無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ

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第5話

「深刻なナデナデ不足で命の危機?そんな状態異常ってある?色々とはおかしくないか?」
「で、でも、きゅうを見たらそう、見えたの」

 俺はきゅうを見る。
 きゅうが力を抜いてだらんとしている。
 さっきまでもう少しシャキッとしていたような……怪しい。
 怪しすぎる。

 きゅうに顔を近づけてじっと顔を見る。

「本当に命の危機なのか?」
「きゅう」

 きゅうが悲しそうな鳴き声をだした。

『かまってちゃんだろwwwwww』
『可愛い』
『何という斥候スキルの使い方wwwwww』
『絶対に斥候スキルで偽装している、きゅうは持ってるな』

「やっぱり!苦しそうだよ!」
「ナデナデをすれば治るのか?」
「きゅう」

 きゅうが病人のようにゆっくりと頷いた。

『演技派きゅう、ハリウッドに行けるぞwwwwww』
『僕ナデナデされないと死んじゃうwwwwww』
『なおオスかメスかも不明な件』
『でも、配信初期より痩せてはいるんだよなあ』
『さみしかったんだろ。今のは演技だけどさ』

「怪しい」
「で、でも、本当だったら」
「きゅ、きゅうう」

 きゅうが小刻みに震えだした。
 今にも倒れそうなおじいちゃんのように弱った感を出している。

『急に震え出したwwwwww』
『だんだん笑えてきた』
『僕ナデナデさせる為なら何でもやる!』
『色々パターン持ってんなwwwwww』
『ナデナデ不足感を盛ってる』

「きゅうが可愛そう」
「いや、演技の可能性もある」

 てか、ほぼ演技だろ。
 きゅうはこういう事をたまにする。

「でも、そうだけど!少しでも危ないならナデナデしてあげないと!きゅうが死んじゃう!」

「……そうだな」

 怪しい。

 でも、

 俺はきゅうをさみしくさせた。

 さみしかったんだよな?

 帰るといつも玄関の前できゅうが待っていた。

 仕事で帰りが遅くなる事がよくあった。

 俺も、元気が無いままきゅうの元に帰っていた。

「一旦大穴から出よう」
「あの、カケルさん、運んで欲しいなあ。もう、あんまり走れなくて」

「おんぶしようか」

 その瞬間きゅうが俺を壁にして隠れた。
 リコがきゅうを覗き込もうとする。

「……抱っこがいいな」
「そうすると今度はきゅうが背中に隠れるから」

『抱っこをしてもきゅうは背中に隠れるだろう』
『リコちゃんがきゅうに触ろうとしてる』
『きゅうは素早いし小さい。難しいぞ』




「風圧が凄いんだ」
「でも、きゅうに触りたいよ。私もなでなで出来るのに。私もナデナデで助けたいよ」
「今は早く大穴を出よう」

「で、でも」
「風圧を舐めてる!」
「えええええ!」

『風圧で怒り出したぞwwwwww』
『マジで風圧舐めるのは良くない』
『風圧大事だ。マジで首を痛めるで』
『これマジなんだよな』

「きゅう、頭に乗っててくれ。そう言えばなんて呼べばいいかな?ネコノでいいか?」
「うん、いいよ」

「おんぶする。ネコノ、きゅう、走るぞ!」

 俺は大穴の外に走った。

 ドン!
 
「あ、ああああ!こわ!怖い!ちょ、ちょっとおおおおお!」
「我慢してくれ!」

 俺はトップスピードで大穴から出た。
 そして速度を落として公園に向かう。

『きゅうは意味不明だな。あの風圧は大丈夫なのか?』
『きゅうはダメージは受けていないようだ』
『きゅうは意味不明生物だ。考えても無駄だよ』
『赤ちゃんみたいできゅうが可愛いな』

 俺は公園まで走った。



 ◇



「おおお、吐き気がするよ」

 ネコノが公園の地面に四つん這いで汗をかく。

「はあ、はあ、胸が痛いし、上下に揺れるし風圧は凄いし、きゅうは大丈夫なの?」
「きゅうは、お散歩が大好きだ」

「お散歩じゃなくて音速の壁にぶつかる罰ゲームだよ、私、学校では能力値は高い方だと思ってたのに」
「ハンター学校を卒業してからが本番だろ」

『カケルのやばさがどんどん出てくる』
『世界一になってからが始まりだみたいに聞こえる』
『配信が終わったら見返すわ。カケルは明らかに普通じゃない』
『もうすでに我が捜査部は動いているのだよ』
『カケル、逸材だな』
『掘れば掘っただけ色々出てくる気がする。捜査開始だ』

