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第3章 学園に通おう
84話 継承
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「え、出来るの?それ?」
「はい、出来ます」
ドヤ顔でうなずかれた。
えーと……サクラハラ家の中身はほとんどスカルドーニ家なんだし人員的な問題はないのか……。
「ん?そもそも子爵様んちの家臣とかうちで雇い切れるの?
子爵って男爵より偉い分、家臣さんとか使用人さんとかも多いんだよね?」
ユニさん以外の貴族の家をよく知らないからはっきり分かんないけど、やっぱり偉くなればそれだけ人も多くなるんじゃないかな?
「基本的にはそうですね。
とは言え、本来、男爵家と子爵家にはそれほど大きな差はないんですが、スカルドーニ家は子爵家の中でもかなりの豊領ですから、伯爵家並みの人数がいたと思います。
サクラハラ家の領地も男爵家としては豊かな方ですが、流石に全て抱えきるのは無理があると思います」
だよね。
そうなると、雇い入れる人の選別もしなきゃいけない。
「ただ、先程の話にも有りましたけど、前当主に加担したものを雇い入れるわけには行きませんし、ご自分で新たな主を見つけているものもそれなりにいるでしょう。
最終的にはサクラハラ家でも雇いきれる程度の人数になると思います」
前当主さんはユニさんを裏切ろうとしてた人だからなぁ。
そりゃ、それに同意してた人は雇い入れる訳にはいかないか。
そこら辺の選別とかはクラウスさんと話して決めた方がいいだろうな。
「それに、ハルにはほとぼりが冷めた頃にスカルドーニ家の領地をついでもらう事になりますから。
最終的にはむしろ人手が足りなくなりますね」
なんかしれっと爆弾放り込んできたぞ。
「ちょっ、ちょっと、僕がスカルドーニさんの領地継ぐってどういうことっ!?」
驚いて思わず大声を出しちゃったけど……。
あれ?驚いているのは僕だけ?
ミゲルくんたちは平然とした様子だ。
「主さま、貴族の家と領地は不可分な関係にあります。
主さまがスカルドーニ家の跡取りを保護して、旧臣を雇い入れる……実質的に後を継ぐということは、スカルドーニ家の領地も継ぐことを意味しています」
「ミゲルの言うとおりですね。
前にハルが使用人を雇うって話になったときに話に出ましたけど、家臣や使用人はその貴族の領地の出身の場合が多いですから貴族の家と領地は密接に関わっているんですよ」
他のみんなもウンウン頷いているし、この部屋で分かってなかったのは僕だけだったみたいだ。
確かに前に、使用人さんは出身地から募集するのが基本って話してたし、そう言われてみるとユニさんちもケンタウロス種の家臣さんや使用人さんだらけだ。
「ということで、スカルドーニ家を再興するにしてもサクラハラ家の中に取り込むにしてもハルが旧スカルドーニ領を所有している方が都合がいいんです」
な、なるほど。
話は分かったけど、領地が増える、つまり僕の責任がさらに増すと考えると少し拒否感が……。
「主さま、スカルドーニ旧領についてはエミール様がお家を再興なさる時にお返しすればいいので一時的に預かるという感覚でいればよろしいのでは?」
僕が二の足を踏んでしまっていると察したミゲルくんがそうアドバイスしてくれる。
「そうそう、あくまで一時的なものです。
エミールと合わせて預かっている程度の気楽な感じでいてください。
私の直轄領からハルの所領に変わるだけですから、大した差はないですよ」
そ、そうかなぁ……?
とは言え、最初尻込みしていたほど大変な話ではなさそうだ。
ふたりの言う通り、エミールくんの帰る場所を預かる的な感覚でいよう。
「それでは、スカルドーニ旧領はほとぼりが冷めた頃に、サクラハラ家に加増するということで」
「えっと、ほとぼりが冷めた頃って?」
冷まさなきゃいけない『ほとぼり』があるの?
「今はスカルドーニ家が取り潰しになったばかりで色々ごたついてますから。
加増はそれが落ち着いたあとですね」
なるほど、たしかにそれは冷まさなきゃいけない『ほとぼり』だ。
「大体いつ頃になるのかな?」
「はっきりとはいえませんが、そう遠い話じゃないです。
とは言え、逆にそうすぐにともいかないので、大体エミールがサクラハラ家に馴染んで、スカルドーニの旧臣があらかた集まったころ……と考えています」
「なるほど、了解」
あと問題になりそうなのは……。
「……あっ、こっちの都合のいい話ばかり考えてたけどさ、ご子息さん……エミールくんだっけ?
