【 企業舎弟の遥かな野望 】

千葉七星

文字の大きさ
17 / 46

「企業舎弟の遥かな野望」ー16(尾行)

しおりを挟む
第十六話ー「尾行」

 柿山は、柴田のゴツイ背中を追っていた。

 名古屋市内、「栄」の繁華街を柴田は時折背後を気にしながら歩いている。人通りの多い筋を何度か右に左に折れ、一度通った道に戻ってまた進み、ようやく一軒の居酒屋の暖簾を潜った。
 柿山も少し間を置いて店に入った。

 柴田は奥の四人掛けの席にこちらに背を向けて一人座っている。
 その四人掛けの席の向かい側がカウンター席になっていて、ちょうど一番端が空いていた。着崩れした紺のスーツに銀縁メガネで、、というサラリーマンが持つ黒カバンを小脇に抱え席に座った。

 ほどなくして、一人の男が柴田の前にペコりと頭を下げて座った。浅井正樹であった。「東海コンサルタント」の社長をしている男で、愛知県警「」の情報から、この男が唯一「事案」でFDCとの関係が疑われる人物である。

「東海コンサルタント」が指定暴力団「大川組」の企業舎弟であることは既に県警でも掴んでいたが、FDCとどう関わっているのかが未だに闇の中であったのだ。

 ただ、柴田と浅井は大学の空手部の先輩後輩の間柄なので、こうして酒を酌み交わしても疑われることはない。
 時間はまだ、夕方の5時過ぎで、会社帰りの客もまばらであったので、微かではあるが二人の会話は耳にできた。

 ーーーで、今度は赤ですか? それとも青ですか?
 ーーー赤が堅い、ってよ。

 柿山は、突出しのキムチをにビールを飲んでいる。

 ーーー(なんだ、、、赤、とか青、、、って)

 さらに聞き耳を立て二人の会話を探ろうとするが、いきなり男女6人組の客が入って来て、にわかに店内は喧騒立った。

 ーーーって、、、ことは、、、、○×▲、、、ですか?

 ーーーー、、、だな、、、それと、、 3、5、:::2、1:::

 さっきの団体客の声で二人の会話がかき消されて、それ以後、聞き取れる状況にはならなかった。

 1時間ほどして、柴田が先に席を立ち店を出て行った。柿山も伝票を掴み会計を済ませ表に出た時には既に柴田の姿は人混みに消えていた。
 先ほどの二人の会話を反芻しながら、裏路地を歩いていると、柿山は背中に気配を感じた。二つの黒い影が付いてくる。

 ーーー(気取られたか?、、、)

 柴田は足早に表通りに出ようとした時、背後から男の声が飛んで来た。

 ーーー柿山さん、、、、、ですよね?

 振り返ると、スーツ姿の男が二人立っていた。

 ーーー「」特捜の柿山さんですね?
 先ほどの声の主と違うもう一人の男が聞いてきた。
 柿谷は一瞬逡巡したが、二人の男の顔を観察し観念したように応えた

 ーーーですけど、、、、さん、、、、?

 警察は容疑者を逮捕し検事がそれを起訴し有罪、無罪を裁判所が決定する。これまで日本の刑事事件において、一旦検察官が起訴、つまり有罪だと判断すると99%近くが有罪判決が下りている。
 刑事事件を取り扱う警察組織と検察機構は相互協力が建前であるが、組織権力においては検察機構が上部に位置する。

 ーーー(ちっ、、、情報ネタのただ食いかよ、、、)

 柿山は黙って、二人にされていった。

                   (第十六話ー了)

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...