苑近くの綾佳のマンションは叔父が嘗て所有していたもので、都内で働く綾佳に都合が良かったので、そのまま借り受けてほぼ二年が経った。
「すいません、今日は迷惑掛けちゃって。」
「いいのよ、どうせ一人なんだから。」綾佳の一寸投げやりな言葉に
「あ、そうなんですか・・・司書て大変なんですね。」
「うん、仕事は忙しいけど、一人なのはそれだけのせいじゃないわ。私に魅力が無いからかな、女としての。」
薫がくすりと笑ってから
「あご免なさい、同じ様な事を言ってた奴の顔を思い出しちゃって。」
「あら、彼女?」
「うんーん、何だろう。一応は女ですね。外見は少年にしか見えないけど。まあそのうち紹介しますよ。それより、偶には家にも遊びにきて下さいよ。」
「そうね、暫くご無沙汰してるものね。今度の連休にでもおじゃましようかな。」
そんな会話が、久しぶりに会った薫との関係の始まりだった。その日以降、月に一二度のペースで薫は綾佳のマンションを訪ねては、手料理を作って一緒に食べると言った時間を過ごしていた。そんなペースが最近では、ほぼ毎週末になりかけていた頃、綾佳の心の中に穏やかな変化が現れてきていた。薫との週末は確かに、一人寂しくコンビニの夕食をだべる日々の中に華やかな彩りを作りだす一瞬だった。薫の料理はかなり本格的なもので、都度、綾佳の食欲も共に過ごす、楽しい会話を通しての穏やかな時間も、彼女の気持ちを満足させてくれていた。それはふと、従兄弟という枠を超えた存在として感じてしまう事に戸惑う事さえもあった。そんな時は、決まってあの嵐の夜の出会いを思い起こしていた。
二人して綾佳のマンションへ向かう道すがら、大通りでは、冠水した道路に行く手を阻まれた車が立ち往生し、呆然としてその状況を見ている運転手達や、店の前に何処からか持ってきた土嚢を積む人達、カッパを着て何やら楽しそうに歩き回っている子供を連れた親子、それぞれが普段とは違った状況に少なからぬ驚きと好奇をもって接していた。薫は少し重そうなリュックを背負い、綾佳の後を慎重に付いてきていた。
「Y公園の東ゲート近くに、僕らの演劇の練習場所を貸してくれる知り合いが居まして、今日は午後からそこで、練習してたんです。他の連中は、電車が運休になる前になんとか帰ったんですが、僕だけ取り残されてしまって。」
「へえ、どんな劇やってるの?」
「主にシェイクスピアです。今はマクベスに取りかかっています。」
「マクベスで女形て言うと、まさかマクベス夫人とか?」
「流石にそんな大役は無理です。魔女その四て所かな。ちなみに、その三がさっき言ってた変な女の子ですが。・・・綾姉(あやねい)は、西園寺家知ってます?」
「ええ、公園の東側にある豪邸て、まさかその変な女の子て西園寺家の娘さんとか?」
「そう、当たりです。」二人が、冠水した道路を避けて、マンションの前にたどり着いた時、薫の携帯が鳴った。取り出した携帯を見て
「ほう、噂をすればですね。」
例によって、その西園寺家の娘、由香は用件だけを薫に告げると、あっさりと電話を切ってしまった。薫は携帯を仕舞いながら
「明日は家に帰りたかったんだけどな。」独り言の様に言ってから、
「そのうちじゃなくて、明日にはお目に掛けられそうですね。その子、由香て言いまして、生まれつき心臓が悪かったんですが、去年手術したんですよ。結果的には、それで元気になったんですが・・・」薫の話は、綾佳の部屋にたどり着く事でとぎれてしまったまま
「あ、じゃーお風呂沸いてるから。」綾佳に促されるまま、風呂場に向かう薫に
「洗濯物はその籠に入れて置いて、一緒に洗っておくわ。」
「はあい、結構きつい練習だったんで汗かいちゃったんで助かります。」
綾佳の部屋は、前の持ち主(叔父)の趣味で少し変わった作りに成っていた。その一つに浴室があった。部屋のコーナー部分を利用した浴室は両面をガラス貼りの窓にしてあり、
