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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう
76:くまさんはすごいお兄ちゃん
しおりを挟む私はーー。
わんわん泣いて。
思っていることをバーナードにぶちまけた。
私の中に【器】があること。
ちゃんとメモリまで意識することが
できるようになってしまったこと。
ケインたちの命を救ったことは
後悔してないけれど、
その際に【器】から<愛>が
ごっそり無くなるのがわかったこと。
そしてケインたちに抱かれて、
また【器】が満たされていること。
自分がただの【器】で、
愛されることで【器】を満たし、
それを放出することで誰かを救う。
『減ったら補充して使う』
それは理解していたのに、
急にそのことが…生々しく感じて
怖くなったこと。
愛してくれることが嬉しくて、
甘えていたけれど…
結局は、女神ちゃんの【呪い】が
そうなるように仕向けただけではないかと
思ってしまったこと。
私が抱かれることで【器】が
満たされるなら
誰に抱かれても同じではないか。
それこそ、
【器】は誰でも良かったのではないか。
なら、自分は何のために
この世界に来たのかとーー。
思った途端、私の中にある【器】に
溜まった<愛>が減っていくのを感じたのだ。
ケインやエルヴィンに
抱かれることで得た<愛>が。
まるで【器】に穴があいてしまったように。
違う、って何度思っても、
<愛>はどんどん減っていく。
私は急に…
皆の<愛>が信じられなくなってしまった。
怖くなって。
違うって思うのに…
ヴァレリアンもカーティスも
スタンリーも。
ちゃんと私のことが好きだって、
わかってるのに…
ケインも、エルヴィンだって
ちゃんと…ちゃんと…
「ユウ」
バーナードに抱きしめられる。
あたたかい、大きな体。
「ちゃんと、愛する、とか
ちゃんと、好き、とか
俺は…違うと思うぞ」
「……違う?」
「あぁ、人の心は
誰にも縛れない…女神であっても」
バーナードの声は、
ゆっくり…私の心にしみていく。
「どんなに女神がユウを愛せと命じても、
俺はユウのことは大好きだが、
俺が愛するのは、幼馴染の婚約者だけだ。
同じように、ヴァレリアンたちも、
女神の思惑など関係なく、
ユウを愛したのだろう。
もしユウが不安になったのなら
それは、一緒にいる時間が
今は無いからだと思う。
そばにいて、声を聞いて、
触れて…そうやって、俺たちは
愛を育てていくし、
信頼も育てていく。
ユウはまだ出会ってからの時間が短い。
不安になっても当たり前だ。
しかも…信頼を育てる前に
あいつらに…激しく愛されたのだろう?
なら、そもそも信頼がまだ
十分に育ってないんだから
怖くなるのも当たり前なんだよ」
私はバーナードにしがみつく。
「バーナードも怖くなったことある?」
「そうだな。俺は…幼馴染だから
信頼とかは…もともとあったしな」
それでも、とバーナードは言う。
「友情が愛情になって、
初めて騎士の仕事で遠征に行ったときは
心配したし、不安だったぞ?