エミールくん、養子にするとなると、スカルドーニ家じゃなくってサクラハラ家になっちゃうけど良いの?」
「それはほとんど問題ないです。
スカルドーニには叛逆を企てた家という汚名がついちゃいましたからね。
かえって都合がいいくらいで、むしろ養子にせずに真っ当にスカルドーニ家を再興させる時の方が悩みどころですね」
「えっと……スカルドーニって名前への愛着とか……」
「無いですね。
……と言い切るのは乱暴かもしれませんが、一部の者が気にする程度で、問題にはならないでしょう。
少なくとも当主本人はそんなこと気にしません。
それよりもお家の家臣や使用人が離散しないことの方を大事にしないといけません」
硬い口調で言い切るユニさん。
たしかにそのとおりだと思うけど、ユニさんはこう言うところは生真面目だからなぁ。
ここらへんはエミールくんの気持ちも聞いてみよう。
一応僕の聞きたいことはこれくらいかな?
そう思って家臣たちに目をやると、ミゲルくんが実務上の質問点を聞いてきた。
それを僕がユニさんに確認して……。
結局、会議は昼食をまたぐくらい長くなった。
――――――
一通り疑問点や問題点を確認したけど、とりあえず目に見える大きな問題はなさそう。
ユニさんの助けにはなるし、クラウスさんはじめスカルドーニ家の人達の再就職先も用意できる。
エミールくんのお家再興の手助けにもなるし、僕が男爵を辞めるのも楽になる。
色々実務的に大変なことになることを除けばいい事ずくめにすら思える。
実際にはそう上手くはいかないんだろうな、とは思うけど、これならエミールくんの件、引き受けてもいいと思う。
そのことをミゲルくんたち4人衆に伝えると、みんな自信満々という様子で頷いてくれた。
実に頼もしい家臣たちだ。
「それでは、スカルドーニ家の件進めてしまってよろしいですか?」
「うん、この件はサクラハラ家で請け負います」
ユニさんの最終確認に僕も自信を持って頷く。
僕と、僕の愛する頼もしい家臣たちが力を合わせればなんとかなるだろう。
「では、エミールについては明日、現在の養育先から連れてきますね」
え?早くない?
「はい、出来ます」
ドヤ顔でうなずかれた。
えーと……サクラハラ家の中身はほとんどスカルドーニ家なんだし人員的な問題はないのか……。
「ん?そもそも子爵様んちの家臣とかうちで雇い切れるの?
子爵って男爵より偉い分、家臣さんとか使用人さんとかも多いんだよね?」
ユニさん以外の貴族の家をよく知らないからはっきり分かんないけど、やっぱり偉くなればそれだけ人も多くなるんじゃないかな?
「基本的にはそうですね。
とは言え、本来、男爵家と子爵家にはそれほど大きな差はないんですが、スカルドーニ家は子爵家の中でもかなりの豊領ですから、伯爵家並みの人数がいたと思います。
サクラハラ家の領地も男爵家としては豊かな方ですが、流石に全て抱えきるのは無理があると思います」
だよね。
そうなると、雇い入れる人の選別もしなきゃいけない。
「ただ、先程の話にも有りましたけど、前当主に加担したものを雇い入れるわけには行きませんし、ご自分で新たな主を見つけているものもそれなりにいるでしょう。
最終的にはサクラハラ家でも雇いきれる程度の人数になると思います」
前当主さんはユニさんを裏切ろうとしてた人だからなぁ。
そりゃ、それに同意してた人は雇い入れる訳にはいかないか。
そこら辺の選別とかはクラウスさんと話して決めた方がいいだろうな。
「それに、ハルにはほとぼりが冷めた頃にスカルドーニ家の領地をついでもらう事になりますから。
最終的にはむしろ人手が足りなくなりますね」
なんかしれっと爆弾放り込んできたぞ。
「ちょっ、ちょっと、僕がスカルドーニさんの領地継ぐってどういうことっ!?」
驚いて思わず大声を出しちゃったけど……。
あれ?驚いているのは僕だけ?
