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8「野球部」
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「おお!アオじゃないか!どうしたんだ、こんな時間に」
アオが駅に向かおうと歩き出した所で、大きな声に呼び止められた。
声の方を見ると、トキオが近付いてきている。
「ラーメン食べてたんだよ。トキオはどうしたの?」
「部活で遅くなったんだけどよ、電車が止まってて、歩いて帰ってきたんだ」
電車が動いていないのは、水城マキの『家出』の影響だろう。
「野球部だっけ?遅い時間まで頑張るね」
「もうすぐ俺らも二年になって、一年入ってくるからな。それまでに、上手くなっときたいんだよ」
「威張るため?」
「ちげーよ!レギュラーが取って、一年野郎に舐められないためだ!」
トキオはガッツポーズを作って見せるが、アオ的には何も違う事は無さそうだった。
「アオもこの機会に、野球部入らねーか?」
「どの機会だよ。微妙過ぎる時期じゃないか」
「アオは運動神経いいし、授業のソフトボールとかでも大活躍だったじゃねーか」
「野球は好きだから、個人的にはやってたんだよ」
アオは野球は嫌いではなく、今でも庭で素振りをする事もある。ただアオは野球を行う環境や、歪んだ状況に従う事しか考えない人種が嫌いだった。
感動やら青春とやらで、それを良しとする社会も。
「?なら、なんで野球部入らなかったんだ?中学も入ってなかったんだろ?」
「中学で部活に入ったけど、練習ばかりで野球できないし、一年の夏で辞めた。俺、野球は好きだけど、野球の練習が好きな訳じゃないんだよ」
「嘘だろ!練習こそ全てじゃないか!きつい練習をやり切った奴が、努力の末に試合に出られるんだ!試合はおまけみたいなものだ」
「それ本末転倒してない?野球が好きで部活に入ってるのに、練習では野球は出来ない。練習試合に出れるのは、試合もせず練習を続けた奴だけ。甲子園目指すならそれでいいだろうけど、純粋に野球がやりたいなら同好会作って、近所の公園で草野球大会やるのが一番じゃない?外国の部活とかだと、練習終わったら皆でストリート試合するらしいし」
「う~ん……よく分からないけど、練習しないと試合に出れねーし、草野球とかやってる暇ねーよ」
「まあ練習好きは否定しないけど。コツコツ関係ない事続けられるのは偉いとは思う」
「だろ!アオも分かってんじゃねーか」
トキオは皮肉には気付かず、得意気にアオを見下す。
「所で、アオちょっといいか?」
「話?」
「そ!アカネの事なんだけどな、やっぱ俺の告白強引じゃなかった?」
「強引でしょ。最低だと思うよ」
「やっぱそうかな。でも、我慢できなくてさ!」
「動物じゃないんだから……」
「でも、ああでもしなきゃ、アカネと恋人同士に成れてなかったと思うし、やっぱあれでよかったと思うんだ!」
話の通じなさに、アオは強い頭痛を覚えた。
「は?成ってないでしょ、恋人」
「妬くな、妬くなって!」
「告白の答え聞いてないでしょ……今日もアカネから文句のメッセージ入ってたし。明日のダブルデートどうしよう的な」
「そうだよ!明日だよ、デート」
トキオは都合のいい情報しか拾えない様子。
アオも乗り気で、この話題を出したと思っているらしかった。
「あの店でラーメン食いながら、デートのプラン練ろうぜ」
「俺が今、あのラーメン屋から出て来たの見てなかった?なんで同じラーメン屋に入ろうとするのさ」
「いいから、行こうぜ」
「……引っ張らないでよ」
トキオはアオの腕を掴み、問答無用でラーメン屋に入っていく。
「こんばんは~。大将!二人行ける?」
「ああ、もう入っちゃったし。チェーン店だから、大将居ないし」
アオの抗議も虚しく、トキオは2人分のチャーシューメンを注文して席に着いてしまう。こうなってしまうと、逃げるのは困難だ。アオは店員を呼ぶと、自棄気味に餃子を追加した。
