運命のひとーSADAME NO HITOー

朋藤チルヲ

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「とはいえ、生活費まで出させては、逆にこちらの立場も不安定になる。それなら、我が家の生活の基盤が整うまでにしようと考えた。ひとまず就職まで世話してもらえれば、あとはどうにでもなる」

 福永さんの口からすらすらと出てくる話に、矛盾はないと感じながらも、信じられないわたしがいた。
 こんなことを本当に自分の両親が考えたのだろうか。本当にこんなことが、わたしのごく身近で起こっていたことなのだろうか。
 でも、だとしたら。

「……お見合いの話も」
「そうだろうな。償いの一貫だ。笑えない話だと思わないか」

 そこで、注文した料理が運ばれてきた。
 青い顔をしているだろうわたしに、女性は少しだけ心配そうな目を向けながらも、皿を並べたらすぐにこの場を離れた。

「そうまでして詫びたい気持ちは汲んでやってもいいが、娘を供物のように差し出すのはいかがなものかと思う」
「……そんな」

 弱く首を振る。
 信じられない。あのパパが。

「嘘かどうかは、帰って姉さんにでも訊いてみたらいい」
「え……?」
「妹にすべてを話してやってくれと電話してきたのは、彼女だ」

 そう言うと、福永さんは焼き鳥に手を伸ばした。

「温かいうちに食べたらどうだ。ここの焼き鳥はうまい」
「姉が、電話を……? 二人はやっぱり知り合いだったんですか……?」
?」
「あ……」

 しまった、と思う。
 わたしが社員名簿を見たことを、福永さんは知らない。
 よくよく考えれば、二人は同期なのだから、お互いの連絡先を知っていてもおかしなことではなかった。

 上目遣いで睨むような視線を寄越した福永さんだったけど、どうでもいいと思ったのか、すぐに視線を焼き鳥に移した。齧りつく。

 これまで何度か、見ていられないといったふうに手を貸してくれた、わたしを気にかけて冗談を言ってくれた、その姿と今の福永さんが重ならない。短い間でも、優しい人なのだと感じた福永さんは、わたしの幻想だったのか。

「ずっと……憎らしいと思っていましたか……?」

 たまらず問いかける声が震えた。

「憎らしい?」
「わたしが……わたしのせいですよね。妹さんが……だから」
「わかっているのなら、今さら訊くこともないだろう」

 福永さんの言葉が、わたしの胸に刃を立てる。痛くて痛くて、涙が滲んだ。
 悪い予感は当たった。当たりすぎだ。これ以上悪いことなんかないってくらいに。

「……食べなさい。しっかり食べないと身体が持たない」

 食べられるわけない。
 わたしは身体に何かを取り入れるどころか、涙を排出するだけ。

 福永さんはそれっきり、何も言わなかった。
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