 俺はアイテムボックスのスキルで異空間から毛布を出して羽織った。
 そしてベンチに座る。

『おい!さらっとアイテムボックスを使ってるで』
『戦士系でありながら魔法スキルまで使うのか』

「きゅう、大丈夫かな?」
「ネコノ、ありがとう。優しいんだな」

 本当はネコノがナデナデをして治したいんだろう。
 でも、きゅうは人見知りだ。

「ううん、それはいいけど、なに、してるの?」
「ここで気功を使いながらきゅうをナデナデする……配信をまだ続けるのかな?」
「だめ、かな?」
「いや、今まで配信しておいて、今更止めても意味がないか」

 きゅうを膝の上に乗せる。
 そしてナデナデを開始すると同時に気功を使った。
 手が輝いて、この温かい光をきゅうに注ぎ込む。
 
 きゅうが輝きを放ち、光が吸い込まれていく。
 きゅうが目を細めて、あっという間に眠った。

『まぶしい!光量がおかしい!』
『気功ってもっと柔らかい光じゃなかったか!?』
『出力が大きすぎるんだ』
『化け物魔力だな。相当能力値が高いぞ』
『気功が得意なのか!?』
『おかしい、アイテムボックスは魔法系スキルだ。でもあの戦い方は戦士系で気功も戦士系だ。普通なら適応するタイプのスキルしか取れないはずだ。あの速度も素手で戦ってるのもパーティーを組まずに大穴に向かうのも色々おかしいわ』

「まぶしい!もう、大丈夫じゃない?」
「いや、まだだ、注ぎ込めるだけ、注ぎ込む」

「あんまりやりすぎるとカケルさんが倒れちゃうよ?」
「いいんだ、ここは田舎で寝ていても注意されない」
「そ、そういう事じゃなくてカケルさんが倒れちゃうよ」

『カケルは色々ずれているな』
『強すぎて感覚がおかしくなってる』
『やべえやつを見つけたぜ』

「俺には、きゅうしかいないから」

『あの言い方に心がぞわぞわする』
『カケルは何かを抱えてるのか』
『きゅうしかいないからはおかしい』
『きゅうチャンネルを全部見てくるわ。カケルが気になる。あの表情や過去、隠している能力、全部おかしい』
『今日は面白いのを見つけた。大収穫だ』


 俺は昔の事を思い出していた。


 きゅうはさみしがり屋だ。
 朝起きて体を洗ってもらうのが好きだ。
 ある日きゅうが洗面所で待っていた。
『きゅう、ごめんな、今日は早めの出勤なんだ。きゅうを洗うのは帰ってからな』
 きゅうが玄関に来て俺を見つめた。
『悪い』
 俺はそのまま会社に向かった。




 きゅうはさみしがり屋だ。
 きゅうの前に食べ物を置いても中々食べない。
 俺がカレーパンをちぎって差し出されながら食べるのが好きなのだ。
 でも俺は、食べ物を置いたままスーパーに向かった。
 田舎にネットスーパーは無い。
 高い宅配サービスならあるが節約の為に利用していない。
 買い物から帰ると食べ物に口をつけずにきゅうが食べさせてもらうのをじっと待っていた。



 きゅうはさみしがり屋だ。
 バトルブーツを片方咥えて俺の前に持って来た。
 散歩に行きたいのだろう。
『今日は時間が無いんだ。ダンジョンの散歩はまた今度な』
 きゅうが下を向いた。
『悪い。次は必ず行くから』
『きゅう』
 きゅうがさみしそうに見えた。




 きゅうはさみしがり屋だ。
 パソコンの前にいると寝室から出て来て俺を見つめる。
『きゅう、ナデナデしようか?』
 きゅうは寝室に戻っていった。
 一緒に寝たいのか。
 でも俺は仕事で、パソコンの作業を続けた。
 しばらくして寝室に向かうときゅうが俺を見た。
『きゅう、寝ないで待っていたのか。一緒に寝ような』
『きゅう』
 きゅうがやっと目を閉じて眠った。



 俺は、社長を助けたいと思っていた。

 お世話になった前社長が、おばあちゃんが交通事故で亡くなってからも、残された今の社長を助けたいと思っていた。

 前社長は両親の問題で困っている俺を助けてくれた。
 俺は優しかったおばあちゃんを助けたかった。

 でも亡くなってもういない。

 今の社長を助ける為俺は会社に残った。

 でも、俺は必要とされていなかった。
 社長から必要とされていなかった。

 俺は間違っていた。

 もう、きゅうを寂しくさせない。


『俺には、きゅうしかいないから』


 俺の魔力をすべてきゅうに注ぎ込む。

 大気に溢れる魔力を吸収する。

 そしてそれもすべてきゅうに注ぎ込む。

 時間の感覚が曖昧になっていく。

 全力を出し切ったのはいつ以来だろう?

 疲れているのに、気分が、いい……
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