「打倒してしまっても構わんのだろう?」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る

ぐうのすけ

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きつね族

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 ベリーは俺達を置いてきつね族と一緒に歩き出す。
「待て待て!俺も行くぞ!」



 こうして俺達4人はきつね族の元へと向かった。
 城下街の防壁を出てすぐにきつね族の集落があった。
 城下街と違い、何度もつぎはぎした小屋のような家が並ぶ。
 木で出来ていればまだ良い方で、布の撒いたテントのような家も見受けられる。

 俺はストレージにあるすべての食料を出した。
「使ってくれ」
 その瞬間全員が頭を下げた。

「こ、こんなに!」
「ありがとうございます!」
「何で城下町の中に住まないんだ?場所には余裕があるように見えるぞ」
 
 きつね族の顔が曇った。
 ベリーが代わりに答える。
「きつね族はキュウビの影響で城下町のみんなに怖がられているのよ。キュウビはきつね族のような見た目をしているから。買い出しの為に街に入ることは出来ても、住むことは出来ないわ」

「タケル様には食料を恵んでもらっていますが、周りの多くの者がそれにも反対しているのです。立場が悪くなってもタケル様は私達に食料を恵み続けています」

 ヤマトは食料も足りないんだったな。
 余裕が無くなると立場の弱い者に恵む余力も無くなる。
 タケルは弱い者を助けるたびに立場が弱くなるだろう。
 いや、だからこその救援要請か。


 すべての原因はキュウビか。
 ベリーが怖がられるのはベリーとキュウビの顔が似ているから。
 きつね族が城下町に入れないのもキュウビの姿がきつね族に似ているから。
 キュウビに住処を追われた魔物が城下町に迫ると食料の生産量が減る。

 だが、キュウビを倒して平和になればすぐに食料が手に入るわけではない。

 荒れた土地を耕し、種を撒いて野菜を収穫する。
 船を造って魚を取る。
 家畜はもっと時間がかかる。
 家畜は増えるまで待つ必要がある。

 短期的には魔物を狩ってその肉を食うのが手っ取り早いが、倒すべき名前持ちはキュウビだけじゃない。
 ヤマトだけでも【キュウビ】と【オロチ】、2体の名前持ちが居る。
 更にデイブックに侵攻するバグズがどう出るか分からない。
 この地に長居することも出来ない。

 アーサー王国やディアブロ王国のように魔物を狩りまくる時間は取れないだろう。

「移民」
「え?」

「なあ、きつね族をアーサー王国とディアブロ王国に移民させることは出来ないか?」

「確認したいのですが、きつね族の数は分かりますか?」
 ルナが質問する。
「正確には分かりませんが、10万前後だと思います」

 ルナが渋い顔をした。
 エムルはすぐに答えを言う。
「働く能力の無い者をそこまで受け入れるのは無理だよ。デイブックの移民を受け入れたばかりなのが痛いね」

「両国で食料生産量のギリギリまで受け入れ済みって事か」
「ギリギリまでは行かないよ。でも、今そこまでの余裕は両国に無いはずさ」

「戦える者の割合は分かりますか?多ければ多いほどいいのですわ!」
 ルナが訴えるように聞く。
 戦えるなら魔物の肉を取ってこれる。

「1割も居ないと思います」
 ルナは唇をかんだ。
 数が少なすぎるのだ。
 恐らく魔物からみんなを守る為に多くの者が命を落としている。

「俺の全財産を国に寄付する。これでも無理か?」
「それでも足りないよ」

「と、その前に大事な事を忘れていた。みんなは移民に賛成か?」

 今まで黙っていたベリーが泣きながら答える。
「皆を助けて!みんなを移民させて!」
 ベリーが泣き崩れる。

 ベリーときつね族には何かの縁がある。
 ベリーの泣き方は普通じゃない。
 出来る事をしよう。

 他のきつね族も答える。
「連れて行ってください!」
「このご恩は後で必ずお返しします!」
「子供だけでも助けてください!」
 みんなが叫び、誰が何を言っているか分からなくなる。


「ルナ、エムル、出来るだけの移民の受け入れに集中して欲しい」

「分かりましたわ」
「すぐにタケルと話を詰めるよ」
 ルナとエムルは城に向かって行った。

 まだ足りない。
 キュウビの討伐だ。
 ルナとエムルは討伐に参加できない。
 キュウビは俺が倒す。

 移民の受け入れはルナとエムルがやってくれる。
 キュウビを倒せば、ヤマトの兵は余裕が出来、魔物を狩る余裕が出てくるだろう。
 逆を言えば、キュウビの討伐を失敗すれば、きつね族が死んでいく。
 だが問題もあった。
 キュウビは炎耐性を持っている。
 それは俺の切り札を潰されるに等しい。

「キャンプファイアのスキルは、使えない」
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