41 / 46
「企業舎弟の遥かな野望」ー40(決心)
しおりを挟む
第四十一話「決心」
東京地検「特捜部」の会議室では沈痛で重い空気が漂っていた。
今朝方、本郷は検事正に呼び出され、一連の袴田の収賄疑惑への捜査をうち切れと言う指示を受けた。苦々しく本郷にその指示を下す検事正の表情を読み取り、大きな「圧力」が掛かったことを察した。
ーーーしかし、あと一歩で......
ーーーわかってる。堪えてくれ......
本郷はそれ以上食い下がっても無駄だと、検察正室を出た。
会議室に揃った「特捜検事」や「検察事務官」たちの顔にはやり切れぬ悔しさと「不条理」への憤りに溢れていた。
ーーーあの妖怪め......
本郷はごつい拳を机に叩きつけた。
結局、「東京地検特捜部」としての収穫は何一つなく、この半年以上の苦労は水泡に帰した。
羽田も黒沢も放心状態で、席を立つ気力さえ奪われていた。
ーーー羽田さん......「正義」ってなんですか? 特捜は巨悪を許さない、でしたよね?
黒澤は羽田に食ってかかるが、それを受けて何かを返せる羽田でもなかった。
ーーー「悪」は蔓延るか......
羽田は初めて「検事」という仕事が嫌になった。
ーーーーーーーーーー
小野田は、傷害事件の当事者となった為「起訴保留」という形で周辺捜査を含め名古屋地検預かりの「捜査対象者」という扱いで今は名古屋市内の警察病院で加療中であった。小野田を刺した男は、たまたま道で肩が当たりカッとなって刺したと自供しているだけで、背後関係など誰かの指示で犯行に及んだということは一切語らず、そのまま単独犯として「傷害容疑」で起訴された。
明石が死に、柴田は起訴され、滝川も起訴されかつ余罪追求の身でFDCの幹部のほとんどが壊滅状態であった。
しかし、そのどさくさに紛れ役員昇格を果たし、FDCの新しい顔として木下は持ち前の狡猾さと人|誑しな話術でFDC壊滅の窮地をかろうじて支えていた。
小野田は病室のベッドで自分が今まで何をして来たのか整理していた。ひたすら会社を大きくする為に身を削り時には手を汚し、黒い付き合いもしてきた。
そして起業して会社を大きくする過程でこの国に巣喰う最も汚い連中が誰なのかを知り、その者たちがこれから先もこの国を操っていくことに憤りと絶望を感じた。
やがて、自分の天命としてこの醜い「悪」を叩き潰すことを密かな「野望」として抱くようになった。
しかし、今、自分が叩きのめそうとしていた腐りきった「巨大組織」に裁かれようとしている。所詮はドンキホーテだったのか。長いものには巻かれろ、弱いものは淘汰され強者に媚びへつらい生きていくしかないのかーーーと、病室の天井の一点を睨みつけていた。
病室に橙子がやってきた。
ーーー元気そうじゃない。
ーーーああ、気の強いアンタの血が注入されては死ねないだろ
ーーーふふ、そんだけ喋れたら大丈夫ね
橙子は声音を潜めて小野田の耳元で囁く
ーーーアレを、一か八かの「勝負」に使う。いいわね?
ーーーあぁ。アンタに預けた時からどうなろうと覚悟は出来ている。
健斗は自分の命を救ってくれた目の前の女の頬に触れ、何かを目で語りかけた
橙子は、小野田の目に宿る「正義」の炎がまだ消えてないことを確かめ自分も勝負の一手を放つ時だと強く決心し、無言で背を向けた。
ーーー(このままでは終わらせない......)
橙子は、病室を出ると「羽田」に向かった。
第四十一話「決心」ー了
東京地検「特捜部」の会議室では沈痛で重い空気が漂っていた。
今朝方、本郷は検事正に呼び出され、一連の袴田の収賄疑惑への捜査をうち切れと言う指示を受けた。苦々しく本郷にその指示を下す検事正の表情を読み取り、大きな「圧力」が掛かったことを察した。
ーーーしかし、あと一歩で......
ーーーわかってる。堪えてくれ......
本郷はそれ以上食い下がっても無駄だと、検察正室を出た。
会議室に揃った「特捜検事」や「検察事務官」たちの顔にはやり切れぬ悔しさと「不条理」への憤りに溢れていた。
ーーーあの妖怪め......
本郷はごつい拳を机に叩きつけた。
結局、「東京地検特捜部」としての収穫は何一つなく、この半年以上の苦労は水泡に帰した。
羽田も黒沢も放心状態で、席を立つ気力さえ奪われていた。
ーーー羽田さん......「正義」ってなんですか? 特捜は巨悪を許さない、でしたよね?
黒澤は羽田に食ってかかるが、それを受けて何かを返せる羽田でもなかった。
ーーー「悪」は蔓延るか......
羽田は初めて「検事」という仕事が嫌になった。
ーーーーーーーーーー
小野田は、傷害事件の当事者となった為「起訴保留」という形で周辺捜査を含め名古屋地検預かりの「捜査対象者」という扱いで今は名古屋市内の警察病院で加療中であった。小野田を刺した男は、たまたま道で肩が当たりカッとなって刺したと自供しているだけで、背後関係など誰かの指示で犯行に及んだということは一切語らず、そのまま単独犯として「傷害容疑」で起訴された。
明石が死に、柴田は起訴され、滝川も起訴されかつ余罪追求の身でFDCの幹部のほとんどが壊滅状態であった。
しかし、そのどさくさに紛れ役員昇格を果たし、FDCの新しい顔として木下は持ち前の狡猾さと人|誑しな話術でFDC壊滅の窮地をかろうじて支えていた。
小野田は病室のベッドで自分が今まで何をして来たのか整理していた。ひたすら会社を大きくする為に身を削り時には手を汚し、黒い付き合いもしてきた。
そして起業して会社を大きくする過程でこの国に巣喰う最も汚い連中が誰なのかを知り、その者たちがこれから先もこの国を操っていくことに憤りと絶望を感じた。
やがて、自分の天命としてこの醜い「悪」を叩き潰すことを密かな「野望」として抱くようになった。
しかし、今、自分が叩きのめそうとしていた腐りきった「巨大組織」に裁かれようとしている。所詮はドンキホーテだったのか。長いものには巻かれろ、弱いものは淘汰され強者に媚びへつらい生きていくしかないのかーーーと、病室の天井の一点を睨みつけていた。
病室に橙子がやってきた。
ーーー元気そうじゃない。
ーーーああ、気の強いアンタの血が注入されては死ねないだろ
ーーーふふ、そんだけ喋れたら大丈夫ね
橙子は声音を潜めて小野田の耳元で囁く
ーーーアレを、一か八かの「勝負」に使う。いいわね?
ーーーあぁ。アンタに預けた時からどうなろうと覚悟は出来ている。
健斗は自分の命を救ってくれた目の前の女の頬に触れ、何かを目で語りかけた
橙子は、小野田の目に宿る「正義」の炎がまだ消えてないことを確かめ自分も勝負の一手を放つ時だと強く決心し、無言で背を向けた。
ーーー(このままでは終わらせない......)
橙子は、病室を出ると「羽田」に向かった。
第四十一話「決心」ー了
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる