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愛は変態を助長させる

2:僕とカッコいい真翔さん

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真翔さんは司法試験に合格してから
忙しそうだった。

僕は難しいことは
よくわからなかったけど、
弁護士になるには、司法試験に
合格しただけでは、ダメらしい。

法科⼤学院で学んで卒業して
試験に合格したのに。

これから、法律事務所とか裁判所とか。
とにかく難しそうなところで、
法律家になるため必要な研修を受けないとダメで、
1年後にまた資格試験があるんだって。

真翔さんは、物凄く頑張っている。

休みの日はできるかぎり
休んでもらいたいから、
僕は無理して会わなくてもいい、って
言うんだけれど。

でも真翔さんは僕にも会いたいって
言ってくれるから、僕は
工場の仕事を少しだけ減らした。

真翔さんのお休みに合わせて
休みを取るようにしたんだ。

真翔さんのお母さんも
僕と一緒の工場で働いているから
僕が休みを申請するときは
いつもついて来てくれる。

工場のおばちゃんたちも、
真翔さんのお母さんから
僕と真翔さんのことを
聞いていて、

「休みの日とか困ったら
何時でも言ってね。

変わってあげるよ?」

なんて声を掛けてくれる。

本当にみんな、
優しい人ばかりで
嬉しくなる。

今日も僕と真翔さんは
お休みの日だった。

でも外に出かけるのではなく
僕のアパートでのんびりしている。

このアパートは悠子ちゃんが
節約するために住んでいた場所で、
あまり…綺麗ではない。

築30年以上だし、
部屋の鍵も古いし、ちょっと狭い。

一人で住むなら良いけど、
真翔さんと一緒に居るようになって
手狭になってきた。

だから僕はここから
引っ越すことも考えている。

真翔さんに相談しようと
思ったけれど、
小さな一人用のこたつに
ちょこん、と大きな体で座る
真翔さんは可愛くて。

相談したら、きっと
真翔さんはすぐに

引っ越し先を探そう!って
張り切ってくれると思うから
言い出せずにいる。

引っ越ししたいと思うけど、
真翔さんの大きな体が
この部屋にやけに馴染んでる気がして。

なんだろう?

寂しい、かな。

引っ越すのが、僕は
寂しいんだ。

だってこの部屋は
悠子ちゃんの想い出の部屋で

真翔さんと一緒に
ご飯を食べたり、こたつで
一緒に寝ちゃったり。

色んな思い出がある部屋だから。


真翔さんは今、
僕の膝の上で寝ている。

この部屋に来て、
ゆっくりしてくださいね、って
言ったら、お茶を出す前に
膝枕して、って言われたんだ。

恥ずかしくなったら、
真翔さんは恥ずかしい?

って聞いてきた。

うん、って言うと、
真翔さんは嬉しそうに笑う。

真翔さんは、いつだって
僕が恥ずかしいって言うと
嬉しい、って言うんだ。

それすらも、恥ずかしい。

僕は結局、真翔さんに
膝枕をした。

真翔さんは疲れていたのか、
すぐに眠ってしまう。

僕は真翔さんが好きだっていうから
真翔さんと会うときは
スカートをはいていた。

真翔さんは僕の膝に
うつぶせになって寝ている。

そしたら…
真翔さんの熱い吐息が、
スカートの中にまで届いてしまって。

僕はまた、顔を熱くした。

真翔さんは意識してないと思うけど、
一緒に居ると、ちょっとだけ
真翔さんは、いやらしいこと…と
思うようなことをしてくる。

でもそれを僕は
拒否していいのか、
受け入れるべきなのか、わからない。

いやらしいこと、と僕が勝手に
思っているだけなのか、
『恋人』なら当たり前のことなのか。

僕は人間関係が苦手で、
友だちもいなかったし、
もちろん、誰かと付き合ったことも
好きになった人もいない。

だから真翔さんの
剥き出しの好意も、
こんな行動も、嬉しいけど
恥ずかしいし、戸惑うばかりだ。

僕も一応、結婚する男女が
どのようなことをするのか…

子どもの作り方は…知ってる。

小学校の性教育で学んだし。

でも、自分と真翔さんが
そんなことするなんて、
考えられない。

……嫌、じゃなくくて
恥ずかしすぎる。

それに僕はこの悠子ちゃんの…
女性の身体にもまだ、
戸惑うことがある。

真翔さんは僕と一緒に
女性の体に慣れていこうって、
調べてみよう、って言ってくれるけど
それって、物凄く恥ずかしいことだって
最近、気が付いた。

わからないなら、
触ったらいいんだよ、って言われて
真翔さんに素肌を触られたとき、
僕はもう、気を失いそうになった。

だって、真翔さんは
いやらしいことをしようと
していたわけじゃないんだ。

なのに僕のこの体は…
キモチイイって思ってしまって。

僕は真翔さんにしがみついた。

真翔さんは大丈夫、って
言ってくれたけど。

それ以降、僕は真翔さんに
触れられるたびに意識してしまう。

あのキモチイイが蘇るんだ。

僕の身体に真翔さんの指が入った時、
僕は怖くて泣いちゃったから、
真翔さんはそれ以上のことは
しなかったけど。

あれから、それ以上のことは
真翔さんはしてこないけど。

もし僕が泣かなかったら、
あの後、どなってたんだろう?って
たまに思う。

真翔さんはたまに
このアパートに泊って行くし、
いつも一緒に狭いベットで
ぎゅーって引っ付いて眠るけど。

でも、いやらしいことを
するような雰囲気にはならない。

僕ばかり意識してる気がする。

別にいやらしいことを
したいとか、思ってないけど。

僕はもともと
生きるのが精いっぱいだったから
性欲とか感じたことがない。

だから、初めてのキモチイイに
驚いて、引きずられてるのかもしれない。

このまま真翔さんと一緒に居たら
僕はどうなってしまうんだろう?

キモチイイしか、
考えられなくなったらどうしよう。

でも、これは真翔さんが
好きってことだともわかってるから。

僕は無理に感情を
押し殺したり、拒否はしないんだ。

キモチイイって思ったら、
素直に言って、って真翔さんは
言ってくれている。

だから僕は安心して
キモチイイって言える。

僕が素直になる度、
真翔さんは嬉しそうな顔をして
可愛い、大好き、愛してるって
僕に言ってくれる。

それが、嬉しい。

でも。
真翔さんと抱き合ってないのに、
いやらしいことを意識しちゃうのは
きっとダメ、だよね?

真翔さんの息が、
僕をドキドキさせる。

でも膝枕だから、
真翔さんが起きるまでは
じっとしておかなくっちゃ。

触って欲しいとか、
そういうのは、きっとダメだ。

いつも僕を甘やかしてくれるように、
僕が真翔さんを甘やかしてあげるんだ。






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