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回-recovering-
F21.兄に会いに行きます。
しおりを挟む何も解決しないまま私は放課後の図書室へと向かう。
みかんには結局何も聞けていない。
何を聞いても何もないの一点張りで、
何がそんなにみかんを頑なにしているのか分からないままだ。
真君が図書カウンターで受付をする傍ら、私は今日のみかんの様子を伝えた。最初こそ驚いた様子の真君だったが、その後は何やら考えている様子で黙り込んでしまった。
「どうしたんですかね…2人とも。」
「そうだね…みかんも、わかめも、何があったのかな。」
「そうじゃなくて」
「?」
「甘実さんと、星先輩です。」
思わず私?と声に出して驚いたが、真君は冷静に首を縦に振った。
何か変なことをしてしまったかと考える私に、
いつもの優しい顔で言ったー
「いつもなら僕より先に兄のところへ行くでしょう?」
図星だったが、何となく答え辛くて黙り込んだ。
目を逸らした私に真君はまた優しいことを言って来る。
「何があったんですか?…て、僕には言いづらいですかね…」
みかんは昨日から一度も真君に連絡を取らず、会いにも来ていないそうだ。
きっと真君も不安だろう…それなのに私の様子まで心配してくれるなんて、どこまで心が広いんだろうか…?
「ううん。…聞いてほしい。」
そのまま、私はぐちゃぐちゃの分からない心のまま、
この前あったこと、思ったこと、全部吐露してしまった。
まるで箇条書きの文章を読み上げるみたいに、単語をつなげて。
ただ黙って聞いてくれる真君は、あいつとそっくりの顔なのにやっぱり全然違う、別人だ。正反対と表現しても相違ないんじゃないだろうか。
やがて私が話し終わると、少しの沈黙があった。
こんな変な話をしてきっと返事に困っているんだろう。
それもそうだ。私自身何でこんなことになっているのかよくわかっていないのだから。
痺れを切らして謝ろうとした私に真君は意外な言葉を放った。
「ごめんなさい。」
私より先に真君が謝る。
「僕のせいですよね」
一瞬どういう意味か考えてしまったが、
考えてみれば、この話は真君にすべきことではなかった。
二階堂と気まずくなっているのは確かに真君の話をしていたからだったーーでもそれは、別に真君がどうという話ではない。私が気にしているのはその後の方だからだ。
二階堂と喧嘩するのは珍しいことじゃない。今まで幾度となく言い合いになったし、だからといって会いづらくなるなんてことはなかったーーなんでかあいつのはっきりとした拒絶に、戸惑い、動揺した。
そんな自分が分からないんだ。
それでも真君は自分のせいだと言っていた。
自分の考えをしっかり持っているのも、優しいのも、本当にみかんとそっくりだ。
それはともかく、気にしなくていいと言う私に、真君は予想外のことを言ってきた。みかんが昨日から真君に連絡もせず、会いにも来ずにいること、私と二階堂との事に責任を感じていることが重なったためのかもしれないー
「僕、兄に会いに行きます。」
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