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演説
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エムルとルナはタケルに事情を説明すると逆に謝られた。
「すまんのう。ワシが助けられれば良かったんじゃが」
エムルとルナはヤマトに来てすぐにアーサー王国とディアブロ王国にそれぞれ戻る。
【エムル視点】
エムルがディアブロ王国に戻ると文官と魔王に驚かれたが、事情を説明するとすぐに対応が始まった。
「確認するが、ウインの財産はすべて使っていいのだな」
「大丈夫だよ。それと難民を受け入れる船と寄付を集めたいんだ」
この時ばかりはエムル教と魔王が力を合わせて事に当たり、あっという間に難民を受け入れる準備が整って行った。
ディアブロ王国は魔王の力が強い。
魔王にはエムル教以外の敵対派閥は存在しない為、2つの勢力が力を合わせる事で最速で物事が進んでいった。
あっという間に農地の開墾計画が修正され、船の連続稼働も決まる。
「後は微調整だけで済むだろう。エムル、まさかお前と協力する事になるとはな。お前が邪魔ばかりしていたのが嘘のようだ」
「僕は邪魔した覚えは無いよ。ただ僕の過ごしやすいように制度を変えようとしただけさ」
「それを邪魔というのだ!」
でもこの流れは都合がいい。
皆を助けることが出来て、更にウインに貸しを作ることが出来た。
それに、ベリーとウインの雰囲気は実にいい。
ベリーとウインが一線を越えた仲になればなし崩し的に僕の思った展開に持って行ける。
ウインがベリーと一つになってしまえば、ウインの紳士モードを斬り崩せる。
ウイン、君は女を押し倒していいんだ。
ベリーを押し倒して、ルナを押し倒す。
となれば次は僕。
ウイン、君は理性が強すぎるんだよ。
でも、1回その前提を崩してしまえば君の野生が目を覚ますだろう。
英雄になれるほどの意思を持つ者。
その性欲は計り知れない。
いにしえより英雄は色を好むものなのさ。
「エムル、何を考えているか分からんが、悪だくみはほどほどにしておけ」
「そんな事はしていないよ。僕はただの恋する乙女さ」
そう、本当は僕の思いもよらないタイミングでウインが僕を押し倒して欲しい。
それが僕の乙女心。
僕は必至で抵抗し、それでもなおウインの力に飲まれ、体を弄ばれる。
恥じらい、そしてどう抗っても抵抗できないと悟ったその先にある快楽。
「乙女はそんな顔をしないものだ」
「そうかい?気を付けるよ」
「アーサー王国だが、移民の受け入れに手間取っているようだ」
「そうなるだろうね。元デイブックの移民者は保守的で、変化を好まないから。しかもデイブックの民の数が多くて大変だろうね」
「そこで、エムル、救援に向かって欲しい」
「そうだね。何かできる事があるかもしれないよ」
さあ、ウインへの貸しをもっと大きくするよ。
エムルはすぐにアーサー王国へと向かった。
【ルナ視点】
私はすぐアーサー王国に戻り、父とホープ大臣の協力を取り付け、国としてきつね族の救援に動いた。
「寄付やボランティアが中々集まりませんわ」
国の政策で移民者の受け入れは決まった。
船は稼働し受け入れは進んだものの、寄付とボランティアが集まらないのだ。
ホープ大臣が声をかける。
「仕方ありません。この国は移民者が多く、まだ生活が安定しないものが多いのです」
「そうですわね」
「所で提案があります」
「何でしょう?」
「演説を行って欲しいのです」
「すでに新聞や公の場で発言していますわ」
「いえ、まだ足りません」
「少しでも寄付を増やし、ボランティアを増やす必要があります」
「……分かりましたわ」
それから何日もかけて文章を考える。
そして当日。
みんなの前でホープ大臣と王が演説を行った。
そして私の番。
みんなの前に立ち、何日も考えた紙を取り出した。
皆の前に立った瞬間、ベリーが泣き崩れる姿が脳裏に浮かんだ。
この紙に書いてある内容は、王やホープ大臣が言ったことと変わらない。
いや、それ以下の物だ。
紙を読み上げても伝わらない。
私の感情で訴える。
きつね族を助けたい。
私は手に持った紙をそっと下に置く。
その瞬間、ホープ大臣がにっこりと笑った気がした。
