【 企業舎弟の遥かな野望 】

千葉七星

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「企業舎弟の遥かな野望」ー21(正義)

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第二十一話ー「正義」

ーーー押しかけ
 健斗はソファーに深く腰掛けて、まだ笑っている。

ーーー勝負よ。こうでもしなきゃ会ってくれないでしょ?
ーーーでもないよ?ずっと連絡待ってたんだぞ

 橙子は健斗の本心ではないと打ち消すように

ーーー待ってたのは、らせてあげるわ、の連絡でしょ? やらせないけど。
ーーーふっ、なら、今日はなんのようだ

健斗は首をに振って無愛想に言う。

ーーーできない、ってなると急に冷たくなるんだ
ーーーのない女追いかけるほど暇じゃないんでね。

ーーーじゃ、にしてくれる?そしたら、らしてあげる
ーーーそんな面倒な女、要らねーよ。

 秘書らしき女が社長室に珈琲を運んで来た。チラッと橙子に視線を落すその女の目は好奇と剣が入り混じったものだった。

ーーーちょっと耳寄りなネタ掴んでね、今日はそのを取りにきたの。
ーーーふぅーん

 健斗は「LARK」に火を点け、一服の紫煙を吐いた。メンソールの香りが部屋に流れる。

ーーー「FDC」から「東海コンサルタント」、そして「大川組」へのトライアングルな関係、、、どうこれ?

 健斗の顔には動揺の欠片もない。

ーーー「」の浅井には、ウチが投資情報提供してるのは事実だな。けど、そっから先のことは知らんな。ウチは堅気カタギの会社なんでね、、、
まっ、書きたけりゃ、書けばいいけど。

 性根の座った目で橙子を威嚇してきた。
 橙子も生来の負けん気が強い。両の眉をキュッと釣り上げ挑んでいく。

ーーーアナタの体に極道の血が流れているのはどうやっても否定できないけどね。

 
小野田の表情が、翳りが輝きを侵食してゆく日食のように、みるみる闇に沈んでいった。
 橙子は健斗のタブーに触れた事を後悔した。

ーーーヤクザのなにが悪い。極道以下のカタギがどんだけこの国に蔓延はびこってんだ!!

 初めて聞く小野田の罵声に橙子は身が竦んだ。
小野田はヒートアップしていく。

ーーー政治家、役人、警察、、、腐りきったこの国の権力者ども。なんで、おめぇーらは、それを追わないんだ、長いもんには巻かれろか?
 パパラッチみたいな真似して、せいぜい芸能人の不倫ネタでも書いてろっ! ゲス不倫しか書けないお前らこそゲスの極みだっ。 

 本物のパパラッチならきっと開き直って、
それで、オレたちはメシ食ってんだ、生きてくためになーーーと、言うかもしれない。

 そんなゲスネタしかウケないこの国の一般大衆を陰で嘲りながら、言論の自由を振りかざし、旗色悪くなると逃げる。そこにの「正義」の欠片もない。

 橙子自身、腐りきった警察組織の裏側を垣間見て来ている。それは全国に30万近くのを抱える巨大権力組織である。

 そして小野田が言わんとすることを代弁するなら、ヤクザよりタチが悪いのは彼らは「法」で守られていることなのだ。
 
ーーーそうね、、、

 ポツリと橙子がもらした。追撃の言葉が出てこなかった。
ズシリと重い沈黙が二人を包んでいた。

ーーーすまん、、、帰ってくれ。

 橙子は健斗の目に、「法」という人間が作った鎧を纏う「正義」ではなく、任侠極道が匕首あいくち一つで拳銃チャカに立ち向かうような「正義」を見た。



 「正義」が「正義」に喰われ滅んでいく姿は悲しく絶望的だ。
 社長室を出る橙子の胸が軋んだ。

              (第二十一話ー了)

 
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