「打倒してしまっても構わんのだろう?」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る

ぐうのすけ

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【ヘイト視点】不況のデイブック

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 ヘイトはランチが終わると新聞やデイブックの様々な情報をチェックする。

「魔道具の売り上げが落ちている」
 アーサー王国がデイブックから距離を取り、魔道具の売り上げが落ちるのは分かる。
 だが、その分ヤマトへの輸出は好調だったはず。
 何があった?

「アオールを呼べ」
 メイドは一瞬表情を変えた。
「アオール様はブレイブに殺されました。他の者を呼んできます」
「……そんなこともあった」
 どうでもいいがな。


 代わりの男が走って訪ねてきた。
 男はだらだらと汗を掻く。
「お、おまたせ、しました。魔道具の売り上げが、落ちている原因ですが、どうやらアーサー王国からヤマトに魔道具が輸出されているようです」

「そうか、最近アーサー王国とディアブロ王国の連携は進んでいるのか?」
「はい、そのようです」
「また魔物の群れを押し付けるか」
「それが、両国ともデイブックの周辺を離れるように移住したのです。魔物の押しつけは困難になっております。その影響でデイブックへの魔物の被害が増えています」

「厄介だな。魔道具の売り上げは落ちて、魔物の押しつけも出来ないか。両国が力をつけてきたようだ」
「それと、デイブックから冒険者・魔道具技術者・治癒士などがアーサー王国に移民しつつあります。デイブックの税金が高く、報酬も低いのです。アーサー王国の方が暮らしやすいと評判が高まっています。もちろん新聞では情報を規制しています。しかし口コミが広がり、アーサー王国への移民者が急増しています」

「この国は福祉が手厚い分税金は高く給金も低い。出て行きたいと思うのは当然か。福祉を削るのは世論が許さないだろう。政治家も政治生命を捨てて改革をする者はいない、か」
「……はい」

「このままでは自分で動かず批判だけを垂れ流す者が多く残り、優秀な者から国外に逃げ出すだろうな」
「そうですね」

「他に気づいた点はあるか?」
「他には、アーサー王国とヤマトの交易が活発になり、この国が価格競争に巻き込まれつつあります」
「当然だな。交易をする国が増えれば条件のいい方と取引をしたがる」

「それと、アーサー王国の英雄になったもとデイブックのウインですが、今は内政で活躍しているそうです。アーサー王国とディアブロ王国両国の王子になったとか」
「雑魚だと思っていたが、両国に取り込まれたか。少なくとも内政の能力は高いようだな」

「何でも港の開拓をしたのだとか」
「ウインは錬金術師のジョブだったな。時間さえかければ大型船も港の整備も出来る」

「それが、盗賊を全滅させたとの情報も入っております」
「……ウインのトータルレベルは分かるか?」
「今は分かりません。勇者パーティーに在籍時のレベルなら分かります」
「いくらだ?」
「140です」
「高いな。時間さえかければ、盗賊を倒す事も可能か。運よく生き延びているようだ」

 ウインはアーサー王国とディアブロ王国の王子になったか。
 ウインを批判しにくくなった。
 批判すればアーサー王国を敵に回す事になる。

 更に両国の王子になった事でこちらに取り込むことも難しくなった。
 もっともウイン自身がデイブックに戻ってきたいと思わないだろう。
 なんせこの国は寛容さに欠け、改革や新しい経営者は基本的に潰される。
 更に輸出も絶不調だ。


 この国が傾きはじめたか。
 この国をよくする方法は分かっている。

 高齢者への福祉を削り、教育の予算に振り変える。
 潰れそうな会社を助けず潰す。
 終身雇用の撤廃。
 大規模な規制緩和。
 真実の報道を行う。

 他にも思いつくがすべて短期的に痛みを伴う改革だ。
 そんな事を進めたらマスコミギルドに批判の目が向けられる。
 いくら力を持ったマスコミギルドとはいえ、批判にさらされるのは面倒だ。

 現状維持だな。
 数年この国の富を蓄えたら、ヤマトに移住する。

「5年後と10年後のデイブックの経済はどうなると思う?」
「恐らく、不況のまま停滞が5年、10年と続き、他の発展していく国に追い抜かれるでしょう。もちろん魔物の不確定要素もありますから何とも言えません」

 私の予想とほぼ同じか。
 ヤマトに資産を移していく。



 こうしてデイブック民主国の国力は衰退しつつあった。
 だがヘイトの予想を遥かに超える勢いで国は衰退していく。
 






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