ミゲルくんたちは平然とした様子だ。
「主さま、貴族の家と領地は不可分な関係にあります。
主さまがスカルドーニ家の跡取りを保護して、旧臣を雇い入れる……実質的に後を継ぐということは、スカルドーニ家の領地も継ぐことを意味しています」
「ミゲルの言うとおりですね。
前にハルが使用人を雇うって話になったときに話に出ましたけど、家臣や使用人はその貴族の領地の出身の場合が多いですから貴族の家と領地は密接に関わっているんですよ」
他のみんなもウンウン頷いているし、この部屋で分かってなかったのは僕だけだったみたいだ。
確かに前に、使用人さんは出身地から募集するのが基本って話してたし、そう言われてみるとユニさんちもケンタウロス種の家臣さんや使用人さんだらけだ。
「ということで、スカルドーニ家を再興するにしてもサクラハラ家の中に取り込むにしてもハルが旧スカルドーニ領を所有している方が都合がいいんです」
な、なるほど。
話は分かったけど、領地が増える、つまり僕の責任がさらに増すと考えると少し拒否感が……。
「主さま、スカルドーニ旧領についてはエミール様がお家を再興なさる時にお返しすればいいので一時的に預かるという感覚でいればよろしいのでは?」
僕が二の足を踏んでしまっていると察したミゲルくんがそうアドバイスしてくれる。
「そうそう、あくまで一時的なものです。
エミールと合わせて預かっている程度の気楽な感じでいてください。
私の直轄領からハルの所領に変わるだけですから、大した差はないですよ」
そ、そうかなぁ……?
とは言え、最初尻込みしていたほど大変な話ではなさそうだ。
ふたりの言う通り、エミールくんの帰る場所を預かる的な感覚でいよう。
「それでは、スカルドーニ旧領はほとぼりが冷めた頃に、サクラハラ家に加増するということで」
「えっと、ほとぼりが冷めた頃って?」
冷まさなきゃいけない『ほとぼり』があるの?
「今はスカルドーニ家が取り潰しになったばかりで色々ごたついてますから。
加増はそれが落ち着いたあとですね」
なるほど、たしかにそれは冷まさなきゃいけない『ほとぼり』だ。
「大体いつ頃になるのかな?」
「はっきりとはいえませんが、そう遠い話じゃないです。
とは言え、逆にそうすぐにともいかないので、大体エミールがサクラハラ家に馴染んで、スカルドーニの旧臣があらかた集まったころ……と考えています」
「なるほど、了解」
あと問題になりそうなのは……。
「……あっ、こっちの都合のいい話ばかり考えてたけどさ、ご子息さん……エミールくんだっけ?
エミールくん、養子にするとなると、スカルドーニ家じゃなくってサクラハラ家になっちゃうけど良いの?」
「それはほとんど問題ないです。
スカルドーニには叛逆を企てた家という汚名がついちゃいましたからね。
かえって都合がいいくらいで、むしろ養子にせずに真っ当にスカルドーニ家を再興させる時の方が悩みどころですね」
「えっと……スカルドーニって名前への愛着とか……」
「無いですね。
……と言い切るのは乱暴かもしれませんが、一部の者が気にする程度で、問題にはならないでしょう。
少なくとも当主本人はそんなこと気にしません。
それよりもお家の家臣や使用人が離散しないことの方を大事にしないといけません」
硬い口調で言い切るユニさん。
たしかにそのとおりだと思うけど、ユニさんはこう言うところは生真面目だからなぁ。
ここらへんはエミールくんの気持ちも聞いてみよう。
一応僕の聞きたいことはこれくらいかな?
そう思って家臣たちに目をやると、ミゲルくんが実務上の質問点を聞いてきた。
それを僕がユニさんに確認して……。
結局、会議は昼食をまたぐくらい長くなった。
――――――
一通り疑問点や問題点を確認したけど、とりあえず目に見える大きな問題はなさそう。
ユニさんの助けにはなるし、クラウスさんはじめスカルドーニ家の人達の再就職先も用意できる。
エミールくんのお家再興の手助けにもなるし、僕が男爵を辞めるのも楽になる。
色々実務的に大変なことになることを除けばいい事ずくめにすら思える。
実際にはそう上手くはいかないんだろうな、とは思うけど、これならエミールくんの件、引き受けてもいいと思う。
そのことをミゲルくんたち4人衆に伝えると、みんな自信満々という様子で頷いてくれた。
実に頼もしい家臣たちだ。
「それでは、スカルドーニ家の件進めてしまってよろしいですか?」
「うん、この件はサクラハラ家で請け負います」
ユニさんの最終確認に僕も自信を持って頷く。
僕と、僕の愛する頼もしい家臣たちが力を合わせればなんとかなるだろう。
「では、エミールについては明日、現在の養育先から連れてきますね」
え?早くない?
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