無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ

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第2話

 猫野 莉子ネコノリコは満面の笑顔で俺と握手をしたまま俺を見つめる。
 ポニーテールの清楚な雰囲気。
 容姿、スタイルすべてが整っており素朴な印象の美人だ。
 ハンター高校の制服を着ていて俺の2つ後輩だが、彼女は俺を知らないだろう。


 カケルに見えない所でネコノリコのチャンネルではコメントが書き込まれていた。

『あの男の速さ、おかしくね?』
『車の限界を余裕で追い越しとる』
『戦闘機に近い速さだよな』
『危なくぶつかる所だった』
『小麦の大袋があんなに吹き飛ぶってどういうことだ?』
『ハンターの事には詳しいけどあんな逸材は知らないぞ』
『田舎には目立つ気が無い大物がいるのか』

『さすが、不人気の大穴特区だな』
『ハンター高校にはスカウトの人間が頻繁に出入りしている。あんな逸材を見逃すってあるか?あいつ絶対にしつこく勧誘を受けるはずだって』
『話し方を見るに、いつもはそんなに早く走ってないんだろ?』
『多分、力を隠してる、力隠し顔してるもん』
『力隠し顔ってなんだよwwwwww』

 彼女は握手をしたまま俺の背後を覗き込む。
 俺ではなくきゅうに興味があるのか。
 きゅうは覗き込まれるとすっと隠れる。

「隠れた!ふふふ、かわいい」
「きゅうは人見知りなので、中々なつかないと思いますよ」

 俺は咄嗟に手を放した。

『あの生き物何?可愛いんだけど?』
『きゅうについてはよく分かっていないモフモフ生物だ』
『きゅうチャンネルを今すぐチェックだ。可愛いぞ』
『2枠目できゅうチャンネルを見てみる』

『この男は賢い、ずっとリコちゃんと手を繋いでたら常識を疑っていた』
『きゅうチャンネルはチャンネル登録者数が30万か、意味不明生物にしてはチャンネル登録者数が少なくね?あのモフモフ可愛いのにたった30万って少なすぎ!』
『理由は、更新頻度が低い、編集をほぼしていない、チャンネルを始めて日が浅いってとこか、それと、大穴では他にも新種は見つかっているからな』

「今日は持ち合わせがないので、お金を下ろしてから後日ぱんにゃんの店主にお詫びを持って行きますね」
「い、いいよ。それよりも、名前を教えて」

 きゅうが可愛すぎる為か彼女のテンションが高い。
 きゅうが可愛いのは、分かる。
 でも、配信をされながら話すのは抵抗がある。
 それと距離が近すぎて緊張するんだよなあ。

大岩翔オオイワカケルです」

「カケルさんは何才なの?」

 配信中に個人情報を2回聞かれて嫌な予感がした。
 だが、答えないのは礼儀に反する。

「……20才です」

 さっきから配信用の魔法陣が展開しっぱなしだ。
 配信用の魔法陣は胸元に貼って貰う事で使用可能となる。
 胸元の魔法陣に魔力をチャージし、空中に展開させる。
 そして魔法技術を取り入れたスマホと連携させる事で配信が可能となる。
 でも、彼女は悪気無く話をしている。

 気持ちよく話をしているのに腰を折るのは悪い気がする。
 後、会社で話の腰を折ると高確率で怒られてきた。
 さりげなく話題を終わらせて逃げよう。

「ぱんにゃんのパンは食べた事ある?」
「たまに食べますよ。カレーパンが人気ですよね」
「今食べるならカレーパンかな?」
「は、はははは、後で買いに行きますね。それではまた、失礼しました」

 これで自然に退散できるだろう。
 少し距離を取って角を曲がったら即走るスピードを上げよう。

 俺の服を掴まれた。
 ドキッとして固まってしまう。

『リコちゃん、カケルが困ってますよ』
『距離が近すぎないか?彼が困惑している』
『あんまりくっつくのは良くないよ』
『リコが男とここまで話すのは珍しい』
『きゅうが好きだからな』
『カケルが安全だと見抜いたんだろ?草食系っぽいし』

