9 / 9
エピローグ
しおりを挟む
ジジジジジジジジジ…………
「あー、暑い。ほんとに冷房きいてんのかこの教室。…………つか、早いよな。あいつらがいなくなってもうすぐ1年か」
「なんか、あっという間よね。つい最近まで一緒に授業受けたり遊んだりしてた気がするのに」
「全くだー」
「遼、なんであんなことしたんかな。俺らと祭りで別れた後、神社で1人で……」
「……やっぱり、敦輝のこと相当ショックだったんじゃろうね。2人すごく仲良かったし」
「何が、明日行けたら行くだよ。端から行く気なかったんじゃねぇか」
「遼さ、普通に笑っとったよね、事故の後。学校でも、夏休み入ってうちら4人で遊びにいった時も」
「わたしたちに合わせて、無理しとったんかな」
「俺らはそれに気付けんかったってことか。…………くそっ」
「……ねぇ。来週の灯籠流し、2人の名前書こ。ちゃんと弔いたいけぇさ」
「もちろんやー」
「そうやな。それくらいしか、俺らにできることないし」
「うん。さ、そろそろ次の補習始まるよ。年明けの入試まであと半年もないんじゃけ頑張ろ」
「おー。あ、祈李。足元に何か落ちとるよー」
「え?ああこれ、家の鍵じゃん。よう落ちるな。ありがと仁奈」
「まだ真っ赤の鮫付いとん。マジで趣味悪」
「何回言うんや智士。うちは気に入ってんの。それにこれは、すごく大事なもんじゃけぇさ」
「そうなん」
「前に川で落とした時、ある人が必死になって拾ってくれたんよ。誰だったか覚えてないけど」
「通りすがりのイケメンにかー」
「えっ、それは…………まぁ、可能性的にはありかな」
「何ニヤけとん。きっも」
「もぉーいちいちあんたは!」
「わぉ、取っ組み合いだー。2人共仲ええですなー」
「「よくないっ!」」
「今年ももうそんな季節か……」
「何だよ、カレンダー見つめて。合コンの予定でも入ったか?」
「いや、あの町ではそろそろ灯籠流しがあるなって思って」
「灯籠流しね。確かお前、去年そんな記事書かなかったか。休暇先でネタになる出来事があったから特集やらせてくれって」
「うん。このページの『今年は若い犠牲者 ミタマサマの祟り?』っていう記事」
「まだ持ってたのか雑誌。その週だけ異様に売れ行き悪くて、編集長に当たり散らされてたよなお前」
「あったね。辞めたければ好きにしろって言われたっけ」
「それ実質クビ宣言だろ。おっかねぇなあの人は。それで、どんなしょうもない内容だったんだ。てか祟りとか呪いとか今時ウケねぇって。神社が自殺スポットってのは確かに変わってるけどよ」
「いやこれは明らかに異常なんだよ。僕が去年滞在中に遭遇した件だけを見ても、男子高校生が夜中に1人で御魂神社に向かってそこで亡くなったんだ。自分の首にアイスピックを突き刺して。凶器は数日前に自分で購入したらしい。この一連の行動やわざわざ場所と時間を選んだ点からして、何か儀式めいたものを感じないか」
「儀式ね。そうやってすぐオカルトっぽく結び付けようとするのが安直なんだよ」
「それだけじゃないって。過去50年間の御魂神社での死亡者について調べたんだけど、その全員がほぼ同じ日に自殺を図っていたんだ。それが毎年開かれる夏祭りの最終日。遺体発見が遅れた者については死亡推定時刻が定かではないけどね。しかもその死亡者達の共通点として挙げられるのが、亡くなる1か月前以内に親族あるいは親しい人物が事故や病気で亡くなっていたこと。さっき話した男子高校生に関しても、亡くなる3週間程前に彼と親しかった同級生が交通事故で死亡していた。みんな、まるで死者の後を追っていくように命を絶っていたんだ。これはもう人知を超えた現象、神様の祟りとしか言いようがないって」
「はいはい。長々と語ってくれて悪いが、俺はそういう話興味ないんでな。それに、読者にウケなかったってことはその程度の記事だったんだよ。まぁまた頑張れ」
「はぁ。辛辣なこと言うなぁ」
「長年の親友からのアドバイスだ。ありがたく受け取れ。さて、昼休終わりだ。今日こそ早めに終わって飲みに行くぞ」
「そうだね。このところずっと残業続きだったから、今日こそは」
「この漢字ドリルだるいわー。夏休みだからって量多すぎなんよ」
「よねー。来年中学生になったら宿題もっと大変になんのかな」
