眠れない夜に

弥生

文字の大きさ
上 下
10 / 11

降りつけるは

しおりを挟む
空から小さな欠片が舞い降りてくる


ひらひらと舞い散るそれらは

存在感を示しながら私を埋め尽くす



手を伸ばすと飛び込むように欠片が舞い降りる


きらめくようで

淀んでいるようで

温かいようで


でも冷たい



これを持って帰ろうか



私の宝物の中に大事にしまっておこうか



もろい引き出しに無造作にしまおうか



ゴミ箱に捨ててしまおうか




それは自分しだい



今は何色もまとわず灰のように霞んでいる



これから先輝いてくれるのだろうか




それは分からない


今の私では分からない




分からないけれど、


同じような灰がある日煌めきだしたことを知っている


霞んで忘れ去っていたのに


ある日ゴミ箱の中から主張してきたのを知っている




ならば


きっと意味があるのだろう




きっと無駄ではないのだろう




今の私には届かなくて分からない言葉だけれど


きっときっと


いつかの私や



ある日のどうしようもない



想像もつかない私には



きっと意味をなすのだろう






それまで少しずつ降り積もり



気づかずに蓄積し



見えていなくても




それは確かに私の中に入ってきて



きっとどこかでひっそりと息をしている




余力は力だって



無駄な研究がどれだけできるかが力だって






じゃあきっと分からない言葉の積み重ねも



理解できない感情も




いつか何かで役にたつかもしれないし


たたないかもしれない




その余地を抱えて生きることが


私を救うって




そう信じて




今日も無為に灰をつもらせる



少しずつ整理して忘れ去ってしまっても大丈夫


一度入ってきたものは簡単には消えない


きっと確実に消え去ることはない






しおりを挟む

処理中です...