「私には力がありません」
私の理性が訴える。
自分で何を言いたいのかまとまらない。
「寝具職人が作ってくれたベッドで寝て服職人が作ってくれた服で着飾り、料理人が作ってくれた料理を食べています。私は皆さん1人1人に生かされています」
「きつね族を助ける事で皆さんは苦労すると思います。なにも返ってこないかもしれません。苦労だけで良い事は何もないかもしれません」
理性が訴える。
悪い事は言わない方が良いと。
それでも理性に逆らう。
「でも、それでも!助けて欲しいのです!」
全部が破綻している。
それでも感情があふれ出す。
「何もできない私をどうか助けてください!お願いします!わたくしだけでは!何も、何も出来ないのです!」
涙が溢れ、膝をつく。
静寂。
失敗。
無駄だった。
静寂の後大きな拍手に包まれる。
演説が終わり、奥に下がると父は号泣していた。
「う、ぐうう、ルナ、立派に、立派になった。ぐうう、」
そう言って顔を抑えながら歩いて行った。
その後ホープ大臣が声をかける。
「ルナ様にしか出来ない素晴らしい演説でした」
「そうでしょうか?自分で何を言っているのか分かりませんでしたわ」
「人は、理性だけでは動きません。あの演説は、王や私には出来ないのです。ルナ様は皆の感情を揺さぶり、訴えました」
ホープ大臣はそう言って去って行った。
私は、ただ椅子に座ってふわふわとした感覚に包まれ、漂うようにそのまましばらく座り続けた。
その後アーサー王国に着いたエムルとホープ大臣の案でアーサー王国とディアブロ王国の陸上交易路の中間にきつね族の街が建てられる事になった。
寄付が思ったように集まらずルナは自分の無力を痛感するが、ルナの演説の影響を受けた者約1000名が新しい街の移民に立候補した。
その1000の活躍によって街は急速に拡大する。
後にその街の名を【月うさぎの街】と名付けられる。
移民したきつね族が、ルナを見た印象が月うさぎだった。
本人はその事を知らない。
補足。
月うさぎの街について
ルナ=月
ルナ=背が小さくて小動物っぽい。白いドレスアーマーを着ている。そしてよく餅を食べてる=うさぎ
となります。
ヤマトでは月のうさぎが餅をついている伝承があります。
アーサー王国の民から見るとルナはスイーツ姫。
ヤマトの民から見るとルナは餅つきうさぎのイメージなのです。
「すまんのう。ワシが助けられれば良かったんじゃが」
エムルとルナはヤマトに来てすぐにアーサー王国とディアブロ王国にそれぞれ戻る。
【エムル視点】
エムルがディアブロ王国に戻ると文官と魔王に驚かれたが、事情を説明するとすぐに対応が始まった。
「確認するが、ウインの財産はすべて使っていいのだな」
「大丈夫だよ。それと難民を受け入れる船と寄付を集めたいんだ」
この時ばかりはエムル教と魔王が力を合わせて事に当たり、あっという間に難民を受け入れる準備が整って行った。
ディアブロ王国は魔王の力が強い。
魔王にはエムル教以外の敵対派閥は存在しない為、2つの勢力が力を合わせる事で最速で物事が進んでいった。
あっという間に農地の開墾計画が修正され、船の連続稼働も決まる。
「後は微調整だけで済むだろう。エムル、まさかお前と協力する事になるとはな。お前が邪魔ばかりしていたのが嘘のようだ」
「僕は邪魔した覚えは無いよ。ただ僕の過ごしやすいように制度を変えようとしただけさ」
「それを邪魔というのだ!」
でもこの流れは都合がいい。
皆を助けることが出来て、更にウインに貸しを作ることが出来た。
それに、ベリーとウインの雰囲気は実にいい。
ベリーとウインが一線を越えた仲になればなし崩し的に僕の思った展開に持って行ける。
ウインがベリーと一つになってしまえば、ウインの紳士モードを斬り崩せる。
ウイン、君は女を押し倒していいんだ。
ベリーを押し倒して、ルナを押し倒す。
となれば次は僕。
ウイン、君は理性が強すぎるんだよ。
でも、1回その前提を崩してしまえば君の野生が目を覚ますだろう。
英雄になれるほどの意思を持つ者。
その性欲は計り知れない。
いにしえより英雄は色を好むものなのさ。
「エムル、何を考えているか分からんが、悪だくみはほどほどにしておけ」
「そんな事はしていないよ。僕はただの恋する乙女さ」
そう、本当は僕の思いもよらないタイミングでウインが僕を押し倒して欲しい。
