36 / 46
「企業舎弟の遥かな野望」ー35(殺気)
しおりを挟む
第三十五話ー「殺気」
小野田は、自分が留守中に誰が会社を切り盛りしていたのか気になり、人目を避けるようにして出社した。
明石が殺された後、役員として残っているのは柴田と丹波だけであったが、柴田は「大川組」との関わりを自分と同じくマスコミに書き立てられ、とてもじゃないが出社できる状態ではなかった。いずれ、記者会見など開き「反社会勢力」との関わりについて釈明、謝罪をしなければならなかった。
丹波は根っからの技術屋さんで、マネージメントできる男ではなかったので、小野田は今の会社をコントロールしているのが誰なのか一刻も早く知る必要があった。
社長室に入ると、そこには丹波と木下が待っていた。
ーーーおはようございます。お疲れ様でした
木下の擦り寄るようなその声音が小野田には苦々しく聞こえた。しかし、丹波によれば自分や明石が居ない間、管理、財務、そしてマスコミ対応まで幅広くこなし切り盛りしてくれたようなので、小野田としても礼を言わざるを得なかった。
ーーーああ、木下、留守中はご苦労さんだったな、本当に助かったよ。今後も俺が留守の際はよろしく頼むぞ。
ーーーはい、、、しかし、社長、、、
ーーーん? なんだ
ーーー当面は出社されないほうが宜しいかと、、、マスコミの目もあります。今は当社にとって一刻も早く「誠実」な対応を世間に示さねばなりません。
ーーーそれじゃ何か、俺や柴田が居ると邪魔だって言うのか!
小野田はコメ髪に青筋立てて声を荒げた。
ーーーいえ、滅相もないです。ご理解ください。「FDC.COM」は1000人以上の社員を抱える上場企業なんです。社員には家族も居ます。お耳に痛いことですけども、我々はその雇用を守らねばならんのです。
木下は禿げた頭を小野田にペコペコ下げて懇願した。
ーーーすまん、、、お前の言う通りだな
小野田は、ここんところの厳しい状況や明石の死で、社長としての冷静な判断能力に欠けていたことを胸のうちで反省した。
ーーー公判が開かれ、裁判が終わるまでは俺は表に出ないようにしよう。ただし、毎日の業務報告はメールでいいが、月次の「試算表」と「キャッシュフロー」に関しては必ず俺んところに報告に来てくれ。
ーーーわかりました、そのように致します。
小野田に頭を下げる木下の口角に狡猾な笑みがあったのを誰も見ていなかった。
ーーーーーーーーーーー
小野田は自分が「裁判中」の身だと言うことを忘れていた。どこに行ってもマスコミや何かに尾行されている気がして、気の休まる時がなかった。
「栄」の外れの商業ビルの地下一階に小野田が「隠れ家」としているBARがあった。久しぶりに飲みたくなり「栄」の繁華街に身を隠しながら歩き、少し人通りの少ない裏通りに出てきて、タバコに火を点けようと立ち止まった。
小野田は刑事や検事の取り調べが長く続いたせいか、彼らの「匂い」には敏感になっていて、今も自分は誰かに尾行されていると分かっていたが、ただそれは奴らの体から滲み出る刑事臭とは違う、もっと黒い殺気だったものを微かに感じていた。
小野田が再び歩き出すと、その「黒い影」も付いて来た。
第三十五話ー「殺気」 了
小野田は、自分が留守中に誰が会社を切り盛りしていたのか気になり、人目を避けるようにして出社した。
明石が殺された後、役員として残っているのは柴田と丹波だけであったが、柴田は「大川組」との関わりを自分と同じくマスコミに書き立てられ、とてもじゃないが出社できる状態ではなかった。いずれ、記者会見など開き「反社会勢力」との関わりについて釈明、謝罪をしなければならなかった。
丹波は根っからの技術屋さんで、マネージメントできる男ではなかったので、小野田は今の会社をコントロールしているのが誰なのか一刻も早く知る必要があった。
社長室に入ると、そこには丹波と木下が待っていた。
ーーーおはようございます。お疲れ様でした
木下の擦り寄るようなその声音が小野田には苦々しく聞こえた。しかし、丹波によれば自分や明石が居ない間、管理、財務、そしてマスコミ対応まで幅広くこなし切り盛りしてくれたようなので、小野田としても礼を言わざるを得なかった。
ーーーああ、木下、留守中はご苦労さんだったな、本当に助かったよ。今後も俺が留守の際はよろしく頼むぞ。
ーーーはい、、、しかし、社長、、、
ーーーん? なんだ
ーーー当面は出社されないほうが宜しいかと、、、マスコミの目もあります。今は当社にとって一刻も早く「誠実」な対応を世間に示さねばなりません。
ーーーそれじゃ何か、俺や柴田が居ると邪魔だって言うのか!
小野田はコメ髪に青筋立てて声を荒げた。
ーーーいえ、滅相もないです。ご理解ください。「FDC.COM」は1000人以上の社員を抱える上場企業なんです。社員には家族も居ます。お耳に痛いことですけども、我々はその雇用を守らねばならんのです。
木下は禿げた頭を小野田にペコペコ下げて懇願した。
ーーーすまん、、、お前の言う通りだな
小野田は、ここんところの厳しい状況や明石の死で、社長としての冷静な判断能力に欠けていたことを胸のうちで反省した。
ーーー公判が開かれ、裁判が終わるまでは俺は表に出ないようにしよう。ただし、毎日の業務報告はメールでいいが、月次の「試算表」と「キャッシュフロー」に関しては必ず俺んところに報告に来てくれ。
ーーーわかりました、そのように致します。
小野田に頭を下げる木下の口角に狡猾な笑みがあったのを誰も見ていなかった。
ーーーーーーーーーーー
小野田は自分が「裁判中」の身だと言うことを忘れていた。どこに行ってもマスコミや何かに尾行されている気がして、気の休まる時がなかった。
「栄」の外れの商業ビルの地下一階に小野田が「隠れ家」としているBARがあった。久しぶりに飲みたくなり「栄」の繁華街に身を隠しながら歩き、少し人通りの少ない裏通りに出てきて、タバコに火を点けようと立ち止まった。
小野田は刑事や検事の取り調べが長く続いたせいか、彼らの「匂い」には敏感になっていて、今も自分は誰かに尾行されていると分かっていたが、ただそれは奴らの体から滲み出る刑事臭とは違う、もっと黒い殺気だったものを微かに感じていた。
小野田が再び歩き出すと、その「黒い影」も付いて来た。
第三十五話ー「殺気」 了
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる