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高等部とイケメンハーレム
95:ふざけた転校生
しおりを挟むその日の学校は
初日だったために
授業は午前中で終わりになり
すぐに帰宅することができた。
俺はミゲルとヴァルターと別れて
馬車に向かったけれど
あの転校生のことが気になって仕方が無い。
「イクス様?
いかがされましたか?」
馬車の前で待っていた
アキレスが心配そうな顔をする。
「ううん、その……
今日、転校生が来てね」
話すつもりはなかったのに、
つい、口が滑った。
誰かに聞いて欲しかったのだ。
「転校生?
その者がイクス様に何か
失礼なことを?」
いやいや、違う。
そうではない。
というか、
言い方に気を付けなければ
こうなるのか。
今まで俺のことをよく知る者しか
俺のそばにいなかったから
気にしてなかったけれど、
今後は言葉や言い方も気を付けよう。
「そうじゃなくてね。
転校してきたのは
隣の国の第二王子で、
兄様の婚約者の兄だったんだ」
ほらな。
アキレスの顔が驚きに変わる。
アキレスも知らなかったんだ、
あの王子が転校してくることを。
「僕、兄様から何も
聞いてなかったし、
父様も何も言ってなかったから。
大丈夫かな、って思ったんだ」
本当に公爵家に何も言わずに
隣国の王家から転校生が
来たとなれば、
それは国家間の問題にもなる。
何のための外交だと言う
話にもなるし、
内密に来るなど、
この国をバカにしていると
そう捉えても仕方が無い。
まさか戦争に発展するとは
思わないが、兄の婚約が
無くなるぐらいは
想像の範囲内だ。
逆に、本当に第二王子が
隣国の王家にも、
この国の王家や公爵家に
黙って転校してきたとなっては
それも、大きな問題になる。
隣国の王子を迎えるのだから
この国にもそれなりの
準備が必要になるし、
第二王子の行動を
把握できていないと言う時点で
隣国の王家への不信感にも繋がってしまう。
どう転んでも、
あの第二王子の行動は良くない。
とにかくまずは父か兄に
急いでこの話をしなければ。
と、思っていたら
急に後ろから声を掛けられた。
振り返ると、その第二王子が
護衛らしき男性と一緒に立っている。
「挨拶が遅れて申し訳ない。
イクス殿だな。
俺はレオナルドだ。
未来の兄になるのだから
気軽にレオと呼んでくれ」
いやいやいや。
違うから。
そうじゃないから。
俺の表情を読んだのだろう。
護衛らしき男は
声なく首を振っている。
どうやらあの男は常識人らしい。
俺は仕方なく挨拶をした。
このまま隣国の王子を無視するなど
できるはずもない。
「イクス・パットレイです。
よろしくお願いします」
頭を下げると、
そんなに固くならなくていいと、
砕けた口調で言う。
どこかヴァルターを思い出してしまうが、
おそらく王太子ではないだろうし、
二番目というのは、こういう感じなのかもしれない。
俺も次男だが、こんな感じだし。
「それでイクス殿は……俺も、
イクスって呼んでいいか?
イクスはさ、
これから王宮に行くんだろ?
俺も連れて行ってくれないか」
俺は何一つ返事をしていないのに
名を呼び捨てにされている。
しかもなれなれしい。
そして何故、俺は
王宮に行くことになっている?
俺は公爵家に帰るのだが。
「俺、ここまで
辻馬車に乗って来たから
帰りの馬車が無くてさ。
ついでに泊まるところもないし、
とにかく王宮に行って
話をしようと思って」
言われている意味が分からない。
思わず護衛らしき男に
視線を向けたが、
男は、すい、と視線を外す。
俺は思わずこめかみを押さえる。
こいつ……何考えてんだ?
辻馬車?
留学してくるのに?
つまりは黙って国を出て
勝手にここに来たってことだよな?
「レオナルド殿下」
「レオでいいってば」
笑うレオナルドに、イラっとする。
「ではレオ。そこに座って」
「は? え?」
俺が馬車の前の芝生を
指さしたからレオだけでなく
アキレスも、護衛らしき男も
目を丸くした。
「いいから座れ。
自分が考えもなく動くことで
どれだけ周囲が迷惑するのか
じっくり教えてやる」
俺はレオの腕を掴み、
芝生の上に座らせた。
不敬?
こんなお子ちゃまに
そんなの関係ない。
俺だって我が儘を言うし、
ヴィンセントには甘える。
だが、それは甘えて良いって
わかってるから
我がまま言ったりしているだけだ。
不特定多数に迷惑をかけることは
無いように気を付けているし、
何より俺は公爵家と言う権力を
自分が持っていることを自覚している。
あの父に俺が泣きつけば
たいていのことは、なんとかなる。
それこそ、この国の国王陛下だって
俺の婚約話を諦めたぐらいだ。
だからこそ、わがままは
慎重に言わねばならない。
ましてや王子にもなれば、
俺以上に気を遣わねばならないだろう。
黙って出てきたのであれば
心配をかけるのはもちろん、
王子のそばについていた者は
おそらく処罰の対象になる。
護衛も、城の警備の者も。
お付きの侍従も侍女も。
もし王子が誘拐されたと判断されれば
その手引きをしたと思われ、
投獄される者、拷問される者も
出てくる可能性がある。
そして黙って国を出て
たどり着いた先は別の国だ。
この国の人間が王子をそそのかし
誘拐を企てたと思われたとしたら
国家間の問題になる。
「もしこれを機に戦争に発展したら
どう責任を取るつもりですか?
あなたの妹君と僕の兄が
破談になるぐらいで済めばいい。
ですが、ことは国家間の問題です。
自分が持つ権力に合う行動が
できないのであれば、
もし、それが考えられないと
言うのであれば、あなたは
王族であるべきではない」
ふざけんな!
戦争になったらヴィンセントが
真っ先に戦場に行くんだぞ!
ちょっと私情も挟んでいたが
俺は、こんこんと説教してやった。
俺の声を聞きつけた
ミゲルやヴァルター、
それ以外の生徒や教師たちが
俺の周囲を遠くから伺っていたが
それすらも見えないぐらい
俺は怒りに燃えていた。
レオナルドは俺の言葉を聞き、
だって、とか、しかし、とか
小さくつぶやいている。
「まだ自覚はないようですが。
間違いなく、あなたの行動は
あなたの国で、
あなたのそばにいた方々を
苦しめている筈です。
あなたのその軽率な行動で」
処刑者が出ていなければ良いのですが。
と俺が言った言葉に、
レオナルドは真っ青になり
俺の足にすがりついてきた。
「頼む!
俺を王宮に連れて行ってくれ!」
ようやく事の重要性に気が付いたようだ。
俺がアキレスに視線を向けると
アキレスはすぐに馬車を動かすように
御者に指示を出す。
公爵家の馬車は広い。
レオナルドと護衛を乗せても
十分の広さはある。
俺は後ろにいる護衛にも声を掛け
レオナルドにも馬車に乗るよう促した。
後日、俺は隣国の王子を
地面に座らせ這いつくばらせて
謝罪させていたツワモノだと
何故か恐れられるようになるのだが、
それはまた別の話だ。
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