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第15話

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 学校を出て午後、家でゆっくりしていると呼び鈴が鳴った。

 ピンポーン!
 ネットで頼んでいた荷物が来たか?

「はい!今開けます」

 扉を開けるとカノンとスナイプがいた。
 しかも配信中か!?
 配信用の魔法陣を展開している。

「どこで俺の家を知った?」
「太田先生が教えてくれました」
「こういうのはどうかと思うぞ」
「急に玄関に押し掛けてもJKなのでセーフです!」

 もし俺が逆の立場でJKの家に訪れたら即アウトだ。
 だが何故か女性側から押しかければセーフになる。

 もっと言えば男性が女性にセクハラをすればアウトだが、逆ならセーフになる。
 欧米などの海外ではクレイジーな事ではあるが、日本ではそういうのがある。
 日本の脆弱性を利用した狡猾な行い。

 やはりこいつは危険だ、きゅうを狙ってやがる!

「いや、アウトだろ」
「日本は男性がセクハラをされても問題になりません。日本はそういう国ですから」
「しかも配信中ってなんだよ」
「カケルと強制的にコラボをする事で登録者数を稼ぎます」

『ネコリコチャンネルから来ました。カケル君のお部屋はすっきりしていますね』
『カケルのあの顔wwwwww呆れてて草』
『カノンちゃんは結構ぐいぐい攻めるねwwwwww』
『カケル君のお家拝見wwwwww』
『カケル君の落ち着きがなくて可愛い』

「どういった御用でしょうか?」
「カケル先生に鍛えて貰いに来ました」

『カケルが距離を取ったwwwwww』
『分かりやすく対応を変えたなwwwwww』
『いきなり来られたら普通こうなるだろ』
『まったく、カケルが困ってるじゃないか。もっとやれ』
『カケルを困らせるなんて、カノンちゃん、もっとやれ!』

「一人だけで男のアパートに押し掛けたら危ないだろ?」
「逆転の発想です。配信をしていれば何かあっても皆が通報してくれます」
「ちなみに、チャンネル登録者数はいくらなんだ?」
「最近始めて5000を超えました」

「……最近始めたのに5000越えか、強すぎる」
「リコのおかげです。次はカケルにあやかって鍛えて貰って、更にチャンネル登録者数を一気に稼ぎます」

『カノンちゃんが面白い』
『いいキャラしてるなwwwwww』
『これは伸びる』
『腹黒カノンちゃん好きやわ』

「きゅう、会いたかったです」

 きゅうがすっと隠れた。

『素早い!』
『危機管理能力の塊だな』
『きゅうにも避けられてるwwwwww』

「マジでやめて、触んな!」
「迷惑ですか?」
「うん」
「そうですか、配信を終わります。チャンネル登録をよろしくお願いします。お疲れさまでした」

 空中の魔法陣が消えた。

「お邪魔します」
「ちょっと待ってくれ」

 俺は部屋に入ろうとするカノンをブロックした。

「さりげなく入って来ようとするなって」
「でも、ここで話していると道路から丸見えです。入れてください」

 数人の人が外から俺を見ている。
 大きい声を出したせいか。

「……分かった」

 カノンが部屋に入って来る。
 スナイプの足を拭いてスナイプも部屋に入れた。

「座っててくれ。オレンジジュースしかないけどいいか?」
「優しいんですね」

 俺はオレンジジュースを出した。

「で?何であんなことをしたんだ?」
「真面目な話をしますね」

 カノンが真面目な顔をした。

「いいぞ」
「私が特殊でおかしな行動を取りつつカケルが本気で嫌がっている配信を流す事で私はおかしいキャラで定着するでしょう。
 カケルは私に巻き込まれただけのキャラになります。
 カケルのキャラならそれで押し通せます。

 嫉妬を受ける事は少なくなります。
 そして、ボディタッチやアクシデントがあっても私がおかしいせいでそうなったと思わせる効果があります。
 もちろん、完全に嫉妬を無くすことは出来ません。
 ですが、何かあれば私のせいに出来て、ある程度の事ならリカバリーできます」

「お前、いい所もあるんだな。でも、配信をしたら苦手な男性からたくさん声をかけられるだろ?」
「配信をしなくても歩いているだけで声をかけられます。私はお金を欲しいです。お金で武具を強化して魔石で私自身も強化して危ない目に会っても走って逃げられるようにしたいです。鍛えてくれるんですよね?」

「先生と約束はした。出来る範囲でな」
「カケル、お願いします。私に投資してください」

 カノンが土下座をした。

「土下座をやめてくれ」
「裸で土下座をすればいいですか?」
「違う!土下座をやめてくれ」

 カノンが土下座をやめて綺麗に正座をした。
 座る姿が綺麗で、まるでお嬢様のようだな。

「投資って何をすればいいんだ?」
「私に最高の指輪をください。そして魔石を出来る限り注入してください。死なない限り10倍で返します。魔石の量は、記録しておきます」

「俺は中途半端なお金しか持っていない。魔石は持っているけど焦りすぎじゃないか?」
「体で払います。もちろん、お金は10倍にして払います」

「男に襲われるのは怖いんだろ?」
「でも、変な人に襲われるより、カケルに処女をあげた方がいいです」
「誰かに襲われる前提で話をしてないか?」
「……本気です」

 カノンが帽子を脱いで、制服を脱ぎ、きれいに折りたたんだ。

「やめろ」
「本気なんです」

 下着を外して丁寧に折りたたみ、生まれたままの姿で俺の前に立った。
 顔を真っ赤にして苦しそうな表情を浮かべる。
 手が震えている。

 俺はカノンにタオルをかけた。

「出来る事はしよう。体はいいから、無理をするな」
「……はい」

「明日、街に指輪を買いに行こう」
「はい」

「服を着てくれ」
「はい」

 カノンは、よく分からない部分もある。
 でも、やって貰った分の対価は払おうとするウインウインを考えるような部分は感じた。

 そして、男性が怖いのは本当で、無理をして体を差し出そうとした。
 後、思ったよりいい奴で、思ったよりも信頼できる、そう思った。

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