『俺、休みになったらカレーパンを買いに行くんだ!』
『死亡フラグかよ』
『犯罪者がいます』
『お巡りさんここです』

『リコ、男が苦手なはずだろ?距離が近くね?デキてんのか?』
『話し方から見て初会話だろ。嫉妬すんなよ』
『カケルが悪人ではないからだろう。リコに近づいてくるのは体狙いのやつが多い。安全だと見抜いたんだろ』
『お前ら嫉妬するなよ』

「カケルさんはなんのパンが好き?」
「ぱんにゃんのパンならカレーパンです」
「きゅうに、食べさせたいなあ。きゅうもカレーパンが好きだよね?」
「でも人見知りですからね。また次の機会にしましょう」

『社交辞令のもう会わない奴やん』
『彼は忙しいだろうから早く解放してあげよう』
『あんまり距離が近いのは良くないんじゃないか?嫉妬する人が出てくる』
『きゅうが出て来てネコリコのテンションが上がってるな』
『ネコリコはよく話が飛ぶからカケル君が困惑してる。でも、カケル君がちょっとかわいいな』
『リコは危険を嗅ぎ分ける、カケルは安全なんだろう。草食系というか、異様に人に気を使う感じだな』

「このまま別れたら……もう話をしないよね?」
「そ、そうですかね?そんな事は、無いんじゃないですか?」
「カケルさんはハンター高校の出身だよね?2才上ならすれ違っているはず」

 スキルホルダーはこの市にあるハンター高校に通うパターンが多い。
 スキルを持って発動させている時点でハンター高校の生徒である可能性が高いのだ。

「そうですが僕は目立たないので覚えていないかもしれませんね」

 俺は彼女の事を知っている。
 整った容姿でかなり目立ち、いつもニコニコしている。
 他の男子がよく彼女の話をしていた。
 一方で俺は学校ではあまり人と関わらず、目立たないように生活していた。
 覚えていないのも無理はない。

「顔を、覚えているような、う~ん」
「無理して思い出さなくていいですよ」
「あ、いつも走ってたよね?」
「そうですね」

 速度を押さえて走っていたが、覚えられていたのか。
 走ると目立つんだな。

「私はお母さんと2人家族だけど、カケルさんは何人家族?」
「家族の話はやめましょう!」

『リコ、あまりプライベートな事を聞きすぎだ。困ってるぞ』
『地雷を踏んだな』
『リコちゃん、あまり色々聞くもんじゃない』
『テンションが上がると飛ばし気味になるのはネコリコの悪い所だ』
『リコちゃんはいい子だけどカケル君が困ってますよ』
『スキルホルダーはつらい過去を持つ人が多いからね。両親がクズだったり、死んでたりするパターンはよくある』

「そ、そっか、ごめん」
「い、いえ、大きな声を出して、すいません」

 俺は両親が嫌いだ。
 母は何かあるとすぐ俺のせいにした。
 父は金をむしり取りに来て自分以外どうでもいい人間だった。
 両親から離れた今でも、両親を親のようには思ってはいない。

 前社長が手を打ってくれて父はもうここに来なくなった。
 親は氷河期世代で苦労をしたのかもしれない。

 色々調べた。

 色々と考えた。

 割り切ろうとしたが無理だった。
 今でも奴らは嫌いだ。

「カケルさん、そんなに遠慮しなくていいと思うよ?」
「遠慮、してますかね?」
「その敬語が、距離を取られてる感じで傷つくなあ」

 距離を取っている感じじゃなくて距離を取っていたのだ。
 会社を辞める事になって、きゅうの元気が無くなって慎重になりすぎていたのかもしれない。
 失礼な行動を取ってしまった。

「そっか、ごめん。悪かった」
「うん、そっちの方がいいよ。あ、迷惑じゃなかったらスキルを見てもいい?私は斥候のスキルを持っているから」

 斥候か、当たりスキルだ。

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