それが僕の乙女心。
僕は必至で抵抗し、それでもなおウインの力に飲まれ、体を弄ばれる。
恥じらい、そしてどう抗っても抵抗できないと悟ったその先にある快楽。
「乙女はそんな顔をしないものだ」
「そうかい?気を付けるよ」
「アーサー王国だが、移民の受け入れに手間取っているようだ」
「そうなるだろうね。元デイブックの移民者は保守的で、変化を好まないから。しかもデイブックの民の数が多くて大変だろうね」
「そこで、エムル、救援に向かって欲しい」
「そうだね。何かできる事があるかもしれないよ」
さあ、ウインへの貸しをもっと大きくするよ。
エムルはすぐにアーサー王国へと向かった。
【ルナ視点】
私はすぐアーサー王国に戻り、父とホープ大臣の協力を取り付け、国としてきつね族の救援に動いた。
「寄付やボランティアが中々集まりませんわ」
国の政策で移民者の受け入れは決まった。
船は稼働し受け入れは進んだものの、寄付とボランティアが集まらないのだ。
ホープ大臣が声をかける。
「仕方ありません。この国は移民者が多く、まだ生活が安定しないものが多いのです」
「そうですわね」
「所で提案があります」
「何でしょう?」
「演説を行って欲しいのです」
「すでに新聞や公の場で発言していますわ」
「いえ、まだ足りません」
「少しでも寄付を増やし、ボランティアを増やす必要があります」
「……分かりましたわ」
それから何日もかけて文章を考える。
そして当日。
みんなの前でホープ大臣と王が演説を行った。
そして私の番。
みんなの前に立ち、何日も考えた紙を取り出した。
皆の前に立った瞬間、ベリーが泣き崩れる姿が脳裏に浮かんだ。
この紙に書いてある内容は、王やホープ大臣が言ったことと変わらない。
いや、それ以下の物だ。
紙を読み上げても伝わらない。
私の感情で訴える。
きつね族を助けたい。
私は手に持った紙をそっと下に置く。
その瞬間、ホープ大臣がにっこりと笑った気がした。
「私には力がありません」
私の理性が訴える。
自分で何を言いたいのかまとまらない。
「寝具職人が作ってくれたベッドで寝て服職人が作ってくれた服で着飾り、料理人が作ってくれた料理を食べています。私は皆さん1人1人に生かされています」
「きつね族を助ける事で皆さんは苦労すると思います。なにも返ってこないかもしれません。苦労だけで良い事は何もないかもしれません」
理性が訴える。
悪い事は言わない方が良いと。
それでも理性に逆らう。
「でも、それでも!助けて欲しいのです!」
全部が破綻している。
それでも感情があふれ出す。
「何もできない私をどうか助けてください!お願いします!わたくしだけでは!何も、何も出来ないのです!」
涙が溢れ、膝をつく。
静寂。
失敗。
無駄だった。
静寂の後大きな拍手に包まれる。
演説が終わり、奥に下がると父は号泣していた。
「う、ぐうう、ルナ、立派に、立派になった。ぐうう、」
そう言って顔を抑えながら歩いて行った。
その後ホープ大臣が声をかける。
「ルナ様にしか出来ない素晴らしい演説でした」
「そうでしょうか?自分で何を言っているのか分かりませんでしたわ」
「人は、理性だけでは動きません。あの演説は、王や私には出来ないのです。ルナ様は皆の感情を揺さぶり、訴えました」
ホープ大臣はそう言って去って行った。
私は、ただ椅子に座ってふわふわとした感覚に包まれ、漂うようにそのまましばらく座り続けた。
その後アーサー王国に着いたエムルとホープ大臣の案でアーサー王国とディアブロ王国の陸上交易路の中間にきつね族の街が建てられる事になった。
寄付が思ったように集まらずルナは自分の無力を痛感するが、ルナの演説の影響を受けた者約1000名が新しい街の移民に立候補した。
その1000の活躍によって街は急速に拡大する。
後にその街の名を【月うさぎの街】と名付けられる。
移民したきつね族が、ルナを見た印象が月うさぎだった。
本人はその事を知らない。
補足。
月うさぎの街について
ルナ=月
ルナ=背が小さくて小動物っぽい。白いドレスアーマーを着ている。そしてよく餅を食べてる=うさぎ
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