「自由研究ないだけいいでしょ。もうあれどーしよ。何か工作するにしてもたいぎーしさぁ」
「私はそれ兄ちゃんに手伝ってもらったけぇ終わったよ」
「ちょ、あーちゃん!そういう話は……」
「あっ……ご、ごめん、椿ちゃん」
「べつにええよ。もう1年たつし。母さんはたまにとなりのにぃの部屋で泣いとるけど、うちは整理ついたつもり。いつまでもグダグダしとったら、にぃ達におこられそうじゃもん」
「つっちゃん……しっかりしとるんね」
「その、つらかったらいつでも言いんさいよ。うちらみんな椿の味方じゃけぇね」
「うん。ありがと」
「はぁーぁ。それにしても終わらんね宿題。ごみポスターとかどうする?」
「言い方。確かにあれはたいぎーね。去年のやつ丸パクリしてもばれん気がする」
「いいねそれ。でももうとっくに捨てたよあんなん」
「うちまだとっとるよ。確かクローゼットに入れたはず。ちょっと待って」
「ここ探すん?手伝おうか」
「大丈夫。えっと…………あ、あった。…………ふはっ」
「どしたん、椿。そんな面白いポスターかいとったん?」
「……いや、ヘタくそやなぁって思ってさ」
タン…………タン…………タン…………タン…………
長い石階段。
脇に並ぶ石灯籠。
茂った草木の中で虫が音を奏でる中、階段を上る足音が響く。
まるで、賑やかに見送っているかのよう。
強い意志を持った1つの魂を。
階段が途切れ、目の前の空間が開けた。
そびえ立つ石鳥居をくぐり、真っ直ぐ進む。
周囲を森に囲まれた境内。
左右に置かれた、黒く風化した狛犬。
そして、中央に構えられた拝殿。柱や壁にひびが入り、長い年月雨風にさらされた影響が明確に見て取れる。頭上から差す眩い日光の下ではより際立つ程、その損傷は大きい。
これが、御魂神社。
「ミタマサマ。どうか、この願いを聞いてください」
社殿の前で手を合わせ、祈る。
ジジジジジジジジジ
ジジジジジジ ジジジジジジジジジジジジ
ジジジジジジジジジ ジジジジジジジジジジジジ…………
境内を囲む森の中から、蝉の合唱が聞こえる。
どこまでも、どこまでも、どこまでも、響いていく。
ー終わりー
「あー、暑い。ほんとに冷房きいてんのかこの教室。…………つか、早いよな。あいつらがいなくなってもうすぐ1年か」
「なんか、あっという間よね。つい最近まで一緒に授業受けたり遊んだりしてた気がするのに」
「全くだー」
「遼、なんであんなことしたんかな。俺らと祭りで別れた後、神社で1人で……」
「……やっぱり、敦輝のこと相当ショックだったんじゃろうね。2人すごく仲良かったし」
「何が、明日行けたら行くだよ。端から行く気なかったんじゃねぇか」
「遼さ、普通に笑っとったよね、事故の後。学校でも、夏休み入ってうちら4人で遊びにいった時も」
「わたしたちに合わせて、無理しとったんかな」
「俺らはそれに気付けんかったってことか。…………くそっ」
「……ねぇ。来週の灯籠流し、2人の名前書こ。ちゃんと弔いたいけぇさ」
「もちろんやー」
「そうやな。それくらいしか、俺らにできることないし」
「うん。さ、そろそろ次の補習始まるよ。年明けの入試まであと半年もないんじゃけ頑張ろ」
「おー。あ、祈李。足元に何か落ちとるよー」
「え?ああこれ、家の鍵じゃん。よう落ちるな。ありがと仁奈」
「まだ真っ赤の鮫付いとん。マジで趣味悪」
「何回言うんや智士。うちは気に入ってんの。それにこれは、すごく大事なもんじゃけぇさ」
「そうなん」
「前に川で落とした時、ある人が必死になって拾ってくれたんよ。誰だったか覚えてないけど」
「通りすがりのイケメンにかー」
「えっ、それは…………まぁ、可能性的にはありかな」
「何ニヤけとん。きっも」
「もぉーいちいちあんたは!」
「わぉ、取っ組み合いだー。2人共仲ええですなー」
「「よくないっ!」」
「今年ももうそんな季節か……」
「何だよ、カレンダー見つめて。合コンの予定でも入ったか?」
「いや、あの町ではそろそろ灯籠流しがあるなって思って」
「灯籠流しね。確かお前、去年そんな記事書かなかったか。休暇先でネタになる出来事があったから特集やらせてくれって」
「うん。このページの『今年は若い犠牲者 ミタマサマの祟り?』っていう記事」
「まだ持ってたのか雑誌。その週だけ異様に売れ行き悪くて、編集長に当たり散らされてたよなお前」
