15 / 49
offender
しおりを挟む
朝日の部屋に戻ると、気持ちを切り替えるように勇ましく腕まくりをして、料理に取りかかった。
よく洗ったジャガイモをまな板の上に並べて、皮がついたまま輪切りにしていく。これを、バターを熱したフライパンで焼く。
火の通りを早くするために、事前に電子レンジで加熱しておきたいところだけど、その電子レンジがない。朝日はお弁当をいつも買ってすぐに温めてもらうから、わざわざ部屋には必要ないらしい。
このご時世に電子レンジを持たないなんて……! と嘆いたところで召喚されるはずもなく、しかたがないので、ジャガイモの厚みをいつもより薄めにした。
途中で、鍋を持ってくるのを忘れたと気づいたけど、取りに戻るのは億劫だ。
手間だけど、一旦ジャガイモを取り出してフライパンを洗う。コンロの火でさっと熱して乾かして、そこにレトルトのミートソースをぶちまけた。
煮立たせる間に、玉ねぎを手早くみじん切りにする。
ごはん作りは時間勝負のところがある。頭の中は、作業を効率良く進めることだけでいっぱいになる。余計なことを考えずに済むから、私は料理が嫌いじゃなかった。
レインがぽてぽてと足音を立てながら、台所にやってきた。
帰ってきた時に姿が見当たらなかったから、たぶん寝室で一寝入りしていたんだろう。足元にまでくると大きな口を開けてあくびした。そうかと思うと、小さな鼻をひくひくとさせる。
「今日のお昼のメニューは、なんちゃってポテトラザニアだよ。簡単だけど美味しいの。でも、レインにはあげられないや。ちょっと待ってね」
カラーボックスから猫用フードの袋を取り出す。レイン専用のプラスチックのお皿にカラカラと出して、揃えられた前脚のそばに置いた。ついでに、お水も新しく入れ替えて一緒に並べた。
レインはむさぼるようにして食べて、飲んだ。私は動物を飼ったことがないので、たったそれだけのことが楽しくて、嬉しくてたまらなかった。
なにげなく周りを見回せば、この部屋にはゴミ箱もない。
食事を済ませて空いた容器を、朝日はどうしているんだろう。
ひょっとして、超がつく潔癖症なんだろうか。部屋に置いておきたくなくて、ゴミが出るたびに外に捨ててきているとか。
だとしたら、どろどろの足で床を汚してしまって、悪いことしたなぁ。
そんなふうに考えていたら、レインがふわふわの前足を、私のつま先にちょんと乗せた。気にするなよ、と言ってくれているみたいで、噴き出してしまった。
焼いたポテトとチーズを重ねたラザニア風をメインに、ハムを乗せたグリーンサラダ、コンソメスープ。私はこれで十分にお腹いっぱいになるけど、朝日が足りなかった場合にと、食パンに目玉焼きとマヨネーズを乗せて焼いてあげようと準備しておいた。
リビングに行って壁掛け時計を確かめる。
何だかんだやっていたら、帰ってきてから一時間以上が過ぎていた。
朝日は何時くらいに戻ってくるんだろう。
どんな用事でどこまで行ったのかは訊かなかった。でも、お昼ごはんの時間には戻るようなことを言っていたし、そろそろ帰ってくるかもしれない。
そう思っていたら、インターホンが鳴った。
私はすっ飛んでいって、確かめもせずに玄関のドアを開けた。
そこにいたのは朝日じゃなかった。二人の見知らぬ男だった。
よく洗ったジャガイモをまな板の上に並べて、皮がついたまま輪切りにしていく。これを、バターを熱したフライパンで焼く。
火の通りを早くするために、事前に電子レンジで加熱しておきたいところだけど、その電子レンジがない。朝日はお弁当をいつも買ってすぐに温めてもらうから、わざわざ部屋には必要ないらしい。
このご時世に電子レンジを持たないなんて……! と嘆いたところで召喚されるはずもなく、しかたがないので、ジャガイモの厚みをいつもより薄めにした。
途中で、鍋を持ってくるのを忘れたと気づいたけど、取りに戻るのは億劫だ。
手間だけど、一旦ジャガイモを取り出してフライパンを洗う。コンロの火でさっと熱して乾かして、そこにレトルトのミートソースをぶちまけた。
煮立たせる間に、玉ねぎを手早くみじん切りにする。
ごはん作りは時間勝負のところがある。頭の中は、作業を効率良く進めることだけでいっぱいになる。余計なことを考えずに済むから、私は料理が嫌いじゃなかった。
レインがぽてぽてと足音を立てながら、台所にやってきた。
帰ってきた時に姿が見当たらなかったから、たぶん寝室で一寝入りしていたんだろう。足元にまでくると大きな口を開けてあくびした。そうかと思うと、小さな鼻をひくひくとさせる。
「今日のお昼のメニューは、なんちゃってポテトラザニアだよ。簡単だけど美味しいの。でも、レインにはあげられないや。ちょっと待ってね」
カラーボックスから猫用フードの袋を取り出す。レイン専用のプラスチックのお皿にカラカラと出して、揃えられた前脚のそばに置いた。ついでに、お水も新しく入れ替えて一緒に並べた。
レインはむさぼるようにして食べて、飲んだ。私は動物を飼ったことがないので、たったそれだけのことが楽しくて、嬉しくてたまらなかった。
なにげなく周りを見回せば、この部屋にはゴミ箱もない。
食事を済ませて空いた容器を、朝日はどうしているんだろう。
ひょっとして、超がつく潔癖症なんだろうか。部屋に置いておきたくなくて、ゴミが出るたびに外に捨ててきているとか。
だとしたら、どろどろの足で床を汚してしまって、悪いことしたなぁ。
そんなふうに考えていたら、レインがふわふわの前足を、私のつま先にちょんと乗せた。気にするなよ、と言ってくれているみたいで、噴き出してしまった。
焼いたポテトとチーズを重ねたラザニア風をメインに、ハムを乗せたグリーンサラダ、コンソメスープ。私はこれで十分にお腹いっぱいになるけど、朝日が足りなかった場合にと、食パンに目玉焼きとマヨネーズを乗せて焼いてあげようと準備しておいた。
リビングに行って壁掛け時計を確かめる。
何だかんだやっていたら、帰ってきてから一時間以上が過ぎていた。
朝日は何時くらいに戻ってくるんだろう。
どんな用事でどこまで行ったのかは訊かなかった。でも、お昼ごはんの時間には戻るようなことを言っていたし、そろそろ帰ってくるかもしれない。
そう思っていたら、インターホンが鳴った。
私はすっ飛んでいって、確かめもせずに玄関のドアを開けた。
そこにいたのは朝日じゃなかった。二人の見知らぬ男だった。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる