無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ

文字の大きさ
5 / 38

第5話

しおりを挟む
「深刻なナデナデ不足で命の危機?そんな状態異常ってある?色々とはおかしくないか?」
「で、でも、きゅうを見たらそう、見えたの」

 俺はきゅうを見る。
 きゅうが力を抜いてだらんとしている。
 さっきまでもう少しシャキッとしていたような……怪しい。
 怪しすぎる。

 きゅうに顔を近づけてじっと顔を見る。

「本当に命の危機なのか?」
「きゅう」

 きゅうが悲しそうな鳴き声をだした。

『かまってちゃんだろwwwwww』
『可愛い』
『何という斥候スキルの使い方wwwwww』
『絶対に斥候スキルで偽装している、きゅうは持ってるな』

「やっぱり!苦しそうだよ!」
「ナデナデをすれば治るのか?」
「きゅう」

 きゅうが病人のようにゆっくりと頷いた。

『演技派きゅう、ハリウッドに行けるぞwwwwww』
『僕ナデナデされないと死んじゃうwwwwww』
『なおオスかメスかも不明な件』
『でも、配信初期より痩せてはいるんだよなあ』
『さみしかったんだろ。今のは演技だけどさ』

「怪しい」
「で、でも、本当だったら」
「きゅ、きゅうう」

 きゅうが小刻みに震えだした。
 今にも倒れそうなおじいちゃんのように弱った感を出している。

『急に震え出したwwwwww』
『だんだん笑えてきた』
『僕ナデナデさせる為なら何でもやる!』
『色々パターン持ってんなwwwwww』
『ナデナデ不足感を盛ってる』

「きゅうが可愛そう」
「いや、演技の可能性もある」

 てか、ほぼ演技だろ。
 きゅうはこういう事をたまにする。

「でも、そうだけど!少しでも危ないならナデナデしてあげないと!きゅうが死んじゃう!」

「……そうだな」

 怪しい。

 でも、

 俺はきゅうをさみしくさせた。

 さみしかったんだよな?

 帰るといつも玄関の前できゅうが待っていた。

 仕事で帰りが遅くなる事がよくあった。

 俺も、元気が無いままきゅうの元に帰っていた。

「一旦大穴から出よう」
「あの、カケルさん、運んで欲しいなあ。もう、あんまり走れなくて」

「おんぶしようか」

 その瞬間きゅうが俺を壁にして隠れた。
 リコがきゅうを覗き込もうとする。

「……抱っこがいいな」
「そうすると今度はきゅうが背中に隠れるから」

『抱っこをしてもきゅうは背中に隠れるだろう』
『リコちゃんがきゅうに触ろうとしてる』
『きゅうは素早いし小さい。難しいぞ』




「風圧が凄いんだ」
「でも、きゅうに触りたいよ。私もなでなで出来るのに。私もナデナデで助けたいよ」
「今は早く大穴を出よう」

「で、でも」
「風圧を舐めてる!」
「えええええ!」

『風圧で怒り出したぞwwwwww』
『マジで風圧舐めるのは良くない』
『風圧大事だ。マジで首を痛めるで』
『これマジなんだよな』

「きゅう、頭に乗っててくれ。そう言えばなんて呼べばいいかな?ネコノでいいか?」
「うん、いいよ」

「おんぶする。ネコノ、きゅう、走るぞ!」

 俺は大穴の外に走った。

 ドン!
 
「あ、ああああ!こわ!怖い!ちょ、ちょっとおおおおお!」
「我慢してくれ!」

 俺はトップスピードで大穴から出た。
 そして速度を落として公園に向かう。

『きゅうは意味不明だな。あの風圧は大丈夫なのか?』
『きゅうはダメージは受けていないようだ』
『きゅうは意味不明生物だ。考えても無駄だよ』
『赤ちゃんみたいできゅうが可愛いな』

 俺は公園まで走った。



 ◇



「おおお、吐き気がするよ」

 ネコノが公園の地面に四つん這いで汗をかく。

「はあ、はあ、胸が痛いし、上下に揺れるし風圧は凄いし、きゅうは大丈夫なの?」
「きゅうは、お散歩が大好きだ」

「お散歩じゃなくて音速の壁にぶつかる罰ゲームだよ、私、学校では能力値は高い方だと思ってたのに」
「ハンター学校を卒業してからが本番だろ」

『カケルのやばさがどんどん出てくる』
『世界一になってからが始まりだみたいに聞こえる』
『配信が終わったら見返すわ。カケルは明らかに普通じゃない』
『もうすでに我が捜査部は動いているのだよ』
『カケル、逸材だな』
『掘れば掘っただけ色々出てくる気がする。捜査開始だ』

