転生したけどレア度N!?ディレイ「遅くなる(対象:自分)」しか使えない件

月猫ひろ

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どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?
「ケイジ……ケイジくんが死んだ?」
トウタの脳内で、意味の無い台詞が駆け回る。
だって、死んだのだ。同じクラスで、席の近い男の子が。
「……」
なんて実の無い疑問。
だってやることなんて決まっている。いや、出来ることなんて、ありはしない。
「逃げ―――――――――
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて
「うぐっ……!!」
氾濫する情報が、喉を詰まらせる。
圧迫する吐瀉物に混ざり、目の前を暗く汚していった。
「トウタくん、どうし……」
ユリアはトウタに駆け寄ろうとして、状況を察した。
崖の上の騒ぎに唇を噛むと、トウタの首根っこを掴んで無理矢理立たせる。
「逃げるわよ!」
「で、でも……」
「反論もないのに、口を開かないで」
ユリアは、トウタの手を引いて走り出す。
逃げるとはどこに?
「ここじゃなければ、どこでもいいから!」
ユリアはトウタを引き摺るように、山の麓を目指した。
「追ってくる……!」
「なによ、それ!?」
振り返ると、ケイジの頭を潰した化け物が、空を飛んで向かって来ていた。
「きゃ!」
点だと思った影は、瞬きの間に眼前に肉薄す。
トウタは、反射的にユリアを突き飛ばしていた。
「うわあああ!」
化け物は空中から襲い掛かり、鋭い爪でトウタを切り裂いた。
「あ……あ……」
吹き飛ばされ、地面に背中を打ち付る。
慌てて自信を言確認すると、胸当てがあっけなく引き裂かれていた。
『防具が無かったら、自分もケイジの様に弾け飛んでいた』
そんな確信が、トウタの足を鉛のように重くした。
ギャアアアアア
「あ……ぅ……」
咆哮を上げ、トウタの眼前に降り立つは、身の丈3メートル程の化け物。
炎の瞳を燃やし、トウタに突撃を仕掛ける。
「『コンセントレート』!!」
トウタが腰砕けでいると、ユリアがスキルを唱えた。
ユリアのスキルにより、化け物の進路に、空気やチリが急速に集まっていく。
「なにこれ、使い難い!」
いつものキャラと違って口が悪いユリアは、思わず自分のスキルに文句を吐き出す。
ユリアは自分の指輪に触れると、更なるスキルを発動した。
「『着火』!」
ユリアが叫ぶと、周囲一帯に轟音が響き渡った。
トウタはバランスを崩しつつも、巻き起こる爆煙から身を逃れる。
「すご……」
「ちょっと!行くわよ!」
呆けるトウタの肩を叩き、ユリアは麓の方に走っていく。
「う、うん……」
巻き上がる粉塵にせき込みながら、トウタはユリアの後を追おうとする。
けれど濃い煙の奥で、揺らめく光を見付けてしまった。
「危ない…!」
化け物の口から、強烈な光線が吐き出される。
高熱の閃光は、ユリアの頭を正確に捉えている。
「ぐあああ!!」
トウタは反射的に腕を伸ばし、吐き出されたビームの中に腕を突っ込んだ。
ビームの重さと熱さに、腕を持っていかれそうになる。
「トウタくん!?」
「逃げて!『ディレイ』!!」
スキルを唱えた瞬間、世界が不快に塗り替わる。
スキル発動中は相変わらず動けないが、ビームから腕を引き抜こうと力を入れ続ける。
「うわ……!」
スキルが切れた瞬間、勢い余ったトウタは地面を転がっていった。
「追撃、来るわよ!」
トウタがビームを遅くしている間に、ユリアは射線から外れたらしい。
スキルを発動しながら、トウタに警告を送る。
「く、来る……!!」
ギャアアア
化け物が叫びを上げながら、トウタへと迫る。
トウタは化け物の右爪を剣で防ぐが、剣はあっさりと弾き飛ばされてしまう。
「ぐ!」
剣を握っていた右腕が捥げたかと思った。
迫るは左爪での追撃。
トウタは腕をクロスにして、爪撃を防ぐ。が、車にぶつかった様な衝撃に、ゴム毬の様に弾き飛ばされてしまう。
「行かさないわよ、『コンセントレート』!!」
追撃せんと前屈みになった化け物を、ユリアの放つレーザーが捉える。しかし、攻撃はバリアによって防がれ、大したダメージを生み出さない。
「く…止まりなさいよ!『コンセントレート』!!」
ユリアは幾条もレーザーを撃ち続ける。しかし、化け物は進路を変え、バリアを展開したまま、ゆっくりとユリアに向かっていく。
(ユリアちゃんのスキルじゃ……攻撃は通らない?でも、さっきはもっと威力があった)
高威力の攻撃は、タメが必要なのだろうか?
見た所ユリアは、低威力のレーザーを放つことで精一杯だ。このまま攻撃を続けても、バリアを破れずに押し切られるか、体力が底をつくだろう。
かと言って、レーザーの照射を止めれば、たちまち距離を詰められることは明白だ。
(僕が……タメの時間を作るしかない……)
答えは明瞭だが、トウタは決意を躊躇った。
相手は3メートルの異形の化け物。空を飛び、ビームを撃つ人外。鋭い爪は力強く、鉄すらも簡単に引き裂くのだ。
殺される。
結果は明快だ。どうして戦うと決めることが出来るだろうか?
「ちょっと、トウタくん!早くディレイ掛けてよ!」
「は、はい!」
怖気付いていると、キレ気味の声に背を叩かれた。
「で、でも……僕のスキルは、敵に触ってないと使えないんだ……」
「じゃあ、触ってよ!」
「わ、分かりました……!」
至極真っ当に怒られて、トウタは習慣的に戦闘態勢に移る。
トウタが化け物に殴り掛かるのを確認して、ユリアはスキルを一度停止した。
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