雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

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第12話 アキラの記憶

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 転機は10才の頃だった。

 冒険者だった両親が死んで、2歳上の兄さんに育ててもらった。
 子供でも暮らせる、補助金が貰える第13ゲート市に引っ越したのもその頃だ。

 施設には入れなかった。
 俺と兄さんは、まだ余裕があるとみなされたのだ。

 ワンルームの部屋に2人で住む。
 10才になるとスキルに目覚めた。

 ソウルスキルが壊れていて冒険者の才能が無い事も分かった。
 適正を調べたら闇魔法と光魔法と剣だった。
 兄さんが無理をして出してくれたお金で適性を知る事が出来た。

 必死で努力した。
 ソウルスキルが壊れていてもスキルで補えば何とかなる、光魔法さえ覚えればパーティーに入れる、回復魔法を使える光魔法は重宝される。

 光魔法を練習しても覚えられなかった。
 覚えられたのは剣術と闇魔法のサモンモンスターだけ。
 魔力が少なく、サモンモンスターを使ってもモンスターはそこまで出せない。

 実力主義の日本で才能の無い俺にコストはかけない、国は効率的だ。
 新しく出来た友達をいじめから助けたら、今度は俺がいじめられるようになった。
 その時兄さんは奇声をあげながら飛び込んできた。

「きああああああい!」

 兄さんは決して暴力を振るわずただ前に立って殴られた。
 何度も何度もだ。
 そして終わると必ず言った。

「アキラ、自信を持て、お前は素晴らしいんだから」

 次第にみんなが決して暴力を振るわずただ前に立って殴られ続ける兄さんを怖がるようになりいじめられる事は無くなった。
 俺は兄さんに守られていた。
 守られっぱなしだった。

 兄さんは道場でバイトをして俺を食べさせてくれた。
 そのおかげで俺は道場に無料で通えた。
 兄さんがいたからスキルを覚える事が出来た。
 俺の面倒を見なければ兄さんはもっと強かった。

 兄さんは弱い俺とパーティーを組んでくれた。
 兄さん1人なら、兄さんはもっと強かった。
 誰もパーティーを組んでくれない俺をいつも気にかけてくれた。

 兄さんは学校でも俺の面倒を見てくれた。
 俺の面倒を見なければ兄さんはもっと強かった、前に進んでいた。

 俺と違って兄さんには冒険者の才能がある。

 頑張ればソウルスキルが覚醒するかもしれない。
 剣と闇魔法を覚え生活費を稼いだ。
 光魔法は頑張っても覚えられない。

 冒険者用の制服は中学高校で共通だった。
 制服に補助が付きはするがそれでも防御効果が付与されていて高い。

 結局俺は、兄さんに制服を買って貰った。

 兄さんに負担をかけたくなかった。
 ダボダボな服を選び、俺は中二病になった。

「くっくっく、この制服は我の魂! ボロボロになるまで使い続ける!」

 その時兄さんが悲しそうな顔をしていたのは今でも覚えている。


 兄と一緒にゲートに行ってモンスターを倒し、道場にも通った。
 体力が無く、スキルの訓練をしてもすぐに動けなくなるため勉強だけはした。
 高校卒業までの単位はすべて取ってある。
 実技さえクリアすればすぐにでも高校を卒業できるがそれが難しい。
 このままだと、実技の飛び級が出来ないまま普通に卒業する事になるだろう。

 力があれば飛び級出来た。
 
 強くなりたかった。

 兄さんの負担になりたくない。

 周りは色々言ってくる。

「ふ、才能が無いから勉強しかやる事が無いんだろ?」

「雑魚が何をしても無駄なんだよ」

「ソウルスキルが壊れているんだろ? 可哀そう、ははははははははは」

 俺は才能が無い、弱いと言われても言い返せない。
 でも、兄さんは違う。
 俺がいなければ兄さんはもっと強かった!

 俺は、人生を諦めてかけていた。
 それでも兄さんが刃こぼれした脇差を腰に刺して笑う。

「アキラ、自信を持て、お前は素晴らしいんだから」
 
 この言葉を言う時、兄さんには一切の迷いが無かった。

 高校1年の冬、俺に光が降りそそいだ。

 そして、俺にクラックが憑依した。

 強くなってやる!

 兄さんに負担をかけないくらい強くなってやる!
 強くなってたくさん稼ぎたい!

 頑張るだけで願いが叶う!

 力と、金が、欲しい。


 現実に引き戻された。

『よく、分かった。今も強くなりたいか?』
「強くなりたいより、兄さんの足を引っ張りたくないが、先にある気がする」
『分かる、気持ちは伝わってきた。強くなる以外に成り上がる方法はあるのか?』

「思いつかない」
『俺も同じ考えだ。強くなる事は兄様の重荷を取り除くことに繋がる』
「……兄様?」
『俺の望みも強くなる事だ。力が無ければ、人はあっけなく死ぬ』

 兄さんが兄様になった。

『もっと心を開け。それだけで、俺が持っていたスキルを覚えられる。魔法をチャージしながら剣で戦う事も出来る。感じているはずだ、お互いに心を開かねば魂の融合は進まない。出来る事はすべてやる、分からなくても可能性があれば全部やる! それが俺の考えだ』
「お前の記憶を見せてくれたら、心を開けるかもしれない」

 スマホが鳴った。
 兄さんからだ。

『アキラ、大丈夫か?』
「大丈夫、今はウサギのゲートで休んでいるよ」
『まずくなったら、すぐに連絡してくれ』
「うん、兄さん、ありがとう、それじゃあ」
『ああ、またな』

 兄さんが電話を切った。

『アキラ』
「なんだ?」
『心を開け! 兄様を安心させたいとは思わないのか!』
「何で怒ってるんだよ?」

『今はそういう話ではない! 兄様を安心させたいとは思わないのか!』
「思うけど、お前を信頼できるかどうかは別問題だ」
『分かった、今すぐに記憶を見せる、何度も死にかけた記憶だが、心を強く持て、取り乱すなよ』
「あ、モンスターだ」

『早く殺せ!』
「そういう所が信頼しきれないんだ」
『うるさい! 早く殺せ!』

 俺とクラックはちまちまとモンスターを倒し続けた。
 結局昼になりメイが起きるまで時間は潰れた。
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