ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ8．すり替えたの。あの二人を。

「迷っているのね？」

金色の髪をなびかせて、彼女は笑っている。

落ち着いて。
だって天使なわけがない。
私の心を読まれたような気がしたのも
ただの私の勘違い。

「彼女は、私たちの仲間よ。彼女も気づいてる。」

「へ？」

「甘実かんなよ。彼女もこちら側。」

「…て、天使がどうのって話？」

「えぇ。」

そんなことを言っているうちに
天使の金髪の髪色がまた茶色に変わっていく。

動揺しない！手品よ！…たぶん。

「だから、手品じゃないってば」

「うっ…」

なんだかな…

「あなたは、私の考えていることが分かるの？」

「それが私の力だもの。」

彼女は屋上へと入っていき
私は急いでそれを追いかける。

「あの…あなたに聞きたいことがあるの。」

何から聞けばいいんだろう…
みかんのこと？
天使がどうのって話？

「いいわ。なんでも答えてあげる。」

屋上の中央でスカートと長い髪を広げながら
くるりと私の方に振り向いて
不敵な笑顔をうかべている。

「……あなたは…何者なの？」

「私は最初に言ったとおり、あなたと同じ天使よ。そして、あなたと同じ人間。」

「え！？人間なの？」

「ええ。」

つい驚いてしまった…そうよね。
というか、普通は驚くところ逆…
よく考えてみれば格好だって私と同じ制服だし
リボンの色は…て、リボンしてないな…何年生なんだろ…

「自己紹介しなくてはね。私は九理いちじくあや。」

変わった名前…

「あなたが知りたいのは甘実かんなが恋している人物。そうね…あなたが思っている通りが答えなのだけれど…」

「なんでそれを…?!」

「あなたが考えていることは、私に見えているんだもの」

くすっと上品に笑い、すぐに私に背中を向けた。

この人は本当に私の頭の中を覗けるんだ…
全身鳥肌が立ち、体が震えた。
だって、こんな状況ありえないもの。
…でも、今は背に腹は代えられない！
みかんのことを知っているなら
沢山聞きたいことがある！

「甘実かんなは、すり替えたの。あの二人を。」

「え？」

「彼女は自分が出会ったのは二階堂優だと、最初からすべてをすり替えてしまったわ。」

「ちょっと待って…」

「早くしないとすべてを忘れてしまう。」

「…－－っ!!だから!!最初から!!分かるように言って!!」

「………」

あ…

「…ください。」

九理が吹き出し、笑い出した。

「ふふふ…ごめんなさい！ちょっと話を急ぎ過ぎたかしら？」

何よ…私が滑ったみたいじゃない。
恥ずかしい…

「……みかんの話、よく意味が分からないです！」

こーなったらとことん聞き出してやろうじゃない！

「じゃあ、まず天使の話から。」