「あったね。辞めたければ好きにしろって言われたっけ」
「それ実質クビ宣言だろ。おっかねぇなあの人は。それで、どんなしょうもない内容だったんだ。てか祟りとか呪いとか今時ウケねぇって。神社が自殺スポットってのは確かに変わってるけどよ」
「いやこれは明らかに異常なんだよ。僕が去年滞在中に遭遇した件だけを見ても、男子高校生が夜中に1人で御魂神社に向かってそこで亡くなったんだ。自分の首にアイスピックを突き刺して。凶器は数日前に自分で購入したらしい。この一連の行動やわざわざ場所と時間を選んだ点からして、何か儀式めいたものを感じないか」
「儀式ね。そうやってすぐオカルトっぽく結び付けようとするのが安直なんだよ」
「それだけじゃないって。過去50年間の御魂神社での死亡者について調べたんだけど、その全員がほぼ同じ日に自殺を図っていたんだ。それが毎年開かれる夏祭りの最終日。遺体発見が遅れた者については死亡推定時刻が定かではないけどね。しかもその死亡者達の共通点として挙げられるのが、亡くなる1か月前以内に親族あるいは親しい人物が事故や病気で亡くなっていたこと。さっき話した男子高校生に関しても、亡くなる3週間程前に彼と親しかった同級生が交通事故で死亡していた。みんな、まるで死者の後を追っていくように命を絶っていたんだ。これはもう人知を超えた現象、神様の祟りとしか言いようがないって」
「はいはい。長々と語ってくれて悪いが、俺はそういう話興味ないんでな。それに、読者にウケなかったってことはその程度の記事だったんだよ。まぁまた頑張れ」
「はぁ。辛辣なこと言うなぁ」
「長年の親友からのアドバイスだ。ありがたく受け取れ。さて、昼休終わりだ。今日こそ早めに終わって飲みに行くぞ」
「そうだね。このところずっと残業続きだったから、今日こそは」
「この漢字ドリルだるいわー。夏休みだからって量多すぎなんよ」
「よねー。来年中学生になったら宿題もっと大変になんのかな」
「自由研究ないだけいいでしょ。もうあれどーしよ。何か工作するにしてもたいぎーしさぁ」
「私はそれ兄ちゃんに手伝ってもらったけぇ終わったよ」
「ちょ、あーちゃん!そういう話は……」
「あっ……ご、ごめん、椿ちゃん」
「べつにええよ。もう1年たつし。母さんはたまにとなりのにぃの部屋で泣いとるけど、うちは整理ついたつもり。いつまでもグダグダしとったら、にぃ達におこられそうじゃもん」
「つっちゃん……しっかりしとるんね」
「その、つらかったらいつでも言いんさいよ。うちらみんな椿の味方じゃけぇね」
「うん。ありがと」
「はぁーぁ。それにしても終わらんね宿題。ごみポスターとかどうする?」
「言い方。確かにあれはたいぎーね。去年のやつ丸パクリしてもばれん気がする」
「いいねそれ。でももうとっくに捨てたよあんなん」
「うちまだとっとるよ。確かクローゼットに入れたはず。ちょっと待って」
「ここ探すん?手伝おうか」
「大丈夫。えっと…………あ、あった。…………ふはっ」
「どしたん、椿。そんな面白いポスターかいとったん?」
「……いや、ヘタくそやなぁって思ってさ」
タン…………タン…………タン…………タン…………
長い石階段。
脇に並ぶ石灯籠。
茂った草木の中で虫が音を奏でる中、階段を上る足音が響く。
まるで、賑やかに見送っているかのよう。
強い意志を持った1つの魂を。
階段が途切れ、目の前の空間が開けた。
そびえ立つ石鳥居をくぐり、真っ直ぐ進む。
周囲を森に囲まれた境内。
左右に置かれた、黒く風化した狛犬。
そして、中央に構えられた拝殿。柱や壁にひびが入り、長い年月雨風にさらされた影響が明確に見て取れる。頭上から差す眩い日光の下ではより際立つ程、その損傷は大きい。
これが、御魂神社。
「ミタマサマ。どうか、この願いを聞いてください」
社殿の前で手を合わせ、祈る。
ジジジジジジジジジ
ジジジジジジ ジジジジジジジジジジジジ
ジジジジジジジジジ ジジジジジジジジジジジジ…………
境内を囲む森の中から、蝉の合唱が聞こえる。
どこまでも、どこまでも、どこまでも、響いていく。
ー終わりー
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる