雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

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第68話 それぞれの道

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 卒業式が終わるとみんなで道場に向かった。
 兄さんが先生に話しかけようとすると先生がにこっとほほ笑んだ。

「大丈夫です。卒業式はしっかりと見ていましたから。配信もされています」

 兄さんの顔が一瞬で赤くなった。

「兄さんは道場に住むよね?」
「そうなるでしょう」
「私とアキラは東高校への転入が決まりました☆」

 テロリストの制圧でメイのチャクラヒールは高く評価された。

「ではアパートは解約ですね。荷物を運んできましょう、今すぐに」

 先生がにやにやしながら言った。

「大きめの部屋を2人で使いなさい」
「同棲のプレゼントは何がいいですか?」
「俺は刀をプレゼントしたい! アパート解約のついでに刀を見に行こう! ライカさんは何がいいか分からないけど何がいいかな?」
「キドウ、顔が真っ赤ね」
「きゅう♪」

「む、こんなにうまく話が進むと、逆に怖いな」

 みんなで笑った。

「ど、どうした?」
「兄さん、兄さんが告白すればうまく行くのは皆分かってた」
「きゅう♪」

 きゅうも得意げな顔をしている。

「きゅうも分かってますよね?」
「きゅう♪」
「キドウ君がいつライカに告白するのかと待ちに待っていましたよ」
「長かったわね」

「兄さん、今すぐにアパートの解約と掃除に行こう」
「今からか?」
「今すぐに」
「私も手伝います☆」
「私も行くわ」

 きゅうが空中を飛び回った。
 きゅうも嬉しそうだ。
 4人でアパートに向かう。

 ワンルームのアパートに入ると少し寂しさが込み上げてきた。
 10才の頃からここに住んで、兄さんに守って貰っていた。

「アキラは東高校の寮に住むのよね?」
「そうです」
「じゃあ、服と自分の物だけ収納しなさい、古いキッチン用品は私が処分するわ」
「もったいないだろう」

「キドウ、分かってませんね☆」
「む?」
「毎日ライカさんが手料理を作ってくれるから古いのはもう使わない、そういう意味だよ」
「そ、そうか」

 俺は必要なものだけを回収して後は全部ライカさんに任せた。
 結局お祝い品は断られて道場に帰ると先生が2人で使う部屋をきれいに掃除していた。

「さてと、後はベッドですね」

 先生が大きなベッドを収納から出した。

「私からのプレゼントです」

 2人が結ばれるのを先生が一番楽しみにしていたのかもしれない。
 俺とメイは2人で道場を出た。

「2人とも幸せそうですね」
「……そうだな」
「私達は東高校の寮に行きましょう。その前に家に寄って行って良いですか?」
「行こう」


 家で待つとメイの母さんが俺を呼んだ。

「今日はすき焼きよ」

 父さんと母さん、そしてメイと同じテーブルに座る。

「いつもお世話になっています。ポイントを渡したいのでスマホを出して欲しいです」
「遠慮はいらない、アキラ君のおかげでメイが変な恰好をしなくても良くなった。本当に助かっている」
「いえ、今までたくさん」
「高校生が気を使っちゃ駄目よ」

「アキラはすき焼きで緊張してますよね」
「うん」

 父さんと母さんが笑った。

「めでたい日にすき焼きを食べるのは普通の事だ」
「遠慮しないで食べなさい、スマホはしまいましょう」
「……はい、頂きます」

 すき焼きが美味しい。
 メイの言葉を思い出した。

『物事はゆっくり進んでいきます、順調ですよ』

 俺がやって来た事は無駄じゃなかった。
 ちょっとずつ物事が進んで、兄さんがライカさんに告白して一緒に住むことになった。
 俺もメイも東高校に通えるし、寮に住むことも出来る。

 きゅうにすき焼きを食べさせながら不思議な感覚に包まれた。
 今まで何をしても駄目だったけど、クラックが俺に憑依してから色々な事が変わっていった。

「アキラ、どうしたんですか?」
「メイの言葉を思い出していた。物事はゆっくり進んでいきます、順調ですよって言ってくれただろ? その通りになったなって思って不思議な気持ちになった」

「「ははははははははは」」
「どうしたんだ?」
「ごめんなさい、その言葉はお父さんのセリフをメイが真似して言っただけよ」
「その通りです☆」

「そう、だったのか」
「始まるのはこれからだろう」
「またお父さんのセリフをメイが真似するわね」
「いただきです☆」

 メイが肉を頬張った。

 きゅうも肉を顔で食べる。
 モフモフに卵がついて髭のように見える。

 みんなが笑って温かい食事を囲む。

 そうか、小さいころ、家族で食べた食事と同じだ。

『こういうのも、良いものだな』

 クラックもそう思うか。

『ああ、家族は大事だ』

 そうだよな。

『明日は、今日よりいい日になる。魂の融合も進んでいる』

 思うだけで心が通じている事に気づいた。

 俺とクラックは1つになりつつあるのか。
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