【 企業舎弟の遥かな野望 】

千葉七星

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「企業舎弟の遥かな野望」ー30(露見)

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第三十話ー「露見」

 11月15日。朝から冷たい雨が降っていた。

 岐阜に本社を置く、「FDC開発」に「愛知県警 組織犯罪対策課」、通称「○暴”マルボウ”」が岐阜県警の応援を得て家宅捜査に踏み切った。
 捜査指揮は「本庁」の「組織犯罪対策課」から来ていた。それは捜査範囲が二県に跨るため、県警同士のナワバリ意識を抑えるため出張ってきたというのが警察組織の裏の事情だった。

 灰色のワンボックスカー二台に乗り合わせた捜査員が、スーツを着た男を先頭に降りてくる。各自、組み上がっていないダンボール箱を小脇に抱え、「FDC開発」本社ビル玄関の自動ドアをくぐった。

橙子は「本庁」の刑事が、木戸ではなかった事に安堵する反面、喉に小骨が刺さったような違和感も同時に感じていた。

 橙子は腕時計できっかりAM9:00を確認した。
 県警捜査員に混じって黒のパンツに黒のジャンパーを羽織りキャップを被りマスクをしている。キャップの後ろに束ねて下ろされた黒髪以外、”ぱっと見”女性捜査官とは分からない。

 愛知県警◯暴は、同時に「大川組」事務所も”着手”していた。

 事務所内に入る前に、「FDC開発」の幹部であろう男に、裁判所発行の「家宅捜査令状」が示され、県警◯暴課長が内容を読み上げ着手に入った。

 ーーーはい、みなさんそのままで!備品、コンピューターには一切手を触れず、机から離れてください

 捜査員が一斉に事務所に流れこみ、入れ替わるように社員は隣の会議室や廊下へと移動させられた。

 次々と、書類がダンボール箱に詰め込まれ、パソコンもすべて押収された。

 橙子は役員室の机の中から椅子の裏まで虱潰しに「隠蔽」の痕跡が無いか調べて回った。壁に掛けてある、額縁の裏、サイドテーブルの上の花瓶の中まで手際よく調べていく。
 大凡おおよそ、よほど間抜けじゃないかぎりガサが近いとわかっているだろうから、入られる前に「ヤバいもの」は処分されているか、別の場所に移されているのが今までの経験で分かっていたので、何か出てくる、という期待は微塵もなかった。

 橙子は捜査員たちの家宅捜査の様子を、毛髪が”ザビエル禿”の男がじっと見守っているのを見つけて

 ーーーおたくは? ここの?

 ーーーああ、私は親会社の「FDC.COM」のものです。

 そう言って、警察のガサが入ってる”非常時”には似つかない愛想笑を寄越しながら名刺を出して来た。

「 財務管理部 部長  木下吉秀」ーーーと、あった。

 どうやら、此処の社長、役員には県警の刑事が事情聴取に当たっているようだ。逃走や隠蔽の恐れがないかぎり、今此処ですぐ任意同行を願い出ることはない。

 本社、財務部の人間がすでに準備して待っていたのか? もしそうであれば、どこからか”ガサ”の情報が事前に洩れていたに違いない。

 ーーー今日は、どうして此処に?

 ーーー昨日から半期決算の内容に関して確認と打ち合わせのために来てたんです。
 今日も、朝から打ち合わせ会議が始まるところでした。

 ”答え”を用意してたかのように、刑事を前に臆する事なくこの禿男は言った。

「押収品」はダンボール箱20箱以上にもなり、別のワゴン車が二台手配された。

 橙子たち捜査員が玄関を後にしたのは午後6時近くになっていた。とっぷり陽が暮れ、岐阜の秋の夜風は頬を刺した。
 地元テレビ局がテレビ取材専用車を乗り付けて待ち構えていた。

 クルーが廻すハンディーカメラのレンズに一瞬だが、橙子の顔が映し出された

 ーーー(しまった!)

 橙子は慌てて、マスクをし顔を背けてその前を通り抜けた。

 この日が、”すべての事”が露見する始まりだった。

               (第三十話ー了)
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