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【天界0】
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「あやまち、ですか?」
彼の口から、そんな言葉を聞く日がくるとは思わなかった。
「僕も最初から、子供のものだけを選んでいたわけではないよ」
「何か、きっかけがあったということですか?」
きっかけがあって、過ちをおかすことになってしまったのか。それとも、きっかけが、過ちそのものだったのか。そもそも、完璧なウリエルが失敗することが信じがたい。
「ある人間が、生まれ落ちた時代で、とても多くの子供の命を奪ってしまった」
「え?」
「その人間がその時代の、その場所に転生することを勧めたのは、僕だ」
その事実は、あまりにも滑らかに語られたものだから、耳にするすると入りこんで、そのまま留まることなく、また体外へ出ていってしまったかのように感じられた。
「偶然、知ってしまったんだ」
ウリエルは自嘲気味に笑う。
確かに、それはそうあることではなかった。
本部から、転生が決定したことの報告はあっても、それ以降のことについては知らされない。彼らも、一切関知しない。ジャッジマンの仕事は、ジャッジすることのみだからだ。無責任にも聞こえるけれど、生まれ変わる人間一人一人に責任を持っていたら、天使はそれこそ眠る暇もない。
そして、それは我々も同じだ。
どうやってそれを知りえたのかについては、彼には披露する気がないようだ。
でも、と思い当たる。過去にジャッジを受け持った人間の書籍を、偶然にも再び手に取ってしまうことは、ありえないだろうか。
「僕は、きっとおごっていたんだよね」
ウリエルは、まるで他人に起きた出来事を話すみたいな口ぶり。
「自分の出す答えが間違うことがあるなんて、少しも思っていなかったんだよ」
「でも、それは、ウリエル様のせいではありません」
ようやく否定することができた。
「魂の本質は、変わらないのかもしれません。しかし、考え方や哲学は、環境や経験によってつくられていきます。生まれ変わった人間が、そこで何を思い、どんなおこないに出るかなど、我々には預かり知れないことではありませんか」
「そうかもしれない」
「そうなのです」
「でも、僕が転生させなければ、子供たちは命を落とさずに済んだかもしれない」
息が止まる感覚があった。
思ってしまったのだ。あの老女だって、闇に消えずに済んだ「もしも」があったかもしれない。もしも自分ではなく、他のスタッフが回収を担当したなら、あるいは。
「僕に熟慮が足りなかった。多くのジャッジマンの、手本にならなくてはならない立場であるにもかかわらず」
かけるべき言葉が見つからない。
「君の言葉を借りるならば、僕は、ジャッジマン失格だ」
「そんな……」
ウリエルは微笑んだ。
「だから、これは、僕の贖罪なんだ」
「贖罪」
つぐなうこと。罪ほろぼし。
なんて悲しい言葉なのだろう。ウリエルは、とても傷ついていた。長い時間を、痛みとともに歩いてきたのだ。他の天使たちとは違う、ウリエルの行動の裏に、そんな悲しい秘密があったなんて。
彼の口から、そんな言葉を聞く日がくるとは思わなかった。
「僕も最初から、子供のものだけを選んでいたわけではないよ」
「何か、きっかけがあったということですか?」
きっかけがあって、過ちをおかすことになってしまったのか。それとも、きっかけが、過ちそのものだったのか。そもそも、完璧なウリエルが失敗することが信じがたい。
「ある人間が、生まれ落ちた時代で、とても多くの子供の命を奪ってしまった」
「え?」
「その人間がその時代の、その場所に転生することを勧めたのは、僕だ」
その事実は、あまりにも滑らかに語られたものだから、耳にするすると入りこんで、そのまま留まることなく、また体外へ出ていってしまったかのように感じられた。
「偶然、知ってしまったんだ」
ウリエルは自嘲気味に笑う。
確かに、それはそうあることではなかった。
本部から、転生が決定したことの報告はあっても、それ以降のことについては知らされない。彼らも、一切関知しない。ジャッジマンの仕事は、ジャッジすることのみだからだ。無責任にも聞こえるけれど、生まれ変わる人間一人一人に責任を持っていたら、天使はそれこそ眠る暇もない。
そして、それは我々も同じだ。
どうやってそれを知りえたのかについては、彼には披露する気がないようだ。
でも、と思い当たる。過去にジャッジを受け持った人間の書籍を、偶然にも再び手に取ってしまうことは、ありえないだろうか。
「僕は、きっとおごっていたんだよね」
ウリエルは、まるで他人に起きた出来事を話すみたいな口ぶり。
「自分の出す答えが間違うことがあるなんて、少しも思っていなかったんだよ」
「でも、それは、ウリエル様のせいではありません」
ようやく否定することができた。
「魂の本質は、変わらないのかもしれません。しかし、考え方や哲学は、環境や経験によってつくられていきます。生まれ変わった人間が、そこで何を思い、どんなおこないに出るかなど、我々には預かり知れないことではありませんか」
「そうかもしれない」
「そうなのです」
「でも、僕が転生させなければ、子供たちは命を落とさずに済んだかもしれない」
息が止まる感覚があった。
思ってしまったのだ。あの老女だって、闇に消えずに済んだ「もしも」があったかもしれない。もしも自分ではなく、他のスタッフが回収を担当したなら、あるいは。
「僕に熟慮が足りなかった。多くのジャッジマンの、手本にならなくてはならない立場であるにもかかわらず」
かけるべき言葉が見つからない。
「君の言葉を借りるならば、僕は、ジャッジマン失格だ」
「そんな……」
ウリエルは微笑んだ。
「だから、これは、僕の贖罪なんだ」
「贖罪」
つぐなうこと。罪ほろぼし。
なんて悲しい言葉なのだろう。ウリエルは、とても傷ついていた。長い時間を、痛みとともに歩いてきたのだ。他の天使たちとは違う、ウリエルの行動の裏に、そんな悲しい秘密があったなんて。
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