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高等部とイケメンハーレム
84:お子ちゃまのわがまま
しおりを挟む公爵家に着くと
すでに俺たちが帰宅することを
知っていたのだろう。
使用人たちが出迎えてくれて、
俺たちはまず着替えることにした。
ヴィンセントは俺と遊ぶことが
多くなってから、公爵家の客間を
1つ、ヴィンセント用として
使ってもらっている。
つまりヴィンセントも
公爵家に着替えが置いてあり、
くつろぐことができるのだ。
夜会で何も食べれなかっただろうと
執事が配慮してくれていて
着替えが終わると俺たちは
食堂で軽い食事を取ることにした。
簡単なチキンを挟んだ
サンドイッチだったが、
俺は十分満足だったし、
ヴィンセントはサンドイッチ以外にも
薄く切った肉や、スープ、
サラダまで食べていた。
公爵家のシェフはヴィンセントが
食べる量はちゃんと知っているので
物足りないと言うことは無いと思う。
「ヴィー兄様、泊っていくよね?」
食事が終わり、
風呂にはいれとリタに言われたので
俺は慌ててヴィンセントに聞く。
俺が寝る支度をしている間に
帰ってしまうのではないかと心配したのだ。
「イクスぼっちゃま。
さすがに今日は夜会の後ですし
ヴィンセント様も……」
執事がためらうように
俺に進言する。
だが、いやだ。
「いや」と俺が言うと
様子を見ていた初老の家令が
俺の前に出てくる。
「イクス坊ちゃま。
坊ちゃまはもう、デビュタントを
立派に勤められたんですから
もう、子どもではないのですよ」
などと言う。
そうだ、俺はもう子どもではない。
だが、いやだ。
誰が何といっても今日は
ヴィンセントと一緒に寝るのだ。
「ダメ。
今日はヴィー兄様と一緒に寝る」
俺がきっぱり言うと、
家令は表情は変えなかったが
瞳が揺れた。
「ぼっちゃま。
今日はデビュタントの日。
これを機にヴィンセント様と
ご一緒に寝るのは卒業されてはいかがでしょうか」
なんでだよ。
ついこの前まで一緒に寝てたのに、
なんで急にダメなんだよ。
「いやっ。
今日はヴィー兄様と寝る。
寝るって決めたの」
子どもみたいだと思う。
唇を尖らせて、我が儘を主張して。
でも今日はダメだ。
1人でいたくないし、
ヴィンセントに甘えたい。
そうじゃないと、
心が潰れそうになる。
俺が必死に主張していると
ぽん、とヴィンセントの大きな手が
俺の頭に触れた。
「大丈夫だ。
寝かしつけるだけだから心配はない」
何だよ寝かしつけって。
子どもじゃないぞ。
いや、今は子どもみたいになっているが。
「ですが、ぼっちゃまも
16歳となり、デビュタントも
無事にお済みになりました。
いつまでも子どもの頃と
同じというわけには……」
渋る家令に、俺はとうとう
『なんで?攻撃』をすることにした。
幼児がよくやるやつだ。
なんでだめなの?
なんで?
なんで?
とひたすら大人を攻撃するあれ。
俺もあれを前世で妹にされて
困ったことがある。
俺はヴィンセントの手を取り
家令を見上げた。
「なんでヴィー兄様と
一緒に寝たらだめなの?」
俺が聞くと家令は言葉を詰まらせる。
「この前は良かったのに、
今日はなんで?
初めての夜会だったから?
夜会に参加したら一緒に寝たらだめなの?」
うう、と俺の攻撃に
家令がひるむ。
「僕が今日、社交界にデビューしたから?
デビューしたらなんでダメなの?」
俺がさらに追い打ちをかけると、
ヴィンセントが俺の肩を引き寄せた。
「イクス、そんなに責めるんじゃない」
「だって」
「今日は一緒に寝よう。
約束したからな」
「うん!」
俺が大きく頷くと、
ヴィンセントは、ただし、と
言葉を続ける。
「一緒に寝るのは今日で最後だ」
「なんで?」
俺はまた、なんで? を言う。
ヴィンセントは苦笑して、
また俺の髪に触れた。
「イクスは社交界にデビューした」
「うん」
「つまり、成人の儀は迎えていないが
子どもでもない、ということだ」
「うん? まぁ、そう、かな?」
子どもでもないけど、大人でもないってことか?