俺がいない間に、他のやつに
心を奪われないか、とか」
笑って言うバーナードは
ちっとも心配してなさそうな感じがする。
ーーー信頼。
相手を信じる、ってことか。
私は元の世界で、誰かを
信じたことがあっただろうか。
いや、お金しか信じてなかった。
だから、この世界でも、
口では信じてるとか言ってたくせに。
離れ離れになった途端、
急に不安になって、
与えてもらった<愛>が
信じられなくなった。
私は誰とでも交わって
<愛>を溜めるだけの存在で、
それは、わたしという
存在意義は必要のない、
ただの機械のようだと思った。
「ユウ、好きだよ」
とバーナードが優しく言ってくれる。
バーナードは私を愛さないという。
唯一の愛は、婚約者のものだから。
でも、バーナードは私のことが好きだから
こうして抱きしめてくれるし、
話も聞いてくれる。
身体を重ねなくても…わかる。
私の【器】にバーナードの<愛>が
染みわたっていくのを。
私は…愛されてる。
女神ちゃんの呪いも、
交わることも関係なく、
愛されているのだ。
その事実に、
私はとてつもなく癒された。
バーナードは私に何も求めていない。
身体を求めるわけでもなく、
私からの愛情を求めるわけでもない。
ただ、愛してくれている。
それだけだ。
ヴァレリアンたちに抱かれたときも、
身体だけじゃない、って
理解してたのに。
でも、もしかしたら…って
心のどこかで思っていた。
激しく体を求められ、
快感に震えるヴァレリアンたちを
見ているうちに、体を…
私の身体だけを
求められているのではないか、と。
快楽を追うためだけに、
私の身体を求めているのではないか、と。
そんなことを考えた。
しかも、ここは女神ちゃんの世界だ。
『激エロの金字塔』の世界なんだ。
だから、絶対にないとは言えない。
そんな不安が…
ヴァレリアンたちがいなくなって
急に膨れ上がった。
そしてその心の隙を突くように
ケインやエルヴィンたちの
治療で溜まっていた<愛>が無くなり、
皆のことを…世界を…<愛>を疑った。
だから…【器】に穴が開いたんだ。
<愛>を信じられないのに、
<愛>を溜める【器】など、できるはずがない。
バーナードは私を抱き上げて、
向かい合わせに座らせた。
こつん、と額をぶつけて…
瞳を覗き込んでくる。
バーナードは、私の【呪い】が
怖くないんだ。
「俺の言うことは、信じられないか?」
そう言われて、首を振る。
バーナードのことは、信じられる。
「そうか」
と笑ったバーナードの顔に
私も、笑った。
大好きって、思う。
私は…誰も信じてなかった。
一人で生きていくものだと思っていたから。
自分を信じてもらおう、とか
思ったこともない。
どうせ、私のことなど
誰も信じてくれないと思っていたから。
でも、違うんだ。
信じて欲しいのなら、
自分から誰かを信じないとダメなんだ。
愛してほしかったら、
自分から求めないと…
愛してもらえないんだ。
誰だって、見知らぬものを
いきなり愛することなど、できないのだから。
だから、一緒にいて、話をして、
触れ合って、信頼や愛を育てていくんだ。
当たり前のことなのに、
私は何もわかってなかった。
今私は。
ヴァレリアンたちに
激しい<愛>を教えてもらったばかり。
まだきちんと、愛情や信頼を
育てている途中だったんだ。
だから不安になって当たり前だし、
怖くなっても…いいんだ。
私は…誰かと信頼関係なんて
築いたことがなかったから、
そんな簡単なことも、わからない。
でも、バーナードのそばにいたら、
もっとわかるかな?
バーナードなら、教えてくれるかな?
もっと…いろんなこと。
生きていくのに必要なこと。
甘えて…こんなに甘えて、
私のことを嫌になったりしないかな?
おそるおそるバーナードの顔を見ると、
くしゃり、と髪を撫でられた。
「なんだ?」
って聞かれたから、
「甘えすぎて、ごめんなさい」と言う。
すると、バーナードは私の髪を
ぐしゃぐしゃ撫でた。
「そこは、ありがとう、だ。
ついでに言うと、俺はユウの兄だからな。
甘えられて嫌なことはない」
「……ないの?」
「そうだ。弟が兄に甘えるのは
当たり前だからな。
むしろ、甘えられないと悲しいだろう?」
そっか。
当たり前なんだ。
……そうだよね。
私も勇くんが社会人になるとき、
もう甘えて貰えないのかと思ったら
悲しくなったもん。
「当たり前…なんだ」
「そうだ。だから、もっと甘えろ」
と言われて。
本当に嬉しくなって。
「お兄ちゃん~~~っ」
って泣きついてしまった。
でもバーナードはいつまでも優しくて。
私は本当に…
この世界での出会いに心から感謝をした。
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