湯船に浸かりながら夜景が楽しめる状況になっていた。湯船は丸形のジャグジー風で、三四人は入れそうな大きな湯船だった。風呂を出るとTシャツとジャージ姿の薫が、リビングに行くと、小さなバーカウンターがあり、綾佳はそこから水を持ってきてくれた。
「なんか凄い部屋ですね。」
「うん、叔父の趣味で改造したらしいんだけど、女一人で住むには一寸使い憎いわね。」
「お風呂なんか、とんでも無く広いし、誰か一緒に入ったりします。」
「ふーん、今度薫ちゃんと一緒に入ろうかな。」綾佳が笑いながら言うと
「ええ、良いですよ。慣れてますから。」薫の唐突な反応に、綾佳が少し面食らうと
「ああ、冗談ですよ。」
「あ、しまったわね、先に一本取られたか。」
その日の夜は、綾佳のパスタ料理で夕食を取った。薫が翌日の予定を綾佳に話すと、
「え、何でそんな所に行かなきゃ成らないの?」
「何故て、言われると困るんですが、由香しか分からない事なんで。まあある種の予知能力とかですかね。」そんな四方山話をしながら就寝した。
(今晩はボルシチにします。美味しいフランスパン入手済み。)それは、何時もの様に素っ気無い簡単な内容であったが、月に数回のそのメールを見ると何故かほっとした気持ちに成るように成っていた。年に一・二度、八景島の近くに在る薫が住む叔母の家に遊びに行っていた綾佳だったがここ数年仕事の忙しさもあってご無沙汰していた。そんな折、五月の嵐とも言える春先の温帯低気圧の異常発達で、都内が豪雨となり、交通機関が麻痺した。その日、たまたま原宿の近くに来ていた薫が帰るすべを無くしたとのことで、外苑の近くに住む綾佳へ叔母から救済要請があったのが発端だった。
原宿駅は、豪雨から非難した人達と電車の運休の影響でごった返していたが、幸いにも、薫の方から綾佳を見つけてくれた。綾佳は一瞬その若者が薫とは分からなかった。数年前に会った時は、坊主頭の中学生位という認識しかなく、目の前にいる、すらっと背の高く丹精な顔つきをした、ロングヘアーの一瞬女性とも見間違う人物に面食らっていた。
「え、薫ちゃん!見間違っちゃうわね。」
「はあ、暫くぶりですからね、それに、この身なりじゃ・・・今大学のサークルで演劇をかじってるんですよ。」
「はあ、それで・・・」
「何故か、僕が女形やらされていて。」綾佳には、薫の屈託の無い笑顔が眩しく見えていた。雨は小降りになっていたが、駅に来る途中でも小さな側溝や低い土地では水が溢れていた。綾佳は慎重にルートを選んで、駅までたどり着いたが、細かな道を知らない薫では、綾佳のマンションまで行くのは難しかったろうと思い起こしていた。外苑近くの綾佳のマンションは叔父が嘗て所有していたもので、都内で働く綾佳に都合が良かったので、そのまま借り受けてほぼ二年が経った。
「すいません、今日は迷惑掛けちゃって。」
「いいのよ、どうせ一人なんだから。」綾佳の一寸投げやりな言葉に
「あ、そうなんですか・・・司書て大変なんですね。」
「うん、仕事は忙しいけど、一人なのはそれだけのせいじゃないわ。私に魅力が無いからかな、女としての。」
薫がくすりと笑ってから
「あご免なさい、同じ様な事を言ってた奴の顔を思い出しちゃって。」
「あら、彼女?」
「うんーん、何だろう。一応は女ですね。外見は少年にしか見えないけど。まあそのうち紹介しますよ。それより、偶には家にも遊びにきて下さいよ。」
「そうね、暫くご無沙汰してるものね。今度の連休にでもおじゃましようかな。」
