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第25話「追憶のラーニャ」
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ラーニャ・ビレッジ。
彼女は盗賊と魔法使いの間に生まれた女の子だった。間に、とは言ったが、ラーニャが生まれる前に盗賊の父親は死んだ。
母のヒストは、随分苦労してラーニャを育てた。
ラーニャは普通の女の子だったが、赤子の時はよく泣く子で、ヒストのストレスは尋常ではなかった。それはヒストのストレス耐性があまりにもなかったからというのも、あるかもしれない。
ヒストは何度もラーニャを捨てようと思ったが、亡き夫のことを思うとラーニャを手放すことはできなかった。全ては亡き夫のために、ラーニャを育て上げた。
帝国の規定で、ラーニャが学校に通えるようになった時。ラーニャが七歳の時だ。
ヒストはラーニャを捨てることにした。ラーニャは母親であるヒストを愛していたし、その母親の手で捨てられるラーニャの絶望は、底知れない。
「あなたはこれから、親戚のアゼルさんのところで過ごしなさい」
「なんで、お母さん。私、お母さんと一緒にいたい」
「駄目よ」
ヒストの心はすでに死んでいた。泣き噦るラーニャの姿を目にしても、ストレスさえ感じなくなるほど……。
「あと、この言葉を聞きなさい。そして、誰にも言っては駄目よ」
ヒストは一呼吸置いた。
「『あなたは幸せにならず、呪われながら死ね』」
その時、ラーニャの心に闇が住み着いた——いや、五年前。
「あなたが二歳の時にも、この呪術を使ったわ。だから、聞き覚えがあるはず——いえ、一生、あなたはこの言葉を忘れることはない。さよなら」
呆然とするラーニャ。これは魔法である。意識をなくすまではいかなくとも、意識をそらす魔法。そして、二度、相手に使うことで、相手に何かしらの呪いを与える魔法。『何かしら』と、いうのは、呪いをかける側による情が起因になる呪い。
たとえば、ヒストの場合。
彼女は魔法使いなので、ラーニャが二歳の時にかけた呪いが魔力に影響させるものだったりする。
つまり。
ラーニャが十六になっても魔力成長期であるのは、ヒストが少なからず、どこかでラーニャが魔法使いになることを拒んだのかもしれない。同族になることを拒んだのだ。だから、ラーニャの魔力は、二歳の時にかけられた呪いのせいで、魔力成長期を抜け出せていないのだ。
そんなことを知らないリーデルは。
「おっと。どんどん速くなっていくわね」
魔力が膨張し、暴走するラーニャと戦闘を続けて、五分が経過している。
「にゃああああッ」
叫ぶラーニャから避け続け、時に封印をかけて動きを封じ、たまにぶん殴ってぶっ飛ばしていた。リーデルの小さな体躯で十六歳の女の子をぶっ飛ばすというのもなかなかの腕っ節だが、それも魔力のなせる技である。
「はあ。そろそろ実験は終わりね。あなたに注入した魔力を取り出せば、落ち着くはず——死なないのが奇跡みたいなものだしね」
リーデルは、実験の終わりを宣言する——
彼女は盗賊と魔法使いの間に生まれた女の子だった。間に、とは言ったが、ラーニャが生まれる前に盗賊の父親は死んだ。
母のヒストは、随分苦労してラーニャを育てた。
ラーニャは普通の女の子だったが、赤子の時はよく泣く子で、ヒストのストレスは尋常ではなかった。それはヒストのストレス耐性があまりにもなかったからというのも、あるかもしれない。
ヒストは何度もラーニャを捨てようと思ったが、亡き夫のことを思うとラーニャを手放すことはできなかった。全ては亡き夫のために、ラーニャを育て上げた。
帝国の規定で、ラーニャが学校に通えるようになった時。ラーニャが七歳の時だ。
ヒストはラーニャを捨てることにした。ラーニャは母親であるヒストを愛していたし、その母親の手で捨てられるラーニャの絶望は、底知れない。
「あなたはこれから、親戚のアゼルさんのところで過ごしなさい」
「なんで、お母さん。私、お母さんと一緒にいたい」
「駄目よ」
ヒストの心はすでに死んでいた。泣き噦るラーニャの姿を目にしても、ストレスさえ感じなくなるほど……。
「あと、この言葉を聞きなさい。そして、誰にも言っては駄目よ」
ヒストは一呼吸置いた。
「『あなたは幸せにならず、呪われながら死ね』」
その時、ラーニャの心に闇が住み着いた——いや、五年前。
「あなたが二歳の時にも、この呪術を使ったわ。だから、聞き覚えがあるはず——いえ、一生、あなたはこの言葉を忘れることはない。さよなら」
呆然とするラーニャ。これは魔法である。意識をなくすまではいかなくとも、意識をそらす魔法。そして、二度、相手に使うことで、相手に何かしらの呪いを与える魔法。『何かしら』と、いうのは、呪いをかける側による情が起因になる呪い。
たとえば、ヒストの場合。
彼女は魔法使いなので、ラーニャが二歳の時にかけた呪いが魔力に影響させるものだったりする。
つまり。
ラーニャが十六になっても魔力成長期であるのは、ヒストが少なからず、どこかでラーニャが魔法使いになることを拒んだのかもしれない。同族になることを拒んだのだ。だから、ラーニャの魔力は、二歳の時にかけられた呪いのせいで、魔力成長期を抜け出せていないのだ。
そんなことを知らないリーデルは。
「おっと。どんどん速くなっていくわね」
魔力が膨張し、暴走するラーニャと戦闘を続けて、五分が経過している。
「にゃああああッ」
叫ぶラーニャから避け続け、時に封印をかけて動きを封じ、たまにぶん殴ってぶっ飛ばしていた。リーデルの小さな体躯で十六歳の女の子をぶっ飛ばすというのもなかなかの腕っ節だが、それも魔力のなせる技である。
「はあ。そろそろ実験は終わりね。あなたに注入した魔力を取り出せば、落ち着くはず——死なないのが奇跡みたいなものだしね」
リーデルは、実験の終わりを宣言する——
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