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高等部とイケメンハーレム
114:イケメンハーレムの崩壊
しおりを挟む真っ暗な中、俺は目を開けた。
真っ暗だ。
そう思った時、小さく光るものが見えた。
そちらに視線を向けると、
その光はだんだん大きくなり、
眩しさに目を開けていられない。
一瞬、ぎゅっと目を閉じると、
すぐに何かの気配がする。
「ジュ?」
俺が目を開けると、
そこには聖樹事件の時に会った
小さい神様がいた。
いや、小さくはない。
あの時は小さかったが
今、目の前にいるのは
成長した?
巨大化した?
とにかく、普通の成人男性ぐらいの
身体の大きさの神様だった。
しかも、大きくて光り輝く
大きな椅子に尊大に座っている。
『久しぶりだな』
と上から目線で言われる。
神様だから上から目線でも構わないが
そもそも椅子が空中に、
俺の腰上ぐらいの場所で
浮いているので、
物理的にも俺は見下ろされていた。
「えっと、久しぶりです」
なにを言えばいいかわからず
とりあえず俺は返事をする。
『まぁ、座れ』
と言われたが俺には椅子が無い。
この真っ暗な床に座れと?
いいけど。
「うわっ」
俺は床に座るために
身をかがめたが、
腰を下ろそうとした瞬間、
俺の後ろに椅子が生まれた。
椅子にお尻が乗った形になる。
怪我をしたわけではないが
めちゃくちゃ驚いた。
心臓に悪い。
俺、いまだに病弱設定だし
こういうのは止めて欲しい。
本気で心臓止まったら困るから。
と、俺が考えていることは
相変わらずわかるのだろう。
神様は、そうか、とだけ言う。
だが、体調が悪かったので
椅子に座らせてもらえるのは助かった。
体の中のぐるぐるはだいぶ治ったが
疲労感が激しい。
『そのことだが』
いきなり神様が話し始める。
『どうも面倒なことになっていてな。
全部合わせてみることにした』
何が?
何を?
俺は首を傾げるしかない。
俺の戸惑う顔に気が付いたのだろう。
神様はゆっくりと口を開く。
神様の声は心地よいぐらいの
バリトンで、口調はゆっくりだった。
俺が理解しているのかを
確認しながら話を進めてくれる。
神様の座る豪華な椅子は俺が
眩しくない程度に光っていて
真っ暗な周囲を照らしてくれていた。
俺の座る椅子は、光って無いし
暗いから正確な色などわからないが
簡素な椅子だとは思う。
だって座っている部分に
クッションもないし。
まぁ、いいけど。
『わかるか?』
「あ、はい。まぁ、なんとなく」
俺がぼんやり聞いていると
確認するように聞かれた。
俺は慌てて返事をする。
神様の言葉を要約すると
こう言う内容になった。
あの聖樹事件から
この世界の魔力は、
俺の前世の世界の腐女子たちの
妄想力を魔力に変換して
なんとか安定することができた。
神様も小さな姿だったが、
元の大きさに戻ることもできたらしい。
あの世界の腐女子たちのパワーは
強大で、神様も大喜びだったらしい。
だが、ここ数年、ある特定の
腐女子の妄想が、イクスに集中するようになった。
そして他の腐女子たちのパワーは
この世界の魔力の源になっていくのに
その腐女子のパワーだけが俺だけに
注がれているらしい。
しかも、それば微々たるものならば
気にするまでもなかったが
そのパワーは誰よりも強く
大きいものだったらしい。
……わかる。
わかるぞ。
バカ妹のしわざだな。
イケメンハーレムとか総受けとか
そうやってはしゃいでいたうちは
バカ妹の妄想力はイクスと
その時の攻略対象に分散されていたが、
俺がバカ妹と接触したことで
バカ妹の妄想力は俺に一点集中する事態になった。
しかも俺がきちんと
魔力やスキルを使っていれば
何も問題はなかったが、
俺は学生だし、魔力をガンガン使うなんて
ことはまったくない。
スキルに関しても、
増えたとは思いつつ、
神殿で鑑定もしていないし、
鑑定したら鑑定したで
なにやら面倒なことが起きそうなので
自分に何ができるのかを
確かめようとは思わなかった。
そんな状態で、俺の身体は
バカ妹からの妄想パワーを
一心に受け取りながらも
一向に発散しないため
限界が来ていたらしい。
その状況に神様は
俺を心配して……ではなく、
俺のたまりにたまった『力』を
世界に還元していくために
俺を呼び出したらしい。
『そなた一人では
使いきれない『力』だ。
世界に還してもらっても
構わないだろう』
「それは構いませんが
どうすればいいのか俺にはさっぱり……」
俺のバカ妹に妄想を止めろと
言いに行きたいが、
何度も世界を行き来するのは
よくないだろうしな。
もっとも、俺が腐った妄想を
ヤメロ、と言ってあの妹が
止めるとは思えないし。
俺が言うと、神様は
『そのためにこれを授けよう』
と指先を振る。
と、俺の前に光る何かが現れた。
それを手に取ると、
ジュに預けていた例の
パズルゲームの設定集だった。
いや、違う。
確かに設定集だが、
俺が見た時よりも分厚くなってるし、
中身をめくってみると、
俺が見た時にはなかった
アキレスやレオナルドの設定も
本には描かれている。
「これは?」
『生きる者が別世界を何度も
渡るのは許可できないが、
その本ぐらいであれば構わない。
あの特定の女性のパワーを
それを使って和らげるのだ』
「やわらげる?」
『そなたも、体内にある『力』を
使うことになるので、
助かる筈だ』
「は……ぁ」
よくわからないが、とりあえず頷く。
『そしてそなたの手にした『力』も
スキルも、すべてを一つに
まとめておいた』
「1つに?」
どうやって? じゃないな。
まとめたらどうなるの? だ。
『好きなように『力』を使い
生きるがいい。
だが、そなたが安定せねば
世界も安定しない。
そこだけは気を付けよ』
言いたいことはわかるが、じゃあ、
どうやって安定すればいいんだ?
と思ったが。
『あとはアレに聞けばいい』
と神様の声がして
俺が、あ。と思った瞬間、
神様の姿が消え、
周囲が真っ暗になる。
アレに聞けばいい……?
きっとジュのことだな。
でもジュってば、
会話が苦手みたいなんだよな。
言葉で意思の疎通が
だいぶできるようになったけど、
基本的にはあまりしゃべらない。
いつも可愛く、にゃ、というだけだ。
きっと長い文が難しいんだろうな。
なんて考えていたら、
俺の頭の上に、ぽと、と何かが
落ちて来た。
頭に手を当てると
ジュが、にゃーん、と鳴く。
「迎えに来てくれたのか?」
俺が聞くと、ジュは
にゃ、と言ってパタパタと
羽を使って俺の肩に乗る。
「じゃあ、連れて帰ってくれるか?」
俺の言葉にジュが返事をして。
俺は自分の部屋に戻れると
思っていたのだが、
ジュが、にゃ!と言った瞬間、
目の前に現れたのは全く知らない場所だった。
……なんでだよ!
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