あと5分だけ

朋藤チルヲ

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Re:side A

エンディング

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 送られてきた、窓からこちらを覗き込むそのスタンプに、わたしはすぐに同じスタンプを返した。




「あれ!? 仕事は!?」

 彼のメッセージのお尻には、泣き笑いの絵文字。

 そこは、驚いた顔を使うべきではないのか、とわたしは心の中で突っ込む。それではまるで喜んでいるみたいだ。

 はっきり言って仕事の最中である。

 だけど、五分くらいならプライベートに費やしたところで、脱稿の時間にそこまで大きな差が出るものでもないしな、と思った。

 それより、こっちの五分のほうが、少しばかり重要に思えてしまった。でも、それを正直に言うのは憚れる。

「なんでだろうね」

 わたしはそう返した。

 なんでだろうね。本当になんでだろう。

 そして、連投する。

「あなた、本当は誰?」

「え!?」

「だって、こんなに短いスパンでメッセージを送ってくるなんて、あの彼にはあり得ない」




 その返事がくるまでには、けっこうな間が空いた。

 すぐに既読がつくから、アプリを閉じてはいないということだ。気分を害したのだろうか、と思って珍しく不安になった。

 ようやく次の文字が画面に現れる。

 意を決したような雰囲気を携えて。

 そう感じるのは、おそらくわたしの勝手な思い込みなのだろうけど。




「僕は」




 彼と出会ったのは、ひたすらに暑い夏の真っ只中だった。









(fin)
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