「打倒してしまっても構わんのだろう?」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る

ぐうのすけ

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ヘイトの暗躍 【ヘイト視点】

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 私はヤマトの南東島に移住した。
 南東島の領主と関係を築いていたおかげで今豪邸に住んでいる。
 もちろん領主には十分な金を掴ませている。

 当然の結果だ。
 デイブックは苦戦しているようだが知った事ではない。
 有能な者はアーサー王国にとっくに移民している。
 残っているのは何もせず、不満だけを垂れ流すクズどもだ。


 ヘイトは知らない。
 命をかけ、国を守る為に戦う者も居る事実を。

「ヘイト様、領主からの使者が訪れています!」
「要件はなんだ?」
「聞いた所、ヤマトの本土に居るタケルを倒す為協力して欲しいとの事です」
「ふむ」

 本土のタケルか。
 この南東島と本土のタケルは敵対関係にある。
 戦争になるのも時間の問題だろう。
 南東島が勝利すれば私も安泰だ。

「100の斥候を本土に出し、情報を集める。うまくいけば敵勢力を混乱させることが出来るだろう」
「そのように伝えます」
 その後すぐにヘイトの直属部隊が本土に送られた。



 ◇



「ヘイト様、情報収集が終わりました」
「結果は?」
「元デイブックの勇者パーティーベリーですが、タケルの救援要請を受けて今本土に居ます。名前持ちのキュウビと姿が似ているようです。顔だけ見れば双子のように見え、一部の兵から恐れられているようです」

「使えそうだな。フェイクニュースの準備は出来ているか?」
「は!旧マスコミギルドの精鋭記者に案を用意させてあります」

 斥候は紙を取り出す。
 ヘイトは無言で紙をめくる。

 なるほど。
 ベリーがキュウビで、気が狂ったタケルがキュウビと結託して人をキュウビの餌にしている、か。
 更にきつね族の悪い噂を流して食料を施すタケルを悪者に持って行く。
 悪くない。

 成功すればこちらに有利。
 失敗してもこちらの不利にはならない。
「このまま実行しろ」
「かしこまりました」



【ウイン視点】

 船で本土に渡った俺とベリーはタケルの居る街に入った。
 タケルの居る城下町に入ると、ベリーが城下町の民に睨みつけられた。
 俺はベリーを庇うように盾になる。

「キュウビだ!化けて出ている!」
「人を食らっているだよ!」

 人が集まり石を投げられた。
 俺はベリーを抱えて屋根に飛び移り場所を移動する。
「そう言えば姿を隠すよう言われていた。2人で外套を装備しよう」
「……そうね」
 ベリーの元気がない。
 
「ベリー、気にするな。すぐにタケルの元に向かうぞ」
「分かったわ」



 俺とベリーはタケルの城の前にたどり着く。
 門の前に男が待ち構えるように立っており、ベリーを指差して叫ぶ。
「ああああああ!化け物だ!キュウビの化け物が出たあああああ!」
 俺はあの動きを見て確信する。
 デイブックの人間だ。
 デイブック人独特の動きがあり、見ればデイブック人だと分かるのだ。
「フェイクニュースか」

 城の中から兵士が出てくる。
「貴様!戯言を言って民を騙すのはやめろ!」

「ああああ!やはりタケル様も狂っている!私は無実の罪で兵士になぶり殺されるううぅう!キュウビの餌にされるんだああああ!」
 
 兵士が刀を抜き、男に向かって構える。
 俺はすぐに止める。
「やめろ!刀をしまうんだ!」
「しかし、こやつはベリー殿とタケル様を侮辱した!」
「今は俺を至急タケルに会わせてくれ!ヨウザンからそうするよう言われている!頼む!タケルから呼ばれている!大事な事なんだ!」
 
 殺したら駄目だ!
 兵士に暴行を行わせる。
 それが奴らの狙いだ!
 陰湿な動きがデイブックのマスコミギルドのように見える。

「くう!」
 息を荒げながら兵士は刀を納刀し、俺を城の中に案内する。
 ベリーの顔色が悪くなっていた。

 マスコミギルドか?
 奴ら、後で潰してやる。

 俺がタケルの城にたどり着くとすぐに城の中に入れられた。
 まるでベリーを隠そうとしているようだ。

「ようやく来たか。まずい事になっておる」
「どうした?」

「城下町に不審な者が紛れ込んで居る。ワシやベリーのふぇいくにゅうすというやつを流しておるのだ」
「捕まえたらいいだろ。いや、そうさせるやつらの作戦か」

「そうじゃの。下手に捕らえようとすると、キュウビの餌にされると騒ぎおる。明らかにワザとじゃな。ワシが乱心し、キュウビの餌にする為無実の罪の者を捕らえようとしておると思わせたいんじゃろ。更にきつね族がキュウビの部下でこの城下町を落とそうと企んでおると噂を流しておるんじゃ」

「みんなはそんなことしないわ!」
「分かっておるわ!」
「待て待て、2人とも落ち着け。きつね族は皆本土から移民しただろ?それにキュウビはテイム済みだ。問題無い」

「残念ながら奴らの方が一枚上手じゃ。キュウビを城に隠し、人を捕らえてキュウビの餌にしておると言っておる。きつね族は城を落とすために闇に紛れておると触れ回っておる」

 話がめちゃくちゃだ。
 矛盾が多い。

 だが、人は恐怖に敏感だ。
 フェイクニュースを流されれば、噂は独り歩きし、大きくなっていく。
 俺もデイブックでフェイクニュースを食らったが、滅茶苦茶な話でも人は鵜呑みにする。

 話に矛盾があり、皆がそれに気づきだすと新たなストーリーのフェイクニュースを流して修正していく。
 
「それでの、ワシだけでなくベリーもターゲットになっておる。すぐにアーサー王国に帰るのじゃ。長距離船の手配は出来ておる」

「だれが噂を流しているか分かるか?」
「恐らく、南東島か南西島じゃな。もしくは2島が手を組んでおる。目的はワシの首じゃな」
「俺達の事より、タケルの方が危険だろ」

「すでにキュウビとオロチはおらん。ウインのおかげじゃ。ここからは我らの戦いじゃ」

「ねえ、私が居たら迷惑なの?」
「正直に言えば負担になっておる。すまぬ」
「そう、私、少しだけ思い出したことがあるの。私のスキルで何とかなるかもしれないわ。私が見えなければ負担にならないのよね?」

「そうじゃの」
「ウイン、オロチのテイム契約を私に移して!きっとそれでスキルを使えるわ」
「分かった」

 俺はオロチの契約をベリーに移した。
 ベリーの力が抜ける。

「早く、眠りにつく前に!ウイン!私の【憑依】を受け入れて」
 ベリーは必至な顔で言った。

「どうした?それに憑依ってどういうスキルなんだ?」
「早く!私が眠ったらウインの負担になるわ!ウインは私を守る為に死ぬかもしれないわ」
「分かった。受け入れよう」

「憑依」
 ベリーが俺の体に吸い込まれるように入り込んできた。
『ありがとう。私、少し眠るね』
 ベリーの意識が失われていく感覚がする。

『ベリーが休眠状態に入りました。3つの魂の融合を行います。休眠解除まで108年かかります』

 108年だと!




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