この後、散々トキオの独白を聞かされ、駅に着いたのは警察の撤収も終わった後。スイに殴り飛ばされたのは言うまでも無い。
アオが駅に向かおうと歩き出した所で、大きな声に呼び止められた。
声の方を見ると、トキオが近付いてきている。
「ラーメン食べてたんだよ。トキオはどうしたの?」
「部活で遅くなったんだけどよ、電車が止まってて、歩いて帰ってきたんだ」
電車が動いていないのは、水城マキの『家出』の影響だろう。
「野球部だっけ?遅い時間まで頑張るね」
「もうすぐ俺らも二年になって、一年入ってくるからな。それまでに、上手くなっときたいんだよ」
「威張るため?」
「ちげーよ!レギュラーが取って、一年野郎に舐められないためだ!」
トキオはガッツポーズを作って見せるが、アオ的には何も違う事は無さそうだった。
「アオもこの機会に、野球部入らねーか?」
「どの機会だよ。微妙過ぎる時期じゃないか」
「アオは運動神経いいし、授業のソフトボールとかでも大活躍だったじゃねーか」
「野球は好きだから、個人的にはやってたんだよ」
アオは野球は嫌いではなく、今でも庭で素振りをする事もある。ただアオは野球を行う環境や、歪んだ状況に従う事しか考えない人種が嫌いだった。
感動やら青春とやらで、それを良しとする社会も。
「?なら、なんで野球部入らなかったんだ?中学も入ってなかったんだろ?」
「中学で部活に入ったけど、練習ばかりで野球できないし、一年の夏で辞めた。俺、野球は好きだけど、野球の練習が好きな訳じゃないんだよ」
「嘘だろ!練習こそ全てじゃないか!きつい練習をやり切った奴が、努力の末に試合に出られるんだ!試合はおまけみたいなものだ」
「それ本末転倒してない?野球が好きで部活に入ってるのに、練習では野球は出来ない。練習試合に出れるのは、試合もせず練習を続けた奴だけ。甲子園目指すならそれでいいだろうけど、純粋に野球がやりたいなら同好会作って、近所の公園で草野球大会やるのが一番じゃない?外国の部活とかだと、練習終わったら皆でストリート試合するらしいし」
「う~ん……よく分からないけど、練習しないと試合に出れねーし、草野球とかやってる暇ねーよ」
「まあ練習好きは否定しないけど。コツコツ関係ない事続けられるのは偉いとは思う」
「だろ!アオも分かってんじゃねーか」
トキオは皮肉には気付かず、得意気にアオを見下す。
「所で、アオちょっといいか?」
「話?」
「そ!アカネの事なんだけどな、やっぱ俺の告白強引じゃなかった?」
「強引でしょ。最低だと思うよ」
「やっぱそうかな。でも、我慢できなくてさ!」
「動物じゃないんだから……」
「でも、ああでもしなきゃ、アカネと恋人同士に成れてなかったと思うし、やっぱあれでよかったと思うんだ!」
話の通じなさに、アオは強い頭痛を覚えた。
「は?成ってないでしょ、恋人」
「妬くな、妬くなって!」
「告白の答え聞いてないでしょ……今日もアカネから文句のメッセージ入ってたし。明日のダブルデートどうしよう的な」
「そうだよ!明日だよ、デート」
トキオは都合のいい情報しか拾えない様子。
アオも乗り気で、この話題を出したと思っているらしかった。
「あの店でラーメン食いながら、デートのプラン練ろうぜ」
「俺が今、あのラーメン屋から出て来たの見てなかった?なんで同じラーメン屋に入ろうとするのさ」
「いいから、行こうぜ」
「……引っ張らないでよ」
トキオはアオの腕を掴み、問答無用でラーメン屋に入っていく。
「こんばんは~。大将!二人行ける?」
「ああ、もう入っちゃったし。チェーン店だから、大将居ないし」
アオの抗議も虚しく、トキオは2人分のチャーシューメンを注文して席に着いてしまう。こうなってしまうと、逃げるのは困難だ。アオは店員を呼ぶと、自棄気味に餃子を追加した。
この後、散々トキオの独白を聞かされ、駅に着いたのは警察の撤収も終わった後。スイに殴り飛ばされたのは言うまでも無い。
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