「大人になってまで、
イクスは俺に添い寝してもらわないと
寝れないなんてことになったら
困るだろう?」
「……そんなの、ならないし」
俺が口を尖らせたら
ヴィンセントは声を出して笑った。
「だが、このままずっと
俺と寝るのに慣れてしまったら
大人になった時、困るのは
イクスだぞ?
デビュタントを迎えた今日から
成人の儀まで、イクスは大人になる
準備期間だ。
焦って大人の真似をすることはないが
徐々に慣れて行く必要はある」
なるほど?
そんなものか?
「ヴィー兄様もそうやって
大人になる準備をしたの?」
「……ま、まぁな」
へぇ。
この世界ではそういうものなのかな。
兄が大人になる準備や
練習をしていたような記憶はないが
きっと俺には知らせないように
兄も頑張ってたのかもしれないな。
「わかった。
じゃあ、今日で最後にする」
俺が言うと、何故か家令が
ほっとしたような顔をした。
「では、ヴィンセント様のお部屋の
準備を調えてまいります。
ぼっちゃまもヴィンセント様も
先に湯をお使い下さい」
家令の言葉に、そばにいた
侍女や侍従が動き出した。
俺のそばにはリタが付き添う。
「じゃあ、ヴィー兄様あとでね」
俺はリタと一緒に風呂に向かった。
ヴィンセントの使っている客間にも
風呂はついているが、
部屋についている以外にも
公爵家には大きや浴場がある。
俺たち家族が入るのはもちろん、
時間帯は指定しているが、
公爵家に勤める使用人たちにも
大浴場の使用許可は出している。
ヴィンセントは公爵家に泊まる時は
いつも大浴場を使うので
侍女たちはきっとヴィンセントが
風呂に入っている間に
客間を整えるはずだ。
俺は自室に戻ると
リタの手を借りて部屋についている
風呂に入った。
小さなバスタブだが
足を伸ばせるだけの広さはあるし、
なにより、部屋についている浴槽は
猫足のバスタブなのだ。
なんかヨーロッパっぽくて
カッコイイ……と俺は思っている。
大浴場も気持ちが良いけれど
俺は猫足のバスタブが
気に入っていて、つい、
部屋の風呂に入ってしまうのだ。
だってさ。
前世で見た映画みたいで気分がいい。
というか、このバスタブを
見るたびに、前世妹に
自慢したい衝動に駆られてしまう。
俺はバスタブに浸かるまでは
基本的に一人だが、
バスタブに浸かると
リタがやってきて、
俺の髪を洗ってくれる。
さすがに体は一人で洗うが、
髪だけはバスタブに浸かったままで
リタに洗ってもらうのだ。
俺はリタが浴室から出た後、
身体を洗って外に出た。
すぐにリタがタオルを出してくれて
俺は柔らかい生地のパジャマを着る。
大きなワンピースみたいなパジャマで
ぶかぶかで布の中で体が
泳ぐような感じになる。
足もともスース―するが、
多少体が濡れていても、
空気が触れる面積が多いからだろうか。
あっという間に体が乾くので
俺はこのパジャマも気に入っていた。
俺がリタに水を貰い飲んでいると、
侍従が、客間の準備ができたと
俺を呼びに来た。
よし。
今日はヴィンセントに甘えまくってやる。
なんたって最後だからな。
クルトのことを消化できそうになくて
ヴィンセントに甘えたいと思っていたのに。
ヴィンセントと一緒に寝るのが
今日で最後だと分かった途端、
俺は現金なほど一緒に寝ることが
目的になってしまっていた。
でもいいのだ。
だって俺はヴィンセントに
甘えたい。
それだけなのだから。
これこそ子供の特権だ。
俺は自分では子どじゃないとか
前世の意識があるから
身体は子どもだが本当は大人だとか。
普段はそんなことを持っていたけれど、
でもやっぱり俺は子どもだ。
というか、
ヴィンセント限定で子どもになる。
これが「好き」ってことなのかな、って
俺はそんなことを考えて。
急に恥ずかしくなり、
慌てて部屋を飛び出した。
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