そんな会話が、久しぶりに会った薫との関係の始まりだった。その日以降、月に一二度のペースで薫は綾佳のマンションを訪ねては、手料理を作って一緒に食べると言った時間を過ごしていた。そんなペースが最近では、ほぼ毎週末になりかけていた頃、綾佳の心の中に穏やかな変化が現れてきていた。薫との週末は確かに、一人寂しくコンビニの夕食をだべる日々の中に華やかな彩りを作りだす一瞬だった。薫の料理はかなり本格的なもので、都度、綾佳の食欲も共に過ごす、楽しい会話を通しての穏やかな時間も、彼女の気持ちを満足させてくれていた。それはふと、従兄弟という枠を超えた存在として感じてしまう事に戸惑う事さえもあった。そんな時は、決まってあの嵐の夜の出会いを思い起こしていた。
二人して綾佳のマンションへ向かう道すがら、大通りでは、冠水した道路に行く手を阻まれた車が立ち往生し、呆然としてその状況を見ている運転手達や、店の前に何処からか持ってきた土嚢を積む人達、カッパを着て何やら楽しそうに歩き回っている子供を連れた親子、それぞれが普段とは違った状況に少なからぬ驚きと好奇をもって接していた。薫は少し重そうなリュックを背負い、綾佳の後を慎重に付いてきていた。
「Y公園の東ゲート近くに、僕らの演劇の練習場所を貸してくれる知り合いが居まして、今日は午後からそこで、練習してたんです。他の連中は、電車が運休になる前になんとか帰ったんですが、僕だけ取り残されてしまって。」
「へえ、どんな劇やってるの?」
「主にシェイクスピアです。今はマクベスに取りかかっています。」
「マクベスで女形て言うと、まさかマクベス夫人とか?」
「流石にそんな大役は無理です。魔女その四て所かな。ちなみに、その三がさっき言ってた変な女の子ですが。・・・綾姉(あやねい)は、西園寺家知ってます?」
「ええ、公園の東側にある豪邸て、まさかその変な女の子て西園寺家の娘さんとか?」
「そう、当たりです。」二人が、冠水した道路を避けて、マンションの前にたどり着いた時、薫の携帯が鳴った。取り出した携帯を見て
「ほう、噂をすればですね。」
例によって、その西園寺家の娘、由香は用件だけを薫に告げると、あっさりと電話を切ってしまった。薫は携帯を仕舞いながら
「明日は家に帰りたかったんだけどな。」独り言の様に言ってから、
「そのうちじゃなくて、明日にはお目に掛けられそうですね。その子、由香て言いまして、生まれつき心臓が悪かったんですが、去年手術したんですよ。結果的には、それで元気になったんですが・・・」薫の話は、綾佳の部屋にたどり着く事でとぎれてしまったまま
「あ、じゃーお風呂沸いてるから。」綾佳に促されるまま、風呂場に向かう薫に
「洗濯物はその籠に入れて置いて、一緒に洗っておくわ。」
「はあい、結構きつい練習だったんで汗かいちゃったんで助かります。」
綾佳の部屋は、前の持ち主(叔父)の趣味で少し変わった作りに成っていた。その一つに浴室があった。部屋のコーナー部分を利用した浴室は両面をガラス貼りの窓にしてあり、
湯船に浸かりながら夜景が楽しめる状況になっていた。湯船は丸形のジャグジー風で、三四人は入れそうな大きな湯船だった。風呂を出るとTシャツとジャージ姿の薫が、リビングに行くと、小さなバーカウンターがあり、綾佳はそこから水を持ってきてくれた。
「なんか凄い部屋ですね。」
「うん、叔父の趣味で改造したらしいんだけど、女一人で住むには一寸使い憎いわね。」
「お風呂なんか、とんでも無く広いし、誰か一緒に入ったりします。」
「ふーん、今度薫ちゃんと一緒に入ろうかな。」綾佳が笑いながら言うと
「ええ、良いですよ。慣れてますから。」薫の唐突な反応に、綾佳が少し面食らうと
「ああ、冗談ですよ。」
「あ、しまったわね、先に一本取られたか。」
その日の夜は、綾佳のパスタ料理で夕食を取った。薫が翌日の予定を綾佳に話すと、
「え、何でそんな所に行かなきゃ成らないの?」
「何故て、言われると困るんですが、由香しか分からない事なんで。まあある種の予知能力とかですかね。」そんな四方山話をしながら就寝した。
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