Rain man

朋藤チルヲ

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offender

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 朝日の部屋に戻ると、気持ちを切り替えるように勇ましく腕まくりをして、料理に取りかかった。

 よく洗ったジャガイモをまな板の上に並べて、皮がついたまま輪切りにしていく。これを、バターを熱したフライパンで焼く。

 火の通りを早くするために、事前に電子レンジで加熱しておきたいところだけど、その電子レンジがない。朝日はお弁当をいつも買ってすぐに温めてもらうから、わざわざ部屋には必要ないらしい。
 このご時世に電子レンジを持たないなんて……! と嘆いたところで召喚されるはずもなく、しかたがないので、ジャガイモの厚みをいつもより薄めにした。

 途中で、鍋を持ってくるのを忘れたと気づいたけど、取りに戻るのは億劫だ。
 手間だけど、一旦ジャガイモを取り出してフライパンを洗う。コンロの火でさっと熱して乾かして、そこにレトルトのミートソースをぶちまけた。
 煮立たせる間に、玉ねぎを手早くみじん切りにする。

 ごはん作りは時間勝負のところがある。頭の中は、作業を効率良く進めることだけでいっぱいになる。余計なことを考えずに済むから、私は料理が嫌いじゃなかった。

 レインがぽてぽてと足音を立てながら、台所にやってきた。
 帰ってきた時に姿が見当たらなかったから、たぶん寝室で一寝入りしていたんだろう。足元にまでくると大きな口を開けてあくびした。そうかと思うと、小さな鼻をひくひくとさせる。

「今日のお昼のメニューは、なんちゃってポテトラザニアだよ。簡単だけど美味しいの。でも、レインにはあげられないや。ちょっと待ってね」

 カラーボックスから猫用フードの袋を取り出す。レイン専用のプラスチックのお皿にカラカラと出して、揃えられた前脚のそばに置いた。ついでに、お水も新しく入れ替えて一緒に並べた。
 レインはむさぼるようにして食べて、飲んだ。私は動物を飼ったことがないので、たったそれだけのことが楽しくて、嬉しくてたまらなかった。

 なにげなく周りを見回せば、この部屋にはゴミ箱もない。
 食事を済ませて空いた容器を、朝日はどうしているんだろう。
 ひょっとして、超がつく潔癖症なんだろうか。部屋に置いておきたくなくて、ゴミが出るたびに外に捨ててきているとか。

 だとしたら、どろどろの足で床を汚してしまって、悪いことしたなぁ。
 そんなふうに考えていたら、レインがふわふわの前足を、私のつま先にちょんと乗せた。気にするなよ、と言ってくれているみたいで、噴き出してしまった。

 焼いたポテトとチーズを重ねたラザニア風をメインに、ハムを乗せたグリーンサラダ、コンソメスープ。私はこれで十分にお腹いっぱいになるけど、朝日が足りなかった場合にと、食パンに目玉焼きとマヨネーズを乗せて焼いてあげようと準備しておいた。

 リビングに行って壁掛け時計を確かめる。
 何だかんだやっていたら、帰ってきてから一時間以上が過ぎていた。

 朝日は何時くらいに戻ってくるんだろう。
 どんな用事でどこまで行ったのかは訊かなかった。でも、お昼ごはんの時間には戻るようなことを言っていたし、そろそろ帰ってくるかもしれない。

 そう思っていたら、インターホンが鳴った。
 私はすっ飛んでいって、確かめもせずに玄関のドアを開けた。

 そこにいたのは朝日じゃなかった。二人の見知らぬ男だった。
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