 俺はアイテムボックスのスキルで異空間から毛布を出して羽織った。
 そしてベンチに座る。

『おい!さらっとアイテムボックスを使ってるで』
『戦士系でありながら魔法スキルまで使うのか』

「きゅう、大丈夫かな?」
「ネコノ、ありがとう。優しいんだな」

 本当はネコノがナデナデをして治したいんだろう。
 でも、きゅうは人見知りだ。

「ううん、それはいいけど、なに、してるの?」
「ここで気功を使いながらきゅうをナデナデする……配信をまだ続けるのかな?」
「だめ、かな?」
「いや、今まで配信しておいて、今更止めても意味がないか」

 きゅうを膝の上に乗せる。
 そしてナデナデを開始すると同時に気功を使った。
 手が輝いて、この温かい光をきゅうに注ぎ込む。
 
 きゅうが輝きを放ち、光が吸い込まれていく。
 きゅうが目を細めて、あっという間に眠った。

『まぶしい!光量がおかしい!』
『気功ってもっと柔らかい光じゃなかったか!?』
『出力が大きすぎるんだ』
『化け物魔力だな。相当能力値が高いぞ』
『気功が得意なのか!?』
『おかしい、アイテムボックスは魔法系スキルだ。でもあの戦い方は戦士系で気功も戦士系だ。普通なら適応するタイプのスキルしか取れないはずだ。あの速度も素手で戦ってるのもパーティーを組まずに大穴に向かうのも色々おかしいわ』

「まぶしい!もう、大丈夫じゃない?」
「いや、まだだ、注ぎ込めるだけ、注ぎ込む」

「あんまりやりすぎるとカケルさんが倒れちゃうよ?」
「いいんだ、ここは田舎で寝ていても注意されない」
「そ、そういう事じゃなくてカケルさんが倒れちゃうよ」

『カケルは色々ずれているな』
『強すぎて感覚がおかしくなってる』
『やべえやつを見つけたぜ』

「俺には、きゅうしかいないから」

『あの言い方に心がぞわぞわする』
『カケルは何かを抱えてるのか』
『きゅうしかいないからはおかしい』
『きゅうチャンネルを全部見てくるわ。カケルが気になる。あの表情や過去、隠している能力、全部おかしい』
『今日は面白いのを見つけた。大収穫だ』


 俺は昔の事を思い出していた。


 きゅうはさみしがり屋だ。
 朝起きて体を洗ってもらうのが好きだ。
 ある日きゅうが洗面所で待っていた。
『きゅう、ごめんな、今日は早めの出勤なんだ。きゅうを洗うのは帰ってからな』
 きゅうが玄関に来て俺を見つめた。
『悪い』
 俺はそのまま会社に向かった。




 きゅうはさみしがり屋だ。
 きゅうの前に食べ物を置いても中々食べない。
 俺がカレーパンをちぎって差し出されながら食べるのが好きなのだ。
 でも俺は、食べ物を置いたままスーパーに向かった。
 田舎にネットスーパーは無い。
 高い宅配サービスならあるが節約の為に利用していない。
 買い物から帰ると食べ物に口をつけずにきゅうが食べさせてもらうのをじっと待っていた。



 きゅうはさみしがり屋だ。
 バトルブーツを片方咥えて俺の前に持って来た。
 散歩に行きたいのだろう。
『今日は時間が無いんだ。ダンジョンの散歩はまた今度な』
 きゅうが下を向いた。
『悪い。次は必ず行くから』
『きゅう』
 きゅうがさみしそうに見えた。




 きゅうはさみしがり屋だ。
 パソコンの前にいると寝室から出て来て俺を見つめる。
『きゅう、ナデナデしようか?』
 きゅうは寝室に戻っていった。
 一緒に寝たいのか。
 でも俺は仕事で、パソコンの作業を続けた。
 しばらくして寝室に向かうときゅうが俺を見た。
『きゅう、寝ないで待っていたのか。一緒に寝ような』
『きゅう』
 きゅうがやっと目を閉じて眠った。



 俺は、社長を助けたいと思っていた。

 お世話になった前社長が、おばあちゃんが交通事故で亡くなってからも、残された今の社長を助けたいと思っていた。

 前社長は両親の問題で困っている俺を助けてくれた。
 俺は優しかったおばあちゃんを助けたかった。

 でも亡くなってもういない。

 今の社長を助ける為俺は会社に残った。

 でも、俺は必要とされていなかった。
 社長から必要とされていなかった。

 俺は間違っていた。

 もう、きゅうを寂しくさせない。


『俺には、きゅうしかいないから』


 俺の魔力をすべてきゅうに注ぎ込む。

 大気に溢れる魔力を吸収する。

 そしてそれもすべてきゅうに注ぎ込む。

 時間の感覚が曖昧になっていく。

 全力を出し切ったのはいつ以来だろう?

 疲れているのに、気分が、いい……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...