無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ

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第38話

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「どうしてカケルが捕まるんですか!カケルは私とリコを助けてくれました!」
「おかしいよ!カケルは私達を助けてくれたのに!こんなのってないよ!」

 2人が泣き出した。
 コメントも高速で流れる。

『カケルは悪くないだろ!』
『人の命を守ったんだ!警察は何も出来なかっただろ!』
『条例がおかしい!じゃあリコとカノンは死んでおけってそういう事だぞ!』

 更にお祭りに集まっていたみんなも騒ぎ出した。

「逮捕はおかしい!警察がキリヤを見失ったのが元凶だ!」
「大体警察が駆け付けるまで遅かっただろ」
「カケル君を逮捕しないで!」

 みんなが騒ぎ始めた。
 そして俺の前にマイクを手渡された。

「カケル君、君はお祭りの進行係だ」

 警察官を見ると、哀れんだような表情で俺を見ていた。

「皆さん、落ち着きましょう。命を守る為に走ったのでそこまでの大事にはならないと思います。それに、警察官の方も仕事です。一旦僕を捕まえないと話がおかしくなります」

『納得できない。警察は何もしなかったのにな!』
『あー、お役所仕事か。気分が下がるわ』
『警察も可愛そうだと思うのは俺だけか?キリヤを止めようとして投げ飛ばされて殴られて、何もしない市民に批判されている』

「ここは、日本ですから、行かないと警察の迷惑になります」

『理屈では分かるけど感情的に納得できない』
『でも、警察に行っておかないと馬鹿がルールを守っていないと騒ぐだろ?』
『カケルへの嫉妬とクレームの多い国民性、更には国全体が慣例を優先する日本の閉塞感か』

『まあ、日本の教育自体が軍隊や工場員、規律を守る奴隷を作る為のものだからな。小姑が多いんだよ。ほら、政治家が漢字を読み間違えたとか枝葉部分の批判が多いだろ?あれが象徴的だな』
『本質の議論より枝葉部分の粗探しが多いよな。でも納得できない』


 俺は警察官の元に歩いた。
 警察官が小声で言った。

「すまない」

「いえ、手錠はいいんですか?」
「大丈夫だ。協力に感謝する」
「行きましょう」

「私、待ってるから!出てくるまで待ってるから!」
「私もです!スナイプもきゅうも一緒に待っています」

「2人にも事情聴取をお願いします。動画の証拠があるので簡単な聞き取りで終わりますので、死亡したと思われるキリヤの件についてです」

 今までなら理不尽に怒られて人のせいにされて嫌な思いをしてきた。
 でも、今は不思議と心地いい。
 俺は、条例を破った。

 でも破った事に何の後悔も無い。
 俺はパトカーに乗って警察署に入った。
 でも、リコと、カノンも警察に行くのは考えていなかった。




 ◇



 話はすぐに終わり、俺は解放された。
 動画の証拠と命を守る為の致し方のない行動だった事ですぐに出られた。

 リコとカノン、そしてスナイプときゅうが駆け寄った。
 カノンとリコが俺の手を握った。
 きゅうが俺に飛び乗り、スナイプが俺の足にすりすりした。

 リコママも笑顔で出迎えてくれた。
 車に乗るように促す。


「外で、ずっと待っていたのか?」
「ううん、私達も出たばかりだよ」
「さあ、すぐに出ましょう」

 俺は車に乗り込んだ。
 警察署の入り口から声が聞こえる。

 部長が喚いていた、いや、元部長か。

「この犯罪者が!お前のせいで俺の人生が狂った!全部お前のせいだ!」

 元部長は周りにいる出待ちの人から囲まれて責められていた。
 元部長に何を言われても何も感じない。
 元部長はそういう事をするとますます自分が苦労するだけなんだけど、分からないのか?
 多分、ここで更に悪い噂が広まって移住するしか選択肢はなくなるだろう。

 元部長は、今不幸なんだろうな。
 元部長に明るい未来はない、そう思った。

「カケル!頑張れー!」
「カケル君!お疲れ様!」
「感動した!」
「俺は味方だ!俺も頑張るよ!」

 みんなが叫んで何を言っているのか分からなくなり、歓声へと変わっていった。
 警察官が車の通る道を開ける。

「早く出てください!早く発進してください!」

 警察は、本当に大変だな。
 殴られて投げ飛ばされて、恨まれて、今はみんなを押さえてくれている。

 リコママの車が無事に発進した。

「カノン、帽子は被らないんだな」
「もう、必要ありませんから」
「そうか」

 帽子が無い方が表情が見えて良い気がする。

「帽子が無い方がお好みですか?」
「……うるさい」

「……カケル、私はカケルを利用しようとしていました。本当にすいません」
「何となく、気づいていた。いいよ」
「でも、言っておきたいです。体で奉仕する話は本心ですから」

「はあ!?」
「……いつも2人はイチャイチャしてるね」
「あら、リコはお嫁さんに立候補しないの?」
「私は……」
「リコはカケル君の事が好きなのね。分かりやすい」
「お母さん!」

「私は立候補しています。この指輪が証拠です!」
「カノン、急に大きい声出すのはやめようか。それと体で奉仕とか初めて聞いた」
「体でお返しするの間違いでしたかね?でも、借金は10倍で返して、その上で無償の奉仕もプラスパッケージでお返しします」
「どういうパッケージだよ!」

「今日も家で魔石を注入してください」
「うわ、急に話が変わった」
「話は変わっていません。後は想像にお任せします」

 グウウウウウウウウウ。
 俺のお腹が鳴っ後は
  
「カケル君、お腹は空いてるわね?」
「はい、とても」

「皆を助けてくれたお礼に美味しい物を作るわね。皆で一緒に食べましょう」
「何が食べたいですか?」
「カレーパン」

「「はははははははははは」」

「え?何々?」
「カケルはカレーパンだと思ったよ」
「やっぱりカレーパンですか」
「すぐに言ったから面白くて」
「即決でしたね」

「リコの言った通りね。下処理まで終わっているわ。後は包んで揚げるだけよ」

 みんなで笑いながらリコの家に入った。

 テーブルにはケーキが用意されていた。
 お稲荷さんとおにぎり、みそ汁もある。
 まるで、ドラマに出てくるお誕生日会や運動会のようだ。
 みんな集まって笑顔で食事を摂る。

 リコがきゅう用の座布団をテーブルに置いた。

「きゅう用の座布団も作ってあるよ」
「カレーパンを揚げたら唐揚げも揚げるわね」

 きゅうの座布団まで作ってくれたのか。
 俺の心が温かくなっていく。

「カケル?どうしたの?」
「え?なにがだ?」
「カケル、泣いてますよ」
「あ、ああ、そうか、俺は、泣いて、いるな」

 俺は、誕生日のように誰かに祝ってもらった事が無い。
 クリスマスも、お正月も何も無かった。
 運動会の食事は先生と食べた。

 でも、お誕生日会とは違うけど、おばあちゃんにバトルブーツを貰ったのがとても嬉しかった、それを思い出した。

 自転車が欲しかったけど言えなかった。

 靴が欲しかったけど言えなかった。

 そんな子供の頃を思い出す。

 でも今はもう、きゅうだけじゃないんだ。
 ここにいるみんなが大切で、そして、温かい。
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