【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

文字の大きさ
124 / 208
章間<…if>

28:悪意<クリスSIDE>

しおりを挟む


 女神の愛し子が街に来たことは、
すぐにわかった。

何故なら、優秀な執事が
真っ黒いマントを着た旅行者が
街で騒いでいる、と報告に来たからだ。

しかも、その騒ぎを収めた人間が
金聖騎士団の身分証を持っていたと言えば、
間違いは無いだろう。

私は迎えを出した。

私の招待を断ることは
おそらくは無いだろう。

私は王家も神殿も嫌ってはいるが、
甥っ子や、カーティスたち、
幼いころに交友があった者たちまで
拒否しているわけではない。

ほどなくして現れた女神の愛し子を見て
私は、一瞬、あっけにとられた。

思っていたような人物ではなかったからだ。

どうみても、子どもだ。

甥っ子たちをたぶらかす、
妖艶な人間だとばかり思っていたが、
ただの子どもだった。

確かに綺麗な顔をしていたし、
可愛らしいと言えるだろう。

だが、それだけだ。

カーティスが甘やかしているのは
すぐに理解したが、私とカーティスの
話を聞く様子もなく、
目の前の菓子に夢中になる姿は
どうみても、ただの子どもにしかみえない。

そこで私は確信したのだ。

一応、カーティスの前だったので
ユウさま、と名前を呼んだが、
恐らくこの子どもは、名前を呼ぶ
価値もない存在だと思った。

金で親に売られたか、
雇われた孤児だろうと思った。

見栄えが良いので、
女神の愛し子の役割を押し付けられたのだろう。
そして、それがどういう役目かもしらず、
ただ、大人の思惑どおりに
踊らされているに違いない。

可哀そうにと、思わないわけではなかった。

だが、もしこの子どもが可哀そうで
救わねばならない存在だとしたら、
なぜこの子は救われて、
私の婚約者は助からなかったのか。

そんな思いに囚われた。

一番醜く、誰よりも<闇>の魔素を生み出す人間は
この私なのかもしれない。


私は女神の愛し子と話をするために
カーティスにお使いを頼んだ。

この街で<闇>の魔素を生み出す者がいる、と
情報を与えたのだ。

本当のことだ。
だからこそ、カーティスは本気で
調べるだろうし、それは1日で終わるような
ものではない。

そしてカーティスは、それを調べるために
可愛い子どもを連れて行くとは思えなかった。

そうして私は、女神の愛し子を
屋敷に招き入れたのだ。

子どもは…何も言わなかった。

だから、ムキになって
「女神はいない」と言わせたくなった。

なのに。

子どもは…私を見た。
そして言うのだ。

「女神がいないと言ったら
クリスさんは幸せになれますか?」と。

そんなこと、考えたことが無かった。

自分が幸せになるなど、
そんなことは望んではいない。

何がしたいのかと聞かれ、
女神に復讐したいと思ったが、
その女神すら存在しないのであれば、
私はいったい、どうしたら良いのだろうか。

結局、私はいたずらに
多くの人間をもて遊び、
殺してきた女神という虚構と
同じことをしているのではないか。

存在しない女神に救いを求める人間と、
できもしない<闇>を制御する方法を
追い求める私と。

いったい何が違うのだ?

私は…救われたいわけでは無い、のだ。

だが、わからない。

私は無性に、この子どもを傷つけたくなった。

無邪気な顔をして、
人の心をえぐる子どもの
歪んだ顔を見たくなった。

だから屋敷の奥の研究室に連れて行った。

研究内容を知れば、
人間の傲慢さや醜さを知り、
傷付くと思ったのだ。

だが、子どもはやはり子どもだった。

残酷な事実を伝えても、
その瞳は変わらなかった。

だから言ったのだ。
研究を手伝え、と。

女神の愛し子を名乗るのなら
それぐらいできるだろうと。

逃げるのなら、それでもいい。
逃がすつもりはないが、と
半ば脅すように伝えると、

子どもは私の意に反して
はっきりと言った。

「私は逃げません。
無理やり連れて行かれたくないので
丁寧に連れて行ってください」と。

さすがに驚いた。
こんなことを言うなんて、
状況が理解できないよほどのバカか
それとも、幼い子供か。

もしくは、度胸があるのか。

何にせよ、
自分が生きるか死ぬかも
わからないような場所に
連れ去られることを理解しているのに
丁寧に連れていけ、など
良く言えたものだ。

いや、理解していないのかもしれない。
子供と同じだ。

いや、見るからに
目の前の子どもは、子供だったが。

笑えて来た。

場違いな言葉に、久しぶりに笑った。

だが、ずっとこういうやりとりを
しているわけにはいかない。

だから一応、言っておいた。

「捕虜の癖にそんなことを言っていては
殺されるぞ」と。

だが子どもは、きょとんとする。

「クリスさんは私を殺しますか?」

それこそ、そんなことなど
全く思ってもいない瞳で、言う。

「いや、最初に言っただろう。
私は君を殺す気はない。
ただ、研究に協力して欲しいだけだ」

それは本心だ。
研究中に死んでしまうのは仕方がないが、
積極的に殺そうとは思ってはいない。

「協力できるかは、わかりません。
ですが、ここまで話を聞いて
何も知らなかったと言えるほど、
心臓も強くありません。

ですので、自分の目で
何がどうなっているのかを
確かめたいと思います」


その瞳は…子どもの目ではなかった。
決意の宿る瞳だった。

真っ黒い瞳が
私を責めているようにも思えた。

だから私は「いいだろう」と早口で応え、
子どもを馬に乗せた。

すでに準備はできている。

村に着くまで、
この不可思議な子どもを
観察するのも良いかもしれない。

私はふと、そんなことを思った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

【R18】兄弟の時間【BL】

BL
色々あってニートになった僕、斑鳩 鷹は当たり前だけど両親にめっちゃ将来を心配されまさかの離島暮らしを提案されてしまう。 待ってくれよ! アマゾンが当日配送されないとこなんて無理だし、アニメイトがない世界に住めるか!  斯くて僕は両親が改心すればと家出を決意したが行く宛はなく、行きついたさきはそいつの所だった。 「じゃぁ結婚しましょうか」 眼鏡の奥の琥珀の瞳が輝いて、思わず頷きそうになったけど僕はぐっと堪えた。 そんな僕を見て、そいつは優しく笑うと机に置かれた手を取って、また同じ言葉を言った。 「結婚しましょう、兄さん」 R18描写には※が付いてます。

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

処理中です...