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高等部とイケメンハーレム
94:高等部
しおりを挟む学校に着くと、すぐにアキレスとは別れた。
護衛は教室には入れないが
ちゃんと待機する場所があるらしい。
高等部になると、
もう子どもではなくなるからか
男子も女子も侍従や護衛を連れて
学校に来る貴族も多いらしく
男性校舎も、女性校舎にも
待機場所も準備されているのだ。
俺が教室に着くと、
さっそくミゲルとヴァルターに
声を掛けられた。
「イクスもとうとう護衛持ちだね」
俺の隣に座っている
ミゲルが言う。
「イクスの護衛ってあれだろ。
本家のアキレスってやつ」
「ヴァル、知ってるの?」
「知ってるもなにも、
有名なやつだぞ。
ハーディマン侯爵家の
懐刀って呼ばれてるぐらいだ」
えぇ!
そんな人を俺の護衛なんかにして
大丈夫だろうか。
「すっげー強いらしいけど
絶対に騎士にはなりたくないとか言ってて、
奴隷堕ちしていたのを
ハーディマン侯爵に拾われたとか
元々は、王家の暗躍部隊にいたとか
色んな噂があるんだ」
「そ、そうなの」
つまり、そんな噂が出るぐらい
凄く強くて、凄い人ってことだよな。
俺、粗相のないように気を付けよう。
「それでイクスはこれからどうするの?」
俺がそんな決意をしていると
ミゲルが俺に聞いてきた。
「どうするって?」
「イクスはもうハーディマン侯爵家に
嫁ぐことが決まったんでしょ?」
「うん、たぶん」
何もなければ。
「学校に通うことは貴族の義務だけど
高等部に入ったら、卒業試験に
合格さえすれば、
もう学校に通わなくて良いんだよ」
「え? そうなの?」
「イクスは知らなかったのか?」
呆れたようにヴァルターが言う。
「俺もさ。
早く騎士団に入りたいし、
卒業を早めるかどうか
迷ってんだ」
「ええ!?
せっかく一緒に学校に通えてるのに?」
そんなに急いで大人にならなくても
良いんじゃないか?
「僕も……その、
エリオットさんが僕と早く
結婚したいから、
卒業を早めて欲しいって言われてて」
「えーっ。
やだやだ。
もっと二人と学生生活を楽しみたい!」
俺が力説すると
二人は顔を見合わせて笑った。
「そういうイクスが
一番早く卒業したりしてね」
エリオットがからかうように言う。
「そんなことない。
だって学校、楽しいし」
「まぁ、楽しいけどな。
でも早く大人になりたいって
気持ちもあるんだ」
ヴァルターの言葉に
俺は深く共感する。
思春期あるあるの一つだ。
前世では俺も思春期の頃は
早く大人になりたくて
仕方が無かった。
背伸びをして、
大人の真似事ばかりした。
でも、そんな必要なかったって
大人になったら理解できたんだよな。
前世では大人になりたくても
なれなかったけれど、
この世界では大人になりたかったら
大人になれる制度があるってことだ。
それは良いことかもしれないけれど
早まった決断になるかもしれない。
「でもでも。
早く大人にならなくても
僕たちは絶対に、いつか必ず
大人になっちゃうんだよ?
急がなくてもいいと思う。
それに、急いで大人に
ならなくて済むように
専攻に進むって道だってあるんだもの。
僕は早く卒業するより
専攻に進んで、もっともっと
勉強して、ゆっくり卒業したいんだ」
「イクスは勉強家だなぁ」
ヴァルターが呆れたように言うが
俺は勉強家でもなんでもない。
そりゃ、魔術の研究はしたいが
子どもの時間がどれだけ大事が
前世の記憶があるから
理解しているだけだ。
子どもの時間は貴重だ。
大人に守ってもらいながら
好きなことができる。
夢を見て、目標を持って
まっすぐに進むことができるんだ。
「ミゲルもヴァルも、
急いで大人にならないで、
僕と一緒に、ゆっくりでいいよ。
一緒にゆっくり大人になろう?
大人より子どもの方が絶対いいよ。
好きなことできるし、
嫌なことはしなくていいし、
沢山甘えられるし」
「それはイクスだけだと思うけど」
ミゲルの言葉に、
ヴァルターも、確かにそうだ、と笑う。
そうかな?
俺だけじゃないと思うけれど。
俺が反論しようとしたとき、
授業の開始のベルが鳴る。
俺たちは慌てて椅子に座り直した。
教室に担任の先生が入って来たが
すでに顔見知りの先生だ。
不安なことは何もない。
と思ったのに。
「入ってくれ」
担任教師の言葉の後、
廊下側から
深い緑色の髪をした
青年が教室に入って来た。
髪は長く、無造作に
後ろで1つに結んであり、
制服も少し着崩した感じで
シャツの一番上のボタンは外れている。
襟が着崩れているので、
首にある筈のタイも歪んでいたが、
何故か、そんな状態であっても
どことなく、気品のようなものが
感じられた。
何者だ?
「今日からこのクラスに
転校してきた留学生だ。
仲良くしてやってくれ」
担任の言葉の後、
青年は笑顔になった。
背は高くて、とても俺と
同い年には見えない
大人っぽい顔立ちだ。
美形というよりも、
男らしい顔立ちと言えばいいだろうか。
身体付きもしっかりしているし
鍛えているのだろうか。
制服の上からでも
筋肉があるのが見てわかるし、
ヴァルターと良い勝負かもしれない。
俺が転校生を観察していると
何故か青い瞳と目が合った。
あれ?
この青い瞳、どこかで見たような……?
それに、この深い緑色の髪も
誰かと一緒……?
首を傾げた俺に、
転校生は笑顔を見せた。
え?
俺に笑いかけた?
「俺はレオナルド・ジョーンズ。
名を聞いて分かるように
この国の隣にある
ウエールズ国の第二王子だ。
この国に、俺の愛する妹が
嫁ぐことになったので、
この国をより良く知るために
妹より一足早く
この国に来ることにした。
だが、王子と言っても
この国ではただの留学生だ。
気軽に接して欲しい。
よろしく頼む」
気さくな感じで言い、
王族とは思えない程
潔く頭を下げる。
好感を持つことができる動作だが、
ちょっと待て。
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兄のところに嫁に来る
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え?
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そんな話、全く聞いてないけど?
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そんなことってあるのか?
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もしそうでも俺はもう
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関係ないぞ!
……お俺の学生生活、
だ、だ